家族信託の税務の基礎
家族信託にかかわる税金は、相続税、贈与税、所得税(不動所得、譲渡所得等)、登録免許税、不動産取得税等です。
家族信託には税務対策が欠かせません。税務対策をせずに家族信託を始めると課税のリスクがあります。その理由や家族信託の税金(相続税、贈与税、所得税)の基礎を解説しています。
家族信託と課税のリスク
家族信託には思わぬ課税のリスクが潜んでいます。そのリスクは家族信託、家族信託 が契約書の条文の文言や書き方によって資産の課税上の所有者が移ってしまうからです。税務署は資産の移転に着目して課税します。つまり、うっかり課税のリスクを考 えずに条文を作ると思わぬ税金がかかってしまうのです。
なぜ財産の名義変更をしても贈与税がかからないのか?
●家族信託契約無しで土地を無償で移転した場合
父から長男への贈与となる長男が贈与税を払う
●家族信託契約で土地を管理してもらうために長男に信託した場合
解説1 贈与税
父から長男に信託契約によって土地の名義変更をしても、信託によってその土地から利益を受ける者が父であれば、父が自分で持っていたのと同じことだから贈与税はかからないのです。
解説2
この場合、父が持っているのと同じことだから、長男の信託口座に駐車料金が振り込まれていても、駐車場の収入は父の所得として申告しなくてはなりません。駐車場の経費は土地の名義が長男に変わっているので固定資産税は長男の名前で請求されて長男が支払いますが、その固定資産税は父の確定申告の経費として処理します。
●家族信託契約していた土地が父の死亡により長男の名義になった場合
解説 相続税
家族信託の契約により、父の死亡で信託契約が終了し、信託していた土地が長男の名義になった場合には、死亡を原因としているので相続税の対象として、長男に相続税が課税されることになります。
●家族信託契約していた土地を受託者が信託契約により売却した
解説 所得税 譲渡所得
信託契約により信託された土地を受託者名義で売却しても、譲渡所得は受益者の父の名で確定申告することになります。
上記の贈与税が課税されない場合や死亡により相続税が課税さるケースを外れると、贈与税が課税される可能性があるので注意が必要です。
下記に、家族信託契約を間違えると、贈与税が課税されるケースを書いておきます。
●家族信託契約で土地に長男に信託した場合
解説 贈与税
実質的に贈与になります。
●家族信託契約していた土地の信託契約が終わり、委託者でない長男の名義になった場合
解説 贈与税
父が委託者として信託していた土地が、父の死亡以外の理由で信託が終了し、長男の名義になれば、長男は無償で土地を取得したことになるので実質的に贈与になります。
この場合、信託が終了して父の名義になるなら、信託前の状態に戻るだけですから課税関係はありません。
家族信託と不動産登記の税金の基礎
(1)信託設定時に、不動産の権利者が、委託者から受託者へ移転する時
登録免許税 所有権移転分・・非課税
信託分
土地→固定資産評価額の3/1000
建物→固定資産評価額の4/1000
(2)受託者が変更された時(受託者の死亡等による変更)
登録免許税 非課税・・非課税
(3)受益者が変更された時(受益者の相続や受益権の贈与・売買等による)
登録免許税・・不動産1個につき 金1,000円
(4)信託が終了した時(受益者の死亡等信託終了事由の発生)
登録免許税 ➡登録免許税
所有権移転分 ➡固定資産評価額の20/1000
か固定資産税評価額の4/1000
※注1:信託抹消分→不動産1個につき 金1,000円
※注2:信託の効力発生(設定)時から「委託者A=元本の受益者」で、信託終了に伴って委託者Aの相続人を権利帰属者として所有権を移転する場合には、相続の税率=4/1000となります。
※注3:「委託者=受益者」であり、信託期間中において委託者及び受益者に変更がなく、信託終了時に当該委託者(=受益者)に所有権を移転する(元の所有者に戻す)場合には、所有権移転登記にかかる登録免許税は非課税。ただし、抹消登記分(不動産1個につき金1,000円)は必要になります。