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相続人が音信不通……連絡が取れない時の遺産分割協議はどうする?

2023/09/29
相続人が音信不通……連絡が取れない時の遺産分割協議はどうする?
遺産分割協議で相続財産の取り分を決める時は、民法で相続権があるとされる人全員の同意が必要です。が、一部の相続人と連絡がとれないこともあります。その場合の対処方法や、放置するリスクについて説明し、実際に起こり得る相続トラブルを紹介します。

遺産分割協議で相続財産の取り分を決める時は、民法で相続権があるとされる人全員の同意が必要です。一部音信不通となっている人がいるケースでは、役場で住所を調べて連絡を試みて、それでも返事がなければ遺産分割調停に取り分の決定を委ねる流れとなります。

対処方法や遺産分割しないまま放置するリスクについて説明する前に、実際に起こり得る相続トラブルを紹介します。

 

事例紹介│一次相続の相続人と連絡が取れない

相談者のBさん・Cさんは、3人きょうだいの長子である姉Aさんの相続人です。

今回、2人で遺産の取り分を決める前に相続関係を調べてみたところ、持ち家を含む一部の財産がAさんの亡夫Xさん名義となっており、Xさんについて遺産分割が終わっていないと判明しました。A・Xさん夫婦には子供がおらず、Xさんの相続人は配偶者であるAさんと姪Yさんの2人です。

相続人と連絡がとれないイメージ画像

ところで、相談者と義兄Xさん側の家族とのお付き合いは20年以上途絶えたままです。未だXさん名義の財産についてYさんの協力が法律上必要であると分かっていても、肝心の居所や連絡先が分かりません。このまま遺産分割できない状態が続けば、Aさん宅が空き家のまま荒れ放題で放置される等、困ったことになりそうです。

 

質問者の状況【遺産分割協議を進められない理由】

紹介した例での親族関係を見る限り、連絡の取れない相続人は放っておき、勝手に遺産の取り分を決めて名義変更しても良いように思えます。こうした手続きを阻むのは、次のような問題です。

有効な遺言書がない

本事例の先に発生した相続では、Xさんの遺言書が見つかっていません。もし効力のある書面が見つかっていれば、遺産をもらい受けるべき人物から何もアクションがない状態でも、遺言執行で解決するはずです。

遺産分割協議を勝手に進めるのは不可

相続財産を誰のものにするのか決める内容が効力を持つのは、相続権のある人全員が同意し、それぞれ遺産分割協議書に押印署名をした時です。事例では、Aさんが配偶者から受け継いだ財産の内容・評価額が法律上決められず、結果としてBさん・Cさんの取り分も話し合えません。

専門家の回答

今のところYさんの協力は不可欠であり、連絡先となる居所は役場で調べられます。

相続人調査でYさんの本籍地まで分かっている(戸籍謄本・除籍謄本に記載がある場合)状況なら、その管轄の役場で「相続手続きで必要」と伝えれば、住所記載のある戸籍の附票がもらえます。

気になるのは、Yさんからの返信の有無です。長期間の不在等が原因で手紙を見てもらえなかったり、今更血の繋がっていない家族に関わるのは面倒……といった気持ちで返事をくれなかったりする恐れがあります。

手間なく迅速に音信不通を解消するために、あらかじめ士業を代理人とし、調査と連絡の仲介を担ってもらうのが良いでしょう。

 

遺産分割で音信不通の相続人がいる時の対応手順

相続手続き・遺産分割協議で連絡の取れない相続人がいる場合、所定の手順で音信不通を解消します。簡単に対処の流れをまとめると、次の①~④のようになります。

1,戸籍謄本を取り寄せて本籍地を調べる

2,戸籍の附票を取り寄せて現住所を調べる

3,現住所に手紙を出す等、コンタクトを試みる

4,返事が来なければ、最終手段として裁判手続を活用する

戸籍謄本を取得する

連絡が取れない相続人が存在する時は、手始めに相手の本籍地を調べます。実際に調査する時は、亡くなった人(=被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、父母や婚姻関係から次々に戸籍を辿る方法を採ります。

なお、戸籍等を、本来なら直系の家族もしくは本人の配偶者だけです。相続は第三者請求できる例外にあたり、叔父・伯母・甥や姪といった傍系親族等でも手続きできます。

戸籍の附票で居住地を確認する

調査で相手の本籍地が判明すれば、当地の市区町村役場で現住所が判明します。戸籍の原本と一緒に保管されている「附票」を請求すると、この書類上で住民登録されている場所が分かるのです。

手紙や代理人からの連絡でコンタクトを試みる

これまで連絡がとれなかった相手の住所が分かれば、相続開始と遺産分割協議を進めようとしていることを知らせる手紙を送ります。差出人の連絡先を忘れずに併記しておけば、ふつう何らかの返信はあるでしょう。

どうしても返事してくれそうにない(相当疎遠になっている・過去に仲違いした等)のなら、あらかじめ士業を代理人として連絡を仲介してもらうのがベターです。

遺産分割調停を申し立てる

何をしても音信不通を解消してくれない場合には、最終手段として遺産分割調停を開始します。申立ては相続人のうちの誰か1人で構いませんが、申立て先は相手の居住地を管轄する家庭裁判所としなければなりません。加えて、申立費用として被相続人1人あたり1,200円の手数料がかかります。

上記申立てが受理されると、当の連絡が取れない相続人に調停期日の呼出状が送付されます。

調停の呼び出しに応じない場合はどうなる?

調停期日の呼出状に応じなくてもペナルティは課せられません。実際に「対応が面倒だから」「今さら遺産が欲しいとは思わないから」等の理由で、なお連絡に応じず裁判所にも来てもらえない場合が多々あります。

上記のように調停にも応じないようなら、調停不成立もしくは家裁の判断で「審判」に移行します。審判とは、調停のように当事者の話し合いで合意成立を模索するのではなく、裁判所の判断に処理を委ねる手続きです。

審判期日の呼び出しにも反応がないようなら、相続手続きに積極的に関わる側の意向が最大限汲まれ、遺産分割を強制的に進められるよう終局処分が下ります。

 

相続人が行方不明になっている時の対処法

相続人全員とコンタクトを取れる可能性が残されている限り、音信不通を解消してからでないと手続きの進行は不可能です。例外的に、居所や生死が分からなくなっているケースでは、話し合いに参加できる親族だけで遺産分割協議を進める手段があります。

 

不在者財産管理人選任の申立て

相続人の行方が分からなくなっている状況が「不在者」にあたる時は、その財産を代わりに管理する「不在者財産管理人」の選任を求めて申し立てられます。家出したきり住民票のある場所に帰ってこない等、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みがないケースです。

不在者のために始まった相続では、選任された人物が本人の代わりに遺産分割協議に参加します。

▼不在者財産管理人の選任について 詳しい資料は→コチラ

申立人……利害関係人(共同相続人等)または検察官

申立先……不在者の従来の住所または居所を管轄する家庭裁判所

申立費用……手数料800円等

 

失踪宣告の申立て

不在者の状態で7年経過した場合や、災害や船舶沈没等の事故に巻き込まれてから1年以上経った場合には、その相続人について「失踪宣告」を申立てます。警察等による発見を待たず、法律上死亡したものとみなす手続きです。

失踪宣告された場合、本人の子どもや配偶者が相続人となり、結果として連絡がとれる親族だけで遺産分割協議を進められます。

▼失踪宣告について 詳しい資料は→コチラ

申立人……利害関係人(共同相続人等)

申立先……不在者の従来の住所または居所を管轄する家庭裁判所

申立費用……手数料800円+官報公告料4816円

 

相続手続きを長期間保留するデメリット

疎遠になった相続人と連絡を再開しようとするのは、心身共に負担の大きい作業です。だからと言って相続手続きを見送り続けると、遺産から生じる利益を一切得られないばかりか、税の申告・納付によって赤字化してしまいます。

相続財産の売却・活用が進まない

亡くなった人の残した財産は、遺言書あるいは遺産分割協議書がない限り名義変更できません。名義を変えられるようになるまでは相続人全員の共有となり、管理や処分の際に全員の同意が必要です。

以上の仕組みから、売却も活用もできない状態が続き、土地建物やその他のメンテナンスが必要な財産は荒廃・汚損が進む羽目になってしまいます。

▼遺産分割・名義変更ができない時に起こること(一例)

・単独で預貯金を下ろせず、必要な費用の供給が滞る

・遊休不動産を売却できず、維持費用がかさむ

・空き家を不法占拠されているのに、退去を求める手続きができない

相続税申告で損をする

相続税の申告期限は、被相続人の死亡の翌日から10か月以内です。申告義務がある場合には、たとえ遺産分割協議が済んでいなくても、上記期限内にいったん法定相続(=法律で決められた割合に沿った分割)をしたものとして申告書を提出します。

問題は、遺産分割が終わっていない状態での期限内申告だと、税額が安くなる「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」の適用ができない点です。

親族と連絡が取れないために亡くなった人の預貯金を引き出せない点から、ただでさえ、いったんは相続人自身で税を全額負担することになります。その上、納付額に制度による優遇が適用されないとなれば、これは大変な痛手です。

 

おわりに│相続人と連絡が取れない時は早めの相談を

遺産分割の際に一部の相続人が音信不通になっている場合、役場で住所を調べてから粘り強くコンタクトを試みる必要があります。対処の流れを整理してみると、どうにも面倒で手間のかかる手続きです。

遺産の状況により「相続手続きをこのまま保留にしても良い」と考えるのが人情ですが、資産から生まれる利益や税のせいで、多額の損失に繋がってしまうかもしれません。早々に専門家と相談し、家族と連絡を取る作業から一切を任せるのが得策です。

1戸籍謄本で本籍地を確認する

2,戸籍の附票で住所を確認する

3,手紙等でコンタクトを試みる

4,遺産分割調停を申し立てる(どうしても返事が来ない場合)

 

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