遺産相続で一大事! 遺産分割未了のうちに相続人が死亡してしまったとき
亡くなった人の財産を相続するときには、「誰が、何を、どのくらい相続するか」を決めなければなりません。亡くなった人が生前に遺言を書いていれば、その遺言通りに遺産分割をすることができますが、遺言がない場合や遺言に記載されていない財産が残っている場合には、相続人間で話し合いをして遺産分割をする必要があります。
この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。 遺産分割協議が成立し、相続財産の名義が変更されて初めて、財産が特定の相続人の手に渡ることになりますが、遺産分割協議が成立する前に相続人が亡くなってしまった場合、財産はどうなるのでしょうか?
今回は、遺産分割が成立する前に相続人が亡くなってしまった場合の対処について、ご説明します。
❏遺産分割中に相続人が亡くなった場合の相続分
遺産分割中に相続人が亡くなってしまった場合、その相続人が受け取るはずだった財産は誰の手に渡ることになるのでしょうか。具体例を挙げてご説明します。
【事例】
ご相談者は数ヶ月前に夫のAさんを亡くし、Aさんの相続手続きを行っているところです。Aさん夫婦には子どもがおらず、両親もすでに亡くなっているため、Aさんの相続人は配偶者であるご相談者と姉Cさんと兄Dさんとなります。
しかし、Aさんの兄弟姉妹と遺産をどうするかの話し合いができないうちに、兄のDさんが事故で亡くなってしまいました。Dさんには配偶者のEさんと、子どものFさんがいます。
このような場合、Aさんの遺産は誰が相続することになるのでしょうか。
専門家「遺産分割中に亡くなったDさんの権利は、Dさんの相続人であるE、Fさんが相続することになります。そのため、Aさんの遺産分割協議にはE、Fさんが参加しなければなりません。」
遺産分割中に亡くなった人に相続人がいる場合には、その相続人が遺産を相続することになります。今回の場合、遺産分割中に亡くなったDさんには配偶者と子どもがいるため、Aさんの遺産はDさん経由で配偶者Eさんと子どもFさんの手に渡ります。
このような場合、Aさんの相続を「一次相続」、Dさんの相続を「二次相続」といいます。
例えば、一時相続でAさんが8,000万円の財産を残して亡くなった場合、Aさんの遺産を法定相続分で分けたとします。それぞれの相続分は以下のとおりです。
ここで、Dさんが亡くなり二次相続が発生すると、DさんがAさんから相続した1,000万円に加えて、Dさん自身の遺産も相続財産となります。Dさん自身の遺産が5,000万円あったとすると、それぞれの法定相続分は以下のとおりになります。
❏遺産分割中に相続人が亡くなった場合の遺産分割協議書
遺産分割協議書とは、「誰が、何を、どのくらい相続するか」について相続人同士で話し合った内容を記載した書面のことです。預金や不動産の名義変更や相続税申告などの手続きで提出が必要になるほか、相続人との間での証明にもなります。
そのため、遺産分割協議書には「内容に合意します」という意味で相続人全員が署名・押印をする必要があります。相続人のうちの1人でも署名・押印が欠けていると、遺産分割協議書は全て無効となってしまいますので注意が必要です。
今回の例では、亡くなった相続人Dさんの代わりに、配偶者のEさんと子どものFさんが一次相続の遺産分割協議に参加し、財産を受け取ることになりますので、EさんとFさんの署名・押印が必要になります。
❏遺産分割中に相続人が亡くなった場合の注意点
遺産分割中に相続人が亡くなると、その人の相続人も遺産分割協議に参加することになるため、普段はあまり交流のない人と話し合いをしなければならない可能性があります。
遠方に住んでいる等で、交流のない相続人にさらに相続が開始してしまった場合は、権利承継人が増え、遺産分割協議の成立や印鑑登録証明書の取得依頼が難しくなる場合もあります。
また、銀行や不動産の名義変更の手続きには、死亡届の提出、年金の手続き、相続税申告などと違い期限がありません。そのため、手続きを先延ばしにしてしまうケースも多いのですが、その間にさらに次の相続が開始してしまい、権利承継人や代襲相続人等の利害関係人が増えて、それらの関係者から署名・押印してもらわなければならないこともありますので、できるだけ速やかに手続きを進めるようにしましょう。
❏まとめ
今回は遺産分割中に相続人が亡くなってしまった場合の対処法についてご説明しました。相続人の確定そのものが複雑でわかりにくい場合もありますので、二次相続が発生している場合などは、専門家にご相談することをお勧めします。
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