自然人(個人)以外が相続人になる場合【事例】
相続は残された方にとっても、今終活を行い、残される方への準備を進めている方にとっても大きな問題です。
特に現在終活を行い、ご自身の財産をどなたへ相続させるか検討中の方は、「遺贈」という選択肢も考えているのではないでしょうか。
そこで、この記事は「相続は人以外にもできるのか」という視点で解説していきます。
◆相続を考える際には、遺贈という選択肢がある
2000年代に登場した新しい言葉である「終活」ですが、人生の終焉にむけての準備全般を指す用語です。主な終活の準備としては、エンディングノートの作成、不要品の処分、そして財産管理を老後に向かってどうするのかを考えることなどが挙げられます。
特に現在預貯金や不動産などの財産をお持ちの場合、「誰に相続させるのか」という問題が浮き彫りになることがあります。お子様が複数人おられる場合はどの財産を個別に託すか悩ましいですが、その他にもお世話になった施設へ財産を残したい、最期に社会貢献となるような相続をしたいなどの思いをお持ちになる方も多くなっています。
また、単身者世帯が増加している日本では、「おひとりさま」として暮らす方も増加しており、終活の際にはご自身の財産を友人や恩返しに使いたいと考える人も増加しています。
お子様も配偶者もおらず、ご自身の相続発生時にはあまり縁のない親族が相続人となる場合には、別の選択肢をと検討される方もいます。
そこで、「遺贈」という選択肢があります。遺贈は厳密には相続や贈与とは異なり、次のような定義です。
「遺贈」とは?
遺贈とは、遺言で財産を無償で譲る、移転させる行為を言います。つまり、もっと平たく言えば遺贈はご自身の財産をギフトとしてプレゼントする行為です。遺贈には以下2つの方法があります。
包括遺贈...贈与者(亡くなられた方)の財産を割合で受け取るため、債務(借金)がある場合は負の財産も受け取ることになります。放棄には家庭裁判所の手続きが必要であり相続と類似しています。
特定遺贈...受贈者は贈与者が特定した財産を承継し、債務は承継しません。
贈与との違い
贈与とは財産を渡したい方、もらう方が契約を結ぶ必要があります。ギフトである遺贈とは異なります。
相続との違い
相続は亡くなられた被相続人から見て、相続人となる方が民法上で決められておりプラス・マイナスの財産を問わずに承継することになります。相続は承継する財産について細かく取捨選択することはできず、限定承認の手続きや一切の相続を放棄する手続きを経ない限り、すべての財産を承継することになります。
◆遺贈先に人(自然人)以外を選択する場合に注意点はある?
終活における遺言書の作成時や生前贈与を検討する際には、公益財団法人や病院、お世話になった学校などへの遺贈を考える方もいます。
自分の財産を団体や法人へ相続させたいと考える場合には、遺贈することで財産を譲ることができます。通常、民法上で定められた相続は人(自然人※1)が対象となりますが、遺贈では団体や法人を指定することが可能です。各自治体の運営する教育委員会や動物保護団体も選ぶことができます。
そこで、1つの疑問が湧きます。相続をする際には、被相続人の財産を受けた相続人は、一定の金額を上回る場合には相続税が発生します。では、遺贈の場合はどうなのでしょうか。遺贈は無償で譲ることが基本ですが、受け取った側には税金は発生しないのでしょうか。
※1 自然人とは......自然人とは法律上で生きている人のことを指します。自然人は生物学としての人を指す用語であり、対照的に法人は会社や団体などを指します。
法人に遺贈をしたら税金はどうなるの?
では、会社に遺贈をした場合の税金はどうなるでしょうか。具体例を挙げながら解説しましょう。
質問 会社の社長だったAさんは、個人所有の建物を自社へ遺贈しました。
この場合の税金はどうなるでしょうか。
答え 自社が遺贈で受け取った建物に関して相続税は発生しませんが、法人税が発生します。
質問 社会福祉法人に入居しておりお世話になったと感じた方が、自分の預貯金を遺贈で同・社会福祉法人へ遺贈しました。この場合の税金はどうなるでしょうか。
答え 特定の公益法人が財産を遺贈により受領した場合、相続税又は贈与税がかかりません。国や地方公共団体に財産を遺贈した場合も同じ、認定非営利活動法人(認定NPO法人)も対象となります。
質問 社会福祉法人の代表の妻が自分の預貯金を同・社会福祉法人へ遺贈しました。
この場合の税金はどうなるでしょうか。
答え 社会福祉法人など「持ち分の定めのない法人」に対して親族などが贈与を行った場合は、相続税法の定めにより贈与税もしくは相続税を課税します。
持ち分の定めのない法人とは、社会福祉法人や学校法人などの公益法人です。同様に、労働組合などの「人格のない法人等」も遺贈の際に個人とみなすケースがあり、贈与や相続税が課税される場合があります。特定の公益法人に該当しない場合は株式会社などの一般法人と同様に法人税の対象となります。
法人への贈与はこのように複雑な仕組みがありますので、贈与自体を決める前に「ソレイユ相続相談室」へのご相談がおすすめです。
◆もらった相続人が公益法人に財産を寄附した場合はどうなる?
ご家族が亡くなりたくさんの財産を相続することになった場合に、公益法人に寄付を行うとどうなるでしょうか。まずは結論を述べると、受け取った側の公益法人には相続税はかかりません。しかし、相続人から寄付を行う場合には下記の条件を満たしている必要があります。
(1)寄付した財産は、相続や遺贈によってもらった財産であること相続や遺贈でもらったとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
(2)相続財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること
(3)寄附した先が教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益法人であること(国や地方公共団体も含みます)。この特定の公益法人は政令で定められているもので、寄附の時点で、既に設立されている法人でなければなりません。また、特定の公益信託の信託財産に寄附した場合も同様です。相続人の方で特定の公益法人に寄附を考えている場合には、申告期限(亡くなった日から10か月以内)に寄附の手続きが完了しないといけません。
◆まとめ 相続人が相続財産を公益法人に寄付をするメリットはある?
いざ相続をしようと思ったら相続財産が大きく、相続税対策として寄付を検討される方もいます。
では、ふるさと納税のような感覚で自治体などへ寄付をしたら相続税は軽減されるのでしょうか。
結論から言うと、相続財産から金額を控除はできても寄付額がそのまま非課税になることはありません。申告が不要な額であっても、寄付によって財産を減らしたことを報告するために、相続税の申告も必須です。不動産の寄付を検討される場合には譲渡所得税が発生する可能性もあります。
但し、思いを寄付先に伝えるというメリットはあるので、「ソレイユ相続相談室」に相談の上で決断されることがおすすめです。