相続対策を始めよう! 「 自筆証書遺言書」の書き方 文例集3
遺言書の書き方「文例1」では、一般的な遺言書の書き方、「文例2」では、遺言執行者を指定しておいた方がいいケースをご紹介しました。
引き続き、さまざまなケースをご紹介します。
❏作成のポイントと文例
11.甥、姪に財産を渡したい場合
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の不動産を、遺言者の姪の千葉道子(平成〇年〇月〇日生)に遺贈する。
記
(1)土地
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 150平方メートル
(2)建物
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造合金メッキ鋼板2階建
床面積 100平方メートル
2.遺言執行者の指定
遺言者は本遺言の執行者として次の者を指定する。
横浜市中区〇〇丁目〇ー〇
税理士法人共同会計社
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
原則、姪や甥に相続権はありませんので、財産を渡したい場合は「遺贈」と書きます。
遺言執行者の指定により、他の相続人の関与を廃除することができます。指定がないと、相続人全員の署名、捺印、印鑑登録証明書が必要になります。
12.特別養子に出した子に財産を渡したい場合
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の財産を、特別養子に出した杉山庄司(平成〇〇年〇月〇日生)に遺贈する。
記
(1)〇〇銀行 〇〇支店 普通預金口座番号 9999999
(2)ゆうちょ銀行 ゼロニハチ支店 通常貯金 記号22222 番号11111111
2.遺言執行者の指定
遺言者は本遺言の執行者として次の者を指定する。
横浜市中区〇〇丁目〇ー〇
税理士法人共同会計社
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
特別養子に出した子は、法律上、他人になりますので相続権がありません。
よって、財産を渡したい場合は、「遺贈」を使います。
なお、普通養子に出した子は、元の親と養親の両方の相続権を有しています。
13.配偶者の連れ子に財産を渡したい場合
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の不動産を、遺言者の妻の子 川崎奈々子(平成〇〇年〇月〇日生)に遺贈する。
記
(1)土地
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 150平方メートル
(2)建物
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造合金メッキ鋼板2階建
床面積 100平方メートル
2.遺言執行者の指定
遺言者の本遺言の執行者として、長男川崎一郎を指定する。
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
財産を渡したい相手は、養子縁組をしていない配偶者の連れ子と仮定しています。
養子縁組をしていないと、民法上、相続人にはなれないため、相続権がありません。
よって、財産を渡したい場合は「遺贈」と書きます。
もし、配偶者の連れ子と、養子縁組をしていれば相続人になりますので、「相続させる」と書きます。
14.ペットの世話を頼みたい(負担付遺贈)場合
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の預金を、友人の小林和子(昭和〇〇年〇月〇日生)に遺贈する。
記
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金口座番号 9999999
受遺者小林和子は、前条の負担として、遺言者の飼い猫「ミミ」の世話をすること。
2.遺言執行者の指定
遺言者は本遺言の執行者として次の者を指定する。
横浜市中区〇〇丁目〇ー〇
税理士法人共同会計社
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
ペットの世話をお願いする代わりに、財産を遺贈するというものです。
受遺者(財産を受け取る人)には放棄する権利がありますので、あらかじめ受遺者となる人の承諾を受けておくと安心です。
仮に、受遺者が財産を受け取って、ペットの世話をしない場合、遺言執行者がペットの世話をするように請求することができます。
また、他に相続人がいる場合は、遺留分を侵害しないような配慮が必要です。
15.公益法人等へ寄贈したい場合
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の不動産を、社会福祉法人〇〇会(横浜市中区〇〇町〇〇番〇号)に遺贈する。
記
(1)土地
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 1000平方メートル
2.遺言執行者の指定
遺言者は本遺言の執行者として次の者を指定する。
横浜市中区〇〇丁目〇ー〇
税理士法人共同会計社
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
受遺者となる、公益法人等の名称、住所を記載してください。
公益法人は、相続人ではないため、「遺贈」と書きます。
他に相続人がいる場合は、遺留分に注意してください。
遺言執行者を指定しておくことで、他の相続人の関与なく遺言の執行が可能です。
❏「相続」と「遺贈」について
遺言書の文言で、「相続させる」と「遺贈する」と2つの表現方法がありますが、両者の違いを簡単に説明します。
「相続させる」を使えるのは、民法で定められた法定相続人に財産を渡したいときです。
法定相続人とは、遺言者の配偶者、子、父母、祖父母、兄弟、姉妹、特定の代襲相続人を指します。
従って、「友人の〇〇さんに、財産〇〇〇を相続させる」は間違いです。
法定相続人以外の第三者へ財産を渡したいときは、「遺贈する」という表現を使います。
先の例では、「友人の〇〇さんに、財産〇〇〇を遺贈する」が正しい表現です。
❏まとめ
ここでは、法定相続人以外の人に、財産を渡したい場合の遺言書の文例を紹介しました。
遺言書の内容は、法定相続分より優先されますが、すべてが遺言通りに執行されるとは限りません。他の相続人の遺留分を侵害していると、遺留分の権利者から遺留分侵害額請求をされる場合があります。
遺言書の不備を回避し、遺言者の思い通りの遺言内容となるよう、遺言書の作成は専門家に依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。
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