相続財産の確認
相続財産を探す場合は、被相続人と同居している場合はある程度どこに何があるのか見当がつくこともありますが、被相続人と何年もあっていないようなケースでは、どこに何の財産があるのか分からずに後々の手続きに支障をきたすことも少なくありません。
ここでは、財産調査のポイントを解説しています。
相続財産の調査って何をするの?
相続人の調査・確認のところで、「遺言の有無を確認したら相続人を調査」すると説明しました。
しかし、実際は相続を行う上では、相続財産を「誰が相続するのか」を調べると同時に、相続人が「どの財産を相続するのか」を決めるため、被相続人がどんな財産を持っていたのか明確にする必要があります。相続財産が決まって初めて、相続人同士が遺産分割協議をできることになります。
遺産分割協議をする際には、調査した財産を基に遺産を分けていくので、基となる財産が分かるように一覧表(財産目録)を作成しておきます。
相続財産の調査と聞いても何をするのかイメージがわかない方もいらっしゃるでしょう。 具体的には、次の①と②です。
①相続人が相続する財産が本当にあるのかないのかを調べる
例えば、遺言書に「○○銀行 ○○支店の預金を長男に相続させる」と書いてあったとします。しかし、被相続人が生前、遺言を書いた後に上記の口座を解約してしまっていたらとしたら、この口座は相続財産ではなくなりますね。また、被相続人から、亡くなる前に財産があると聞いていたとしても、実際にその財産が存在しなければ相続人が相続することはできません。
被相続人が、どんな財産を持っていたのかを調べることは重要です。
②被相続人の死亡時の財産が一体いくらなのかを調べる
例えば、「相続財産を相続人で平等になるように分けたい」といった場合に、相続する財産がいくらなのか分からないと、どうすれば平等になるのかも分かりません。また、期限のある相続税申告の心配も、財産がいくらなのか分からないと被相続人の財産に相続税がかかるのか、かからないのかすら分かりません。
そこで、相続財産がいくらになるのか評価をする必要があります。この財産評価の方法にはいくつかの方法があります。
例えば、現金であれば100万円は評価額100万円と評価しますが、不動産のように1,000万円で購入した自宅が、何年たっても同じ1,000万円ということにはなりません。株式のような日々株価が変動するものはイメージが付きやすいでしょう。 被相続人が亡くなった時点で一体いくらなのか、その遺産額を算出して、相続人に財産を分けていくことになります。また、相続税申告が必要かどうか、財産を算出する際も、国が決めた基準で財産を評価する必要があります。
上記の①と②を行い、被相続人が持っていた財産を漏れることなく財産目録に記載します。
■あとでトラブルにならないための財産調査をするには?
この財産を調べることは、一見簡単そうに思えますが、相続の専門家でも相当な労力を要する場合が殆どです。
何故大変なのでしょうか…?
相続財産には、いわゆる「プラスの財産」と「マイナスの財産」と言われる財産に分けられます。このプラス・マイナスは、相続税申告が必要かどうか遺産額を計算する時にも関係してきます。
●金融資産
現金・預貯金、株券や公債等の債券など
●不動産(土地・建物)
自宅、賃貸用マンション、店舗、農地など
●不動産上の権利
借地権、地上権、地役権など
●動産
家財、乗車券等の無記名債権、骨董品など
●その他
ゴルフクラブ会員権、売掛金、生命保険に関する権利、特許権など
▲借金 借入金、買掛金など
▲公租公課 未払いの所得税、住民税など
▲預り金 敷金、保証金など
▲保証債務
▲その他 未払いの医療費、事業者の場合の買掛金など
それぞれの財産をどのように探して、その金額を決める「財産評価」をしていくのか、上記の①と②の観点で少し説明します。
①財産の在り処を探す
預貯金の通帳や証書、不動産の権利証や登記識別情報、株券や公債等の債券等は、被相続人が生前に自宅や貸金庫等に保管していた可能性があれば、自宅をくまなく探します。
金融機関からの通知等でその財産があったことを知る場合もありますので、生前だけではなく死亡後の郵便物もチェックします。貸金庫の場合は開けてもらう手続きをします。
被相続人が、株や投資信託をしていた場合は、取引している証券会社等から定期的に「取引報告書や取引残高報告書」などの書類が送られてきます。国債等を持っていた場合は、被相続人が証書を保管している可能性が高いです。
不動産については、ご自宅以外にも被相続人名義(場合によっては先代名義)の不動産が存在する場合があります。
ご自宅を探してみて、不動産の権利証(や登記識別情報)があれば、持っている不動産の情報が分かります。
そのほか、市区町村から毎年送られてる「固定資産税の納税通知書(課税明細書)」があれば、その中に所有している不動産が記載されています。県外から届く納税通知書を見て、別荘があったことを知るケースもあるので、要チェックです。
自宅にこのような書類がない場合は、まずは自宅がある市区町村役所に行き、被相続人名義の不動産(市区町村内)が一覧で分かる「名寄帳」を出してもらいましょう。
※「名寄帳」という名称が、自治体により課税不動産の一覧表を指す場合があるので、自治体に確認が必要です。
名寄帳を入手したら法務局へ行き、不動産ごとに所有者、設定されている抵当権等の情報が記載されている「登記事項証明書」を取得します。名寄帳から不動産の地番等が分かるので請求用の用紙に記載して窓口に請求します。
マイナスの財産があるのかないのかを調査することも重要です。クレジットカードやローンからの借り入れの残債があるかないかは、まず契約書や請求書がないか、ご自宅等を探す必要があります。被相続人が亡くなってから暫くして、請求書が郵送で届く場合もあるので、郵便物は捨てずに確認するようにします。
また、CIC(株式会社シー・アイ・シー)などの信用情報機関に、被相続人の信用情報を開示請求することで借り入れの存在が分かる場合があります。
もし、自宅等の不動産を担保に借り入れをしていた場合は、前述の不動産の登記事項証明書に「抵当権設定」と「誰からいくら借りていたのか」載っている可能性が高いので、確認してみましょう。
②相続財産がいくらか評価する
財産はいずれも、「死亡日時点」でいくらの財産があったか算定します。
その財産額を相続人の間で誰がどの財産でいくら取るのか分けていくことになります。
現金は、「タンス貯金」をしていて「タンスから見つかった」といった場合、100万円あれば、相続財産として現金が100万円の評価額になります。
預貯金であれば、通帳や証書などから、どこの金融機関に預貯金口座があるかおおよその検討が付きますが、各金融機関の窓口で被相続名義の口座全てについて「死亡日現在」の残高証明書を取得する必要があります。定期預金がある場合は、解約利息付きの証明書をもらうようにしてください。
預貯金の評価額は、残高証明書に記載されている金額となります。
株や投資信託の商品についても、証券会社や窓口となっている金融機関に被相続人の「死亡日現在」の残高証明書を発行してもらう必要があります。
相続財産額の評価は、この書類を基に算定していきます。
上記以外の財産についても、それぞれの評価基準に沿って財産評価していく必要があります。
相続財産の評価ができたら財産目録の作成に取り掛かりますが、相続財産の調査でする「どんな財産がどのくらいあることの把握」は非常に重要なポイントとなります。
もし、遺産分割も終わり相続が完了した後、別の財産が存在していたら…?
大変な思いをした相続手続きを一からやり直さなければならなくなる可能性もあります。
相続手続きは、相続財産が普通預金口座の預金だけ・・・ということが明確であれば、さほど手間もかからず後々のトラブルになる可能性も少ないでしょう。
しかし、ご自宅や故郷に不動産を持っていたり、知らないうちに株を持っていたり、生前に掛けていた(掛けられていた)保険があったりと、専門知識がないと何が財産になるのか、分からない場合が多いでしょう。
「被相続人に起こった相続」をスムーズに終わらせるには、早い段階で専門家に相談することがポイントといえます。