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家族信託が終わったら残った財産はどうなるのか

2023/09/29
家族信託が終わったら残った財産はどうなるのか
家族信託が終了した後に残った財産(残余財産)の受取人は、信託契約によって自由に決めることができます。自分が望む人に財産を残すことができるよう、この記事では信託契約の終了事由や残余財産の受取人についてご説明しています。

初めは認知症対策として始めた家族信託も、さまざまな要因により終了してしまうことがあります。
通常は、信託契約の当事者によって決められた時期に終了するのですが、稀にそれ以外の事由で終了することもあるのです。
では、信託契約が終了したら、その時点で残っている信託財産(残余財産)は誰のものになるのでしょうか?
この記事では、信託契約の終了事由と残余財産について、詳しくご説明いたします。

 

家族信託はいつ終了するのか

一般的に、家族信託は当事者同士で話し合って終了時期を決めます

例えば、認知症対策の信託であれば「委託者(信託財産を預ける人)が亡くなったとき」、子や孫への贈与で活用する場合には「受益者(信託財産によって利益を受ける人)が一定の年齢になったとき」などがよく使われる終了時期です。 

このように、自分の信託目的に合わせて、信託の終了時期を決めることができます。

しかし、当事者の決めた終了時期とは別に、信託法によって定められた当然終了事由というものがあります。この当然終了事由に該当する場合は、たとえ当事者間で話し合って決めた終了時期に到来していなくても、信託を終了しなければなりません。

 

家族信託の当然終了事由は、以下のとおりです。

①信託の目的を達成したとき、または信託の目的を達成することができなくなったとき

②受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき

受託者が受益者の全部を固有財産で有する状態とは、「受託者=受益者」となった場合が該当します。自分のために財産を所有している状態ですので、家族信託を続ける意味がなくなり信託が終了します。

※受託者とは、信託財産を預かる人のことです。

③受託者がいなくなり、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき

受託者がいない状態では、信託契約の目的を果たすことができません。そのため、受託者が1年間いなかった場合は信託契約が終了します。

④受託者が信託法52条の規定により信託を終了させたとき

信託法52条:受託者が家族信託のために立替て支払った費用の返済または前払いを受けるのに信託財産が不足している場合には、受託者が信託契約を終了することができる。

⑤信託の併合がされたとき

⑥信託法165条または166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき

信託法165条:信託を終了することが受益者の利益になるとき、裁判所は当事者の申立てにより信託を終了を命ずることができる。

信託法166条:裁判所は公益を確保するために信託の存立を許すことができないと認める時は、法務大臣又は委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより、信託の終了を命ずることができる。

⑦信託財産についての破産手続開始の決定があったとき

⑧委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定または更生手続開始の決定を受けた場合で、一定の法律の規定により信託契約の解除がされたとき

⑨信託行為において定めた事由が生じたとき

 

残った信託財産はどうなるのか

家族信託が終了したとき、まだ信託財産が残っていたら、その信託財産は誰のものになるのでしょうか?

信託契約を締結すると、信託財産の名義は委託者から受託者へと移ります。これは、財産の名義人が認知症等になると、財産の管理や処分ができなくなってしまうからです。

 

しかし、信託契約が終了したときに残った信託財産(残余財産)は当然に委託者の名義に戻るわけではありません。残余財産を受け取る人は信託契約によって自由に決めることができます

信託の残余財産を受け取る人のことを「残余財産の帰属権利者」といいます。

 

例えば、「アパートの管理を続けて欲しいから、アパートと残った預金は長男に、自宅は次男に受け取って欲しい」というように、財産ごとに帰属権利者を決めることができます。 

また、残余財産の帰属権利者として指定された人が既に亡くなっている場合や権利を放棄した場合には、委託者またはその相続人、その他の一般承継人を次の帰属権利者として指定できます。

もし、その承継人もいない場合や決まらない場合には、「清算受託者」に残余財産を帰属させることになります。

清算受託者とは、信託によって発生した債務や費用の支払いを行い、残った財産を帰属権利者に引き渡す人のことです。信託終了時の受託者が残余財産の帰属権利者となる場合では、受託者がそのまま清算受託者となるケースが一般的です。

清算受託者が残余財産の帰属権利者となる場合がありますので、清算受託者を誰にするかは慎重に決める必要があります。意図しない人に財産が渡ることのないよう、「信託が終了してから」のことも想定しながら効果的に家族信託を活用しましょう。

 

まとめ

家族信託では、信託財産の生前の管理から、残余財産の受取人までを自由に決めることができるため、遺言よりも生前から財産の承継を実現することができます。信託契約中のことはもちろん、信託が終了した後のことも考えながら、残余財産の帰属権利者や清算受託者を指定しましょう。

 

信託終了時に受益者以外の者が残余財産を受け取ると相続による終了以外は「贈与税」の課税の対象となる場合がありますので、家族信託に詳しい税理士に相談することが大切です。

→「家族信託の税務の基礎」 

また、信託の目的や財産、家族構成、相続税の負担も考慮して誰を帰属権利者にするべきか、

家族信託を行う際は専門家に相談することをお勧めします。

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