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相続税の時効は原則5年 申告義務からの逃げ切り・放置のリスクも理解を

2023/09/29
相続税の時効は原則5年 申告義務からの逃げ切り・放置のリスクも理解を
相続税の時効を法令に基づいて解説し、延長が有り得ること、時効完成前に発覚した際のペナルティのこと、期限後申告・修正申告の要点と、誰の意見をも聞かずに相続税は時効完成したものとすることの危険さを、わかりやすく教えてくれます。

遺産に対する課税は、申告期限から原則5年間に限られています。まだ税務署に届け出ていない財産があっても、元の所有者が亡くなってからトータルで5年10か月経過すれば、相続税を納めるよう求められる心配はありません。

実際には、何年も経った時期に突然課税額が決定されるケースも見られます。相続税の時効の仕組みだけでなく、自己判断で申告しないままでいるリスクも理解しておきたいところです。

 

相続税の時効の仕組み支払不要になる時期の考え方

法律上、相続税の納税義務に消滅時効はありません。その代わり、税務当局に「賦課権」と「徴税権」があるとした上で、権利を行使して税金を収納できる期間を定めています。これを一般に相続税の消滅時効と呼び、はじめに正確な期間を分かりやすく言うと、下記の通りとなります。

 ▼相続税の支払いが必要なくなる時期
 ・申告期限から起算すると5年
 ・亡くなった日から起算すると5年10か月
 ・課税額が決定されると時効完成は期待できない(最終的に差押えがあり得る)

 

賦課権の除斥期間

賦課権とは、税務署長にある「納税義務を確定する権利」を指します。簡単に言えば、税務調査の結果を確認し、一方的に納めるべき税金の額を決める権利です。

相続税について上記権利を行使できるのは、原則5年以内です。より正確には、5年以内に課税額の決定の通知を送達しなければなりません(国税通則法第70条1項)。

上記経過年数のカウントは、途中で止まったり巻き戻ったりすることなく進みます。こうした性質を持つ時効を、法律上「除斥期間」と呼びます。

徴収権の消滅時効

徴収権とは、確定した納税義務につき「履行を求めて収納する義務」です。督促状を送り、それでも納税がなければ差押えを開始する権利と考えると良いでしょう。

相続税について上記権利を行使できるのは、納税者に呼びかけることのないまま5年が経過した時です(国税通則法第72条)。手紙等で収納業務を続ける限り権利は存在すると考える、法律上の「消滅時効」にあたります。

時効の起算点は相続開始後10か月目

相続税の本来の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月後」であり、納付も同時に行わなくてはなりません。賦課権・徴収権共に、上記期限から時効のカウントが始まります。 つまり、もらい受けた財産について課税される可能性があるのは、死亡日を起点として5年10か月の間です。

悪意がある場合のペナルティ【時効の延長】

法律上の「偽りその他の不正行為」、別の表現では「悪意」が認められてしまうと、相続税の時効が2年延長されます(国税通則法第70条5項)。つまり、亡くなってから7年10か月経過しないと、課税逃れを見逃してもらえたとは言えません。

 

相続税を払わないまま放置するリスク

相続税が課税される可能性がある場合、時効完成を待とうとするのは良い方法ではありません。多くの人は「時間が経つほど課税の可能性は低くなるだろう」と油断しますが、これもまた誤解と言わざるを得ません。

ひとたび課税されてしまうと、経過年数や期限内申告の状況に応じ、本来の金額よりも多く納付する羽目になります。以降説明する現実を考えると、申告の要否を長くあいまいにしておくのは危険です。

申告漏れが発覚する仕組み【税務調査について】

税務署では、市区町村役場の通知により、管轄内の相続開始状況を常に把握しています。この時点で「遺産を受け取った事実」を隠すのは困難と分かるでしょう。

遺産の内訳と金額に関しても、相続人を通さずに把握できます。もともと誰でも閲覧できる不動産の登記情報だけでなく、銀行や保険会社に対しても、残高とお金の動きを開示させる権利を持っているのです。

以上のような情報収集は、ほぼ毎年行われていると考えて間違いありません。必要であれば、相続人の自宅を訪問し、事情を聞いたり資料を提出させたりする作業を行う場合もあります。これら「税務調査」を通じて、申告されていない財産に対し、いつでも課税額を決定できる仕組みを整えているのです。

未申告の財産を指摘された時のペナルティ

申告していない財産があるからと言って、何らかの刑罰に処されることはありません。課税額の決定に基づいて追加納付すれば良いところ、全くペナルティがないわけでもなく、一定割合で「加算税」を上乗せして支払う必要があります。金額が割合指定になっている以上、指摘された財産の額に応じて上乗せ額も大きくなるのは当然です。

▼相続税の加算税の割合

期限内に申告していた場合:原則10%(課税額の一部は15%)

期限内に申告しなかった場合:原則15%(課税額の一部は20%)

 

時間が経つほど延滞税もかさむ

申告期限後に課税額が決定された場合にかかるのは、加算税ばかりではありません。本来は申告と納付が同時に期限を迎えることから、延滞分の税も支払わなくてはなりません。

延滞税の割合は最大で年14.6%(タックスアンサーより)に達し、日々上積みされます。時効完成のギリギリになってから税務署の指摘を受けるようだと、その時の支払いは、加算税と合わせて元の相続税額の倍以上になる可能性すらあります。

申告していない遺産がある時の対処法

申告していない遺産に気付いた時は、すぐに課税の有無等を見直すようにしましょう。

必要に応じて迅速に「期限後申告」または「修正申告」を行えば、延滞税は最小限で済み、加算税にも割合軽減および免除があります。時効を待っている間に課税額が決定される場合に比べ、心理的にも経済的にも負担が小さくなるのです。

▼期限後の申告の種類(税務調査の通知が来る前に対処した場合)

申告の種類

概要

加算税の軽減措置

期限後申告

期限後に初めて申告書を提出する場合

原則15%~20%
一律5%

修正申告

期限内に提出した申告書につき、相続税額を上方修正したい場合

原則10%~15%
0%

 

財産調査の必要性

相続手続きでは、ほんの一部でも遺産分割や税務から漏れることのないように、あらかじめ遺産を調査しておくのが普通です。税務署に届け出ていない財産に心当たりがあるケースでも、改めて亡くなった人の資産状況を調べましょう。

調査の際に注意したいのは、死亡時点の財産だけでなく「生前もらった財産」や「受け取った保険金」の内容も整理しておくべき点です。

 ▼相続税が課税される財産(参考)
 ・亡くなった時点で持っている財産(=民法上の相続財産)
 ・相続開始前3年以内の生前贈与
 ・相続時精算課税を適用した生前贈与
 ・死亡保険金等、その他の「みなし相続財産」

後から出てきた遺産の扱い

調査していると、自宅や貸金庫から新たに財産が見つかる場合があります。

もしもの時は、ひとまず当初作った遺産分割協議書の合意条項に沿い、各相続人の取り分を決めましょう。後に行う相続税申告では、取得分に応じてそれぞれの課税額が変化する点から、実際にどう分けたのか証明できる書類を適宜用意する必要があります。

専門家への相談をおすすめする理由

期限後申告・修正申告のいずれであっても、期限内には起こらない問題があります。時間経過によって資料が散逸している状態で、改めて遺産の状況を整理しつつ、出来るだけ早く申告書の作成を終えなくてはならない問題です。

知識があるからと言って独力で対応すると、申告漏れを繰り返したり、反対に過大申告となって余分に税を納めたりする羽目になります。イレギュラーな対応になる点を踏まえ、税理士を始めとする専門家に相談し、確実に対処してもらいましょう。

 

まとめ相続税の未申告・滞納は早めの対処を

相続税の賦課権は原則5年の期間制限があります。遺産隠しの意図が働いていた等の事情がない限り、申告期限から上記年数が経てば、もう課税の心配はありません。

だからと言って「このくらいの申告漏れなら大丈夫」「5年目まであと少し」と油断するのは禁物です。必要ならいつでも遺産に調査が入る点、発覚すると本来の課税額以上の負担が生じる点を考え、以下を意識しましょう。

 ▼申告漏れの可能性が浮上した時の心構え
 ・時効完成の時期を自己判断しない
 ・課税の有無に確信が持てない財産は、専門家に聞いて判断する
 ・相続税を払っていない財産は、迅速に期限後申告or修正申告の対応をとる。

 

 

 

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