contact Icon
0120-971-131 【電話受付】9:00~18:00

知っておきたい事業承継にまつわる税制とは|相続税の納税猶予

2023/09/29
知っておきたい事業承継にまつわる税制とは|相続税の納税猶予
事業承継税制改正後(平成27年1月1日以後)の相続税の納税猶予について、適用を受けるための要件、特例を受けるための手続き、納税猶予期間中の手続などを解説しています。

「大切に守り育ててきた会社を事業を継がせたい」

「会社の経営を引き継ぐ際には、とにかく税金が心配」

事業承継は会社を経営するにあたって重要な課題の1つです。しかし事業承継をする際には、贈与税や相続税が発生するため、経営状況などを踏まえると納税を選択するのではなく廃業するケースも存在していました。

しかし、これでは税金をきっかけにたくさんの優良企業が消えてしまう可能性があります。加えて、日本においては総企業数の9割が中小企業であり、コツコツと育ててきた会社、非上場の企業が圧倒的に多いことが実情です。そこで、事業承継を行う際に「事業承継税制」という制度が設けられています。

この記事では事業承継税制の中で「相続税の納税猶予」について詳しく解説します。

 

事業承継税制とは一体どんな制度?

事業承継が次世代へとスムーズに引き継ぎできるように、国の税制の中で事業に関しては「事業承継税制」と呼ばれる制度が設けられています。この制度は会社や個人事業において事業を引継ぎする後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。わかりやすく言えば、事業承継における納税部分のストレスをこの制度によって緩和しています。事業承継税制とは以下のとおりです。

1.「法人版事業承継税制」

 

事業承継税制のうち、法人版事業承継税制は、後継者が円滑化法(※1)の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合、贈与税・相続税について納税を猶予できる制度です。制度の適用には要件があります。

参考記事はコチラ→「国税庁 法人版事業承継税制」

 

2.「個人版事業承継税制」

個人版事業承継税制とは青色申告を実施していた事業(不動産貸付事業等を除く)を行っていた事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた方が、個人の事業用資産を贈与や相続等により取得した場合、その事業用資産に係る贈与税・相続税について、納税を猶予できる制度です。こちらも制度の適用には要件があります。

参考はコチラ→「 国税庁 個人版事業承継税制」

(※1)円滑化法とは

事業継承に関わる税制に関して円滑に行うための法律として、「経営承継円滑化法」と呼ばれる法律が2008年に施行されています。この法律を通称「円滑化法」と呼びます。中小企業が多い日本において経営が継承しやすいように特例が整備されており、金融支援制度や遺留分に関する特例、そして今回紹介している納税猶予(相続税と贈与税)の特例が3本の柱として整備されています。

 

スムーズな事業継承を目指そう!相続税の納税猶予とは?

事業承継税制の制度の中には相続税の納税猶予について定められています。ではここからは制度の中身を具体的に解説します。事業承継は経営者が亡くなったことにともない発生する場合があります。相続人が事業を承継する際には事業承継以外にも他の財産を相続する必要があり、相続税の多さに頭を抱えることも少なくありません。そこで、経済産業大臣の認定を受けている非上場会社の株式等を相続した際に、「会社を経営していく」場合には相続税納付の特例が受けられます。

 

・相続税納付の特例の対象範囲

相続時に先代の経営者から今回経営者となる方が非上場株式などを取得した場合、その課税価格の80%に対応している相続税の納税が「猶予」されます。

 

ただの納税猶予なの?知っておくべきポイントとは

 相続税が納税猶予になっても、目先の納付を避けられるだけでいずれは納付が必要、と思うとさほど大きなメリットは感じないのではないでしょうか。しかし、この制度の魅力は納付猶予が「スタート地点」に過ぎないということです。実はバトンタッチをした相続人である新経営者がその後亡くなった場合には、納付猶予をしていた相続税の全部、もしくは一部が「免除」となります。つまり、猶予を経て免除にすることができる制度です。しかし、適用を受けるためには2つの要件をクリアしておく必要があります。

 

会社として求められる要件とは

1.会社は中小企業である (特例有限会社なども該当します)

※中小企業の定義はコチラ→「中小企業庁 Q1:中小企業基本法の中小企業の定義と小規模企業の定義を教えてください。

2.非上場であること

3.血縁関係がない従業員が5名以上いる、資産管理会社であること(細かな条件あり)

4.本来の相続税の期限から5年間、経営を承継した相続人が代表権を継続して有していること

5.本来の相続税の期限から5年間、会社の雇用を8割以上継続していること

(但し、経営状況の悪化などの理由がある人員削減の場合にはやむを得ない事情として考慮されます)

6.本来の相続税の期限から5年間、相続税猶予対象とした株式を売却せず、きちんと保有していること

 

つまり、会社に求められている条件として押さえておくべき注意点には「相続税申告期限後5年間は安定して会社経営を続けていること」です。この条件をクリアしていない場合には、猶予税額と利子税を納める必要があります。株式を経営安定化のために5年間のうちに譲渡や贈与した場合もその割合に応じて納税が必要となるので注意が必要です。

 人に求められる要件とは

・被相続人に求められる要件(亡くなった経営者)

 1.相続発生の直前まで会社の代表権を有していた

 2.相続発生の直前まで筆頭株主であったこと など(細かな条件あり

 

・相続人に求められる要件(会社の継続させる人)

 1.相続開始の直前まで役員であったこと

 2.相続開始後から5か月以内に代表取締役に就任していること

 

人に求められる要件で注意が必要なのは、相続開始前の段階で役員になっていなければこの制度自体が使えないという点です。つまり、事業承継の予定がある場合には予め企業の役人に就任しておく必要があります。事業承継は場当たり的に進めるのではなく、色んな制度を考慮しながら丁寧に進めることが重要なのです。

 

 

えがおの事業継承を!相続税納付の特例を受けるにはどうすればいい?

ここまでは事業承継制度の中で相続税納付の猶予にスポットを当ててきました。では、実際に経営者の死去によって事業継承を実施する場合には、どのように手続きをすれば良いのでしょうか。ここからは具体的な手続きについてご紹介します。

 

相続税納付猶予の手続きは4つ

1.相続が開始したら8か月以内に「経済産業大臣の認定」を受けること

2.相続税納付の特例を受ける旨を相続税申告期限内に提出すること

3.担保が必要

4.手続き後5年間は毎年、それ以降は3年に1度のペースで継続届出書を行う必要があること

 

この制度を受ける場合には「担保」の提出が求められます。では、どんなものを担保として提出すればよいのでしょうか。

 

必要な担保とは

 担保として提出する財産は納税猶予の対象となる相続税と、猶予期間中の利子税に見合った価値があるものが必要です。主に下記の2つ該当しています。

 1.株式など

納税猶予の対象となる会社の株式などが対象となります。

2.税務署長が認めるものであれば、不動産や国債などでも可能

 

相続税納付猶予のメリット・デメリットとは

事業承継を行う際に重い負担となる相続税を猶予することにより、スムーズな事業スタートが可能にはなりますが、その一方で手続きには担保が必要であり、煩雑で細かい基準があるため、多くの企業では導入を見送っています。では、相続税の納付猶予を使うメリット・デメリットとはどのようなものでしょうか。ここでは簡潔に解説します。

 

メリット

この制度は文中に触れたように、次世代の経営者の方も亡くなった場合には相続税の免除になる可能性があります。中高年の世代間で事業を承継する場合には、年齢やさらにある次の世代への事業承継の視点も踏まえて、導入を検討すると良いでしょう。猶予期間は条件さえクリアしていれば単純に相続税は支払わないままでOKなので、懐に優しいことは間違いありません。

 

デメリット

とにかく導入も制度の継続活用も複雑、のひと言に尽きるでしょう。また、5年間の期間の中で事業の譲渡も考えられる場合には利子税も上乗せになるためあえて導入をしない方がお得となる可能性もあります。

 

まとめ

この記事では事業承継税制における相続税の納付猶予の制度に関して詳しく解説を行いました。この記事でご関心を持たれた場合には、是非お気軽に「ソレイユ相続相談室」へお問い合わせください。制度に必要な条件や担保に関することなど、丁寧にアドバイスを実施しています。

Popup Image