税務調査と書面添付制度
相続税の訪問税務調査は、相続税の申告期限(相続開始から10ケ月)から1年くらい経過した頃から始まりますが、すべての提出された申告書について、相続人を訪問した調査が行われるわけではありません。この記事では、訪問税務調査と税務調査のリスクを下げる書面添付制度について解説しています。
相続税の税務調査
相続税の申告期限(相続開始から10ケ月)から1年くらい経過した頃から、相続税の訪問税務調査が始まります。
相続税の調査はすべての提出された申告書について、相続人を訪問した調査が行われるわけではありません。
一定以上の遺産がある申告、税務署が補足している数字と違う数字で申告されている申告、その他税務署の判断基準で調査対象は選ばれているようです。
税務調査の一番の狙いは「過少申告」の有無です。
申告が必要な相続財産の中に不動産があった場合は、相続の登記がされているため、固定資産税の徴収のために役所が情報を把握しているので、申告を忘れることも無く、隠蔽しようと思っても難しい財産です。
これに対して、金融資産は、例えば、子供の名前で預金していたり、生前に子供の預金に振り込んで贈与税は支払っていなかったり、配偶者名義で株の売買をしていたり、税務署は目の付け所に困らないのです。
そこで、税務調査も金融資産の調査が中心になります。
亡くなった人本人名義の預金だけでなく、家族名義の預金も、税務署は職権で銀行や証券会社から過去の記録を取り寄せて調査します。
調査の結果、贈与税の申告漏れや相続財産の過少申告を指摘していくのです。
相続税の申告をする場合のポイントとしては、あらかじめ税務署が調査する項目については、申告書を提出する前にチェックして、調査が入って調べられてもよいようにしておきます。
税務調査の後で追徴されると、過少申告加算税、重加算税、延滞税などが課税されてくるので無駄なお金を使うことになります。
余分な税金を支払わせないように申告書の作成時に事前に手当しておくのも税理士の大切な仕事です。
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書面添付制度
税理士に相続税申告書の作成を依頼した場合に「書面添付制度」という制度があります。
これは、税理士法第33条の2に根拠の法律があります。
貼付する書面の内容には、税務署に対して税理士がどんな手続きを行ったのか記載されるので、税務署からの信頼が高まり、税務調査前の事前の意見陳述とともに、リスクが低減できるメリットがあります。
この書面添付制度は当然ながら、「税理士が申告書を作成する」場合に適用されますが、「申告書の作成」は相続税だけではなく所得税や法人税についても同様です。
例えば、会社が法人税の申告をする場合、単に会社の従業員が作成した申告書よりも税理士が作成した申告書の方が、その内容を信用できることは容易に想像できると思います。
加えて、書面添付制度を利用して申告をすれば、さらに信用が高まります。
相続税申告をする際に税理士が書面添付制度を使って申告すると、なぜ税務調査のリスクが減るのでしょうか?
税務署の立場で、税務調査をするかどうかの判断を次のような事例で考えていただければイメージできるでしょう。
事例:税務署に3つの申告書が提出されています。
A 預金を預けれなる銀行が複数あり、株も複数の証券会社と取引している
残高証明の添付が無く通帳のコピーが添付されている 作成税理士氏名 無し
B 預金を預けれなる銀行が複数あり、株も複数の証券会社と取引している
残高証明の添付がある 作成税理士氏名 無し
C 預金を預けれなる銀行が複数あり、株も複数の証券会社と取引している
残高証明の添付があり 作成税理士氏名 押印あり
D 預金を預けれなる銀行が複数あり、株も複数の証券会社と取引している
残高証明の添付があり 税理士の預金調査の書面添付、作成税理士氏名 押印あり
調査をするかしないかは税務署の判断ですが、
Aは、残高証明はなく通帳のコピーがついているので、申告していない通帳もあるかもしれないという調査課題が明らかになります。というのは、残高証明には原則として使用していない口座も含めてすべて載せられているからです。
BCDは、限られた調査日時の中でどの申告を優先的に調べることが必要なのかを考えて見ればわかります。
そもそも、書面添付制度を利用して相続税申告をし、その記載内容に誤りがあった場合には、税理士の責任も問われます。
従って、必ずしもすべての税理士が書面添付制度を利用するわけではなく、制度の存在自体をお客様に説明しない税理士もいます。
書面添付制度があったからといって調査が省略されるわけではありません。でも調査の可能性が減ることは上記選択肢の中から考えて見ていただければわかると思います。
だから、相続税の申告を税理士を依頼する場合には、「書面添付制度」を利用して申告してくれる税理士がどうかもポイントになります。