生前贈与を計画的に! 贈与税が非課税になる生活費と教育費
財産を他の人へ贈与するとき、その贈与財産額に応じて「贈与税」が課税されます。
贈与税の課税制度には、大きく分けて「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、どちらを利用するかによって、贈与税額に大きな差が生まれます。例えば、暦年課税では、毎年110万円までの贈与は非課税で行うことができるため、多くの人が相続税対策として利用しています。
財産を他の人に贈与する場合には、たとえ親子間でも贈与税が発生しますが、全ての贈与に贈与税がかかるわけではありません。
今回は、贈与税をかけずに贈与することができる財産について、ご説明します。生前贈与について理解を深め、より計画的な贈与税・相続税の対策を行いましょう。
■生活費・教育費には贈与税がかからない
通常、財産の贈与があった場合、受贈者(財産の贈与を受けた人)には贈与財産額に応じた贈与税が課されることになります。
しかし、財産の贈与があっても、それが扶養義務者からの生活費や教育費の贈与である場合には、贈与税がかからないこととされています。
例えば、今年大学に入学したAさんは、父から大学の学費と一人暮らしのための生活費で、1年間で合計200万円の贈与を受けています。この場合、扶養義務者からの生活費や教育費の贈与には贈与税が課税されませんので、Aさんは200万円をそのまま学費や生活費に充てることができます。
しかし、仮に生活費や教育費にも贈与税が課税されてしまうと、贈与税の計算は以下のとおりになります。
Aさんが支払う贈与税=(贈与額200万円−基礎控除110万円)×贈与税率10%=9万円
Aさんは、大学の学費や生活費のためにもらった200万円の中から、9万円を贈与税の支払いに充てることになってしまいます。これでは、せっかく父がAさんに行った資金援助の効果が薄れてしまいます。
扶養義務者からの金銭的な生活費や教育費の贈与は生活していく上で必要です。したがって、こういった生活や教育に充てるための援助にまでは贈与税がかからない仕組みになっているのです。
「扶養義務者」とは
扶養義務者からの生活費や教育費の贈与には、贈与税が課税されません。では、扶養義務者とはどのような人のことを言うのでしょうか。
一般的に、扶養義務者は夫(妻)や親がなるものという認識があるかと思います。しかし、国税庁HPでは、以下のような人が扶養義務者に当たるとされています。
①配偶者 ②直系尊属及び兄弟姉妹 ③家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族 ④3親等内の親族で生計を一にする人 |
つまり、妻や夫、親の他にも兄弟姉妹や子、孫なども扶養義務者になることがあるのです。また、一緒に住んでいる叔父や叔母なども扶養義務者となり得ます。
■非課税になる生活費の範囲
「生活費」や「教育費」と言っても、実際にどこまでの範囲であれば非課税の対象となるのでしょうか。
この贈与税の非課税となる生活費は社会通念上、通常必要な範囲の生活費でなければいけません。つまり、あくまでその人の生活費に充てる範囲内で必要な金額を必要とされる都度、工面したものということになります。
例えば、大学生のAさんに父が毎月10万円の仕送りをした場合に、Aさんはその10万円を必要な食費や光熱費に充てて生活をしている、というケースでは通常必要な範囲内と考えられます。しかし、仕送りの金額が15万円に増えた場合、Aさんはそのうちの10万円で生活をし、残った5万円を貯金したり株式の投資に充てたりする可能性も考えられます。
この場合、その5万円には通常必要な範囲を超えるものとして、贈与税が課税されることになります。
生活費とは通常の日常生活を営むための衣、食、住に必要な費用のことを言います。したがって、医療費や養育費その他これらに準ずるものは生活費に含まれます。ただし、保険金等により補てんされる部分があれば、その部分は生活費の範囲からは除外されます。
生活費の範囲は人それぞれ違うため、何が生活費に含まれるかは個々の事情を考慮し社会通念に従って判断する必要があります。
■非課税になる教育費の範囲
生活費のほかにも、扶養義務者から教育費の贈与があった場合は、通常必要な範囲内(必要な金額を必要な都度)であれば贈与税がかかりません。
例えば、非課税になる教育費には、高校や大学などの学費、授業で使う教材費、文具費などが含まれています。
ただし、生活費と同様に、必要な金額を超えて一括して贈与した場合には、贈与税の対象となってしまう可能性があります。あらかじめまとまった教育資金を一括して贈与したい場合には、「教育資金の一括贈与にかかる非課税制度」が別途定められています。こちらは贈与の前に金融機関や信託銀行と一定の手続きが必要になります。
教育資金の一括贈与にかかる非課税制度についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
■まとめ
今回は、贈与税をかけずに贈与することができる生活費や教育費について、ご説明しました。
扶養義務者からの生活費・教育費の贈与であれば、贈与税はかかりません。しかし、贈与された財産の使い道によっては贈与税が課税されてしまうこともあるため注意が必要です。
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