相続税申告書にはマイナンバー記載を│個人番号の確認目的と提出時の注意点
相続税申告書へのマイナンバー記入は、平成28年分より義務化されています。遺産を取得した人が複数に及ぶのなら、各人12ケタの番号を書き込まなくてはなりません。併せて、番号の持ち主だと証明するため、本人確認書類の添付も必要です。
制度趣旨やマイナンバー記入時の注意点は、以降の解説で一通り把握できます。
■相続税申告書とマイナンバー制度
平成28年1月から開始されたマイナンバー制度は、同時に早速税の分野で活用されることになりました。同年分の税務書類から、申告・納税義務を負う人につき、自分に割り振られた個人番号を記入するよう義務付けられています。相続税申告書も、記入が義務化された書類の1つです。
①マイナンバー確認の目的
マイナンバー記入義務化の目的は、税務署での情報管理を正確かつ効率的に行うことだと説明されています。国税庁の参考記事は→コチラ
申告する側の実感としては、納税証明書の電子発行等、行政手続の利便性向上が挙げられるでしょう。
行政サービスの必要性は個人によってさまざまですが、政府には電子化を推し進めたい意図があります。相続税申告で番号を提出しなければならないのは、今のところ大きな流れのひとつと言わざるを得ません。
②番号記入は省略できない【年末調整等との違い】
税の手続きで最も身近なのは、勤務先で行う年末調整ではないでしょうか。ほとんどの人は「配られる書類にはマイナンバーを書かなくてもいい」と記憶していますが、これは平成29年1月に施行された改正法によるものです。
上記改正では、納税者負担の大きい一部の税金の種類に限り、個人番号の記入は省いてもよいとされました。ただ、改正対象に相続税申告は含まれておらず、現時点では継続して番号記入が義務となっている状況です。
■記入するマイナンバーの調べ方
実際に相続税申告書を作る時は、第1表に財産の取得者全員分のマイナンバーを書き込まなくてはなりません。問題は、マイナンバーカード交付率が2022年2月1日時点で41.8%であるように、手元ですぐ番号を確認できる人がまだ少ない点です。政府統計
今回の申告で取り急ぎ番号を確認するには、どうすればいいのでしょうか。
①自分の番号を調べる方法
最も早いマイナンバーを確認手段する手段は、各人に届いている通知カードです。ずっと日本に居住していれば一度は受け取っているはずなので、無理のない範囲で自宅を探してみましょう。
通知カードが見つからない場合は、住民票の写しでも確認可能です。マイナンバー記載は交付請求者の希望に応じて行われるため、役場担当者への伝え漏れに注意しなければなりません。
②他の相続人の番号を調べる方法
提出者以外の納税義務者に関しても、マイナンバーカードがあればその写しを、カードがない場合は通知カードもしくは住民票の写しを持ち寄ってもらいます。
注意したいのは、納税義務者本人が対応できず、住民票の写しを代理請求して番号を確かめる場合です。請求にあたっては、事前に本人に委任状を書いてもらわなくてはなりません。最大の注意点は交付方法であり、代理請求分は窓口であってもその場では受け取れません。マイナンバーが個人情報として最も高いレベルのものになる点から、原則として本人宛に郵送する運用が採られています。
③亡くなった人の番号は記載不要
被相続人(=亡くなった人)の個人番号は、特に調べる必要がありません。国税庁のFAQページでも、次のように解説されています。
「マイナンバー(個人番号)の記載が必要な方は、相続税の申告をされる方です。したがって、被相続人のマイナンバー(個人番号)を相続税の申告書に記載する必要はありません」
■相続税申告書を提出する際の注意点
マイナンバー記入とセットで覚えるべき点として、本人確認書類が求められる点です。添付する書類にはいくつかのパターンがあり、その一部は添付の状態にポイントがあります。
①番号確認+身元確認が原則必要
添付する本人確認書類は、①番号確認になるものと②身元確認になるもので1セットです。住民票の写しと住民票記載事項証明書を除き、いずれもコピーで構いません。
なお、税務署の窓口で申告書を出す場合、提出者の分は原本を提示するだけで済みます。
●番号確認になるもの(いずれか1点)
・通知カード
・住民票の写し
・住民票記載事項証明書※
・マイナンバーカードの裏面
●身元確認になるもの(いずれか1点)
・運転免許証
・健康保険証
・パスポート
・身体障害者手帳
・在留カード
・マイナンバーカードの表面
②マイナンバーカードは裏表両面を提示する
マイナンバーカードは1枚で本人確認書類として完結しますが、裏表両面の提示が求められる点に注意しましょう。表面だけだと、肝心の個人番号を確認できません。
相続税の申告書を代表して提出する人は、二度手間を避けるため、他の相続人に知らせておきたいところです。
③住民票はマスキング処理を施す【申告者以外の分】
住民票の写しを本人確認書類として提出する場合、同じ世帯の人の個人番号も一緒に載っているのが問題です。法律上の「特定個人情報」にあたる点から、手続きと無関係の人の番号はむやみに提出できません。
今回の相続で財産を取得していない世帯構成員に関しては、黒塗りでマイナンバーを見えなくする処理が必要です。
■税理士に申告書作成を依頼する場合
税理士に相続税の申告業務を依頼するとしても、マイナンバー関連の対応で大きく変化することはありません。申告書の提出義務者として、最低限自力での対応が必要になる部分です。
①申告義務者が自力で対応する範囲
申告業務の依頼人側で行うのは、紹介した本人確認書類の収集です。準備が整えば税理士に提供し、相続税の申告書に記載してもらいます。
心配なのは預けた番号の漏洩・不正使用等のリスクですが、実際に事故が起こるケースはほとんどありません。税理士法人では、個人情報保護委員会のガイドラインに沿い、適切な安全管理措置が取られるのが普通です。
②申告書に添付する書類
税理士側では、代理権と資格をそれぞれ証明する書類を用意しなくてはなりません。参考までに、申告書に添付する書類を紹介しておきます。
・税務代理権限証書
・税理士証票
・マイナンバー確認書類(依頼人から渡されたもの)
■まとめ│マイナンバー記載は省略不可・余裕のある対応を
相続税の申告書に対するマイナンバー記入は、年末調整等と違って省略できません。財産を取得した人全員分の確認を行い、添付する本人確認書類も揃えましょう。
番号記入済の申告書に関しては、以下の注意点があります。
・本人確認書類は「番号確認」と「身元確認」でセットにする
・マイナンバーカードで本人確認する場合、裏表両面要
・住民票の写しを提出する時は、関係のない世帯構成員の番号を黒塗りする
マイナンバー関連の対応は、申告業務のほんの一部に過ぎません。それでも、忙しくて番号確認が出来なかったり、家族の代理で市区町村役場へ行かなければならなかったり、何かと手間がかかります。税理士に頼んでも省略できない対応ですが、他の大半の申告業務を任せられる分、負担は目に見えて軽くなるでしょう。