実家を処分する前に知っておきたい3つのこと
近年、少子高齢化などの原因もあり、使われなくなった実家を処分する人は増えています。
実際、「亡くなった父の自宅を相続したが、誰も使わないので処分に困っている」というようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。実家の処分の仕方にはさまざまあるため、自分に合った方法で処分しなければ後々困ったことになる可能性があります。
そこで、今回は実家を処分する前に知っておいた方が良い知識について、いくつかご紹介します。後々後悔しないために、どのような処分方法があるのか、また処分する前に何をしておくと良いのかを確認しておきましょう。
❶実家を処分する前に知っておきたいこと
売却によって実家を手放すことだけが処分ではありません。実家の処分を検討している場合には、以下の順序で処分方法を考えていくことができます。
1. 売らずに有効活用はできないか
2.どんな売り方ができるか
3. 相続放棄も検討する
ここでは、実家の処分をする前に知っておきたい処分の方法について詳しくご説明します。
その①売らずに有効活用はできないか
まずは、実家を売らずに他の用途で活用できないかを考えてみましょう。
実家の所有権が自分にあるとしたら、実家を賃貸物件として他の人に貸し、家賃収入を得る方法があります。実家の築年数が浅く状態が良ければそのまま貸し出すことができますが、築年数が古く耐震性や断熱性に問題のある場合には、リフォームやリノベーションなどを行なってから貸し出すことになります。
賃貸では毎月一定の金額が家賃収入として得られますので、賃貸期間が長ければ長いほど多くのお金を生み出すことができます。ただし、賃貸不動産の管理は簡単なことではありません。
実家の立地や性能によってはなかなか借り手がつかず、ただ固定資産税だけがかかる「負動産」となってしまう可能性があります。また、修繕や管理などの業務も行わなければならず、リフォームやリノベーションをする場合には、数十万円から数百万円ほどの費用がかかってしまいます。賃貸不動産として活用する前に、あらかじめ賃貸需要などの情報収集をしておきましょう。
また、実家を他の人に貸し出さずに、セカンドハウスや親族が集まる場所として活用する方法もあります。親の実家を相続した方の中には「思い入れのある実家を手放したくない」と考える方もいらっしゃいます。このような場合には、相続した実家をセカンドハウスや親族が集まる場所として残しておく方法が有効です。この方法は、実家を自宅として利用するわけではありませんが、思い出を形として残しておくことで、親戚同士で集まるきっかけを作ることができます。
ただし、実家を所有し続けることになりますので、固定資産税などの税金は修繕費などの費用がかかります。どのくらいの費用が必要になるか、あらかじめシミュレーションをしておくと良いでしょう。
その②どんな売り方ができるか
実家を売却することに決めたら、どのような状態で売却するかを検討しましょう。
例えば、実家をそのまま売却する方法だけでなく、建物を解体してから土地のみを売却する方法も考えられます。特に、築年数が古く耐震性や断熱性が不十分な建物ですと、なかなか買い手が見つからない可能性がありますので、このような場合には建物を解体して土地のみを売却したほうが良いでしょう。
ただし、建物の解体は30坪の木造家屋で約100万円ほどの費用がかかるといわれています。その他にも、建物を解体することによって、土地にかかる固定資産税が高くなったり、売却の際の特別控除などの特例が使えなくなったりといったデメリットも存在します。総合的にかかる費用を想定し、慎重に判断するべき売却方法です。
さらに、実家の売却では売却する状態だけでなく、売却する手段を決める必要があります。実家を売却する手段には「仲介」と「買取」の2つの方法があります。仲介とは不動産業者に依頼をして実家の買い手を探してもらう方法で、買取とは不動産業者に直接実家を買い取ってもらう方法です。どちらの方法が良いというのはありません。しかし、実家を売りたい人が実家を優先するのか金額を優先するのかによって選ぶべき方法は異なります。
例えば、仲介の場合、実家の売り手と不動産業者との間で「媒介契約」という契約を結ぶことによって、不動産業者が実家の買い手を探してくれます。売り手としてはできるだけ高い値段で売りたいと考えるのが当然ですから、希望通りの値段で買ってくれる人が見つかるまで時間がかかってしまう可能性があるのです。
一方で、買取の場合は不動産業者が買い手となるわけですから、すぐに実家を手放すことができます。しかし、不動産業者は安く不動産を手に入れて他の人へ高く売却·賃貸することを考えていますので、買取価格は仲介の約2~3割ほど低い傾向にあります。
実家の立地や性能によっては、売り手の希望通りの価格·時期に売却できない可能性は十分に考えられます。仲介と買取、どちらの方法を選択するにしても、まずはいくつかの不動産業者で査定をしてもらい、売却価格や対応を比較してみましょう。
その③相続放棄も検討しましょう
活用方法の見当たらない空き家、売値がつかない空き家、無償でも引き受け手がない空き家、お金をつけても引き受け手がない空き家については「相続放棄」という方法を検討しましょう。
相続が発生したとき、自分は亡くなった人の財産を相続するかしないかを選択することができます。例えば、亡くなった人に借金が多く、財産を相続したとしても全て借金の返済に充てられてしまうケースがあります。このような場合には、「相続放棄」をして、財産を一切相続しないという選択をすることができるのです。
相続放棄をせず、空き家を放置しておくと「空き家対策特別措置法」により、相続人に思わぬ請求が来ることがあります。
空き家対策特別措置法は2015年に施行された法律で、空き家に適切な管理がされておらず、問題があると行政に判断された場合、その空き家は「特定空家」に指定され、行政がその空き家の所有者に管理を行うように指導することができるものです。行政から指導を受けた場合には、すぐに対応する必要があるのですが、もしそのまま空き家を放置し続けてしまうと、国から勧告が出され、「固定資産税の住宅用地特例」が適用できなくなってしまいますので注意が必要です。
固定資産税の住宅用地特例とは、住居が建っている土地にかかる固定資産税を軽減する特例です。この特例が適用できないとなると、誰も住んでいない空き家に多くの固定資産税を支払うことになってしまいます。
管理しきれない空き家を相続しても、費用がかかるだけになってしまいますので、相続放棄をして空き家を相続しない選択も検討しましょう。
❷実家を処分できるようにしておきましょう
実家の処分を考えたとき、処分の方法を検討する前に準備しておくことがあります。準備をせずにいきなり処分をしてしまうと、相続人同士で争いになったり、かえって時間がかかったりとトラブルの原因になります。
ここでは、実家を処分する前にしておくべき準備についてご説明します。
準備①生前に相続人の合意を得ておく
実家の相続後に処分するとなると、相続人の中で「実家を売却してお金にしたい」という意見と「思い入れのある実家を残しておきたい」という意見が対立するケースがあります。特に、主な相続財産が実家のみの場合には、この意見の対立が激しくなり、相続争いに発展してしまうこともあるのです。
このようなトラブルを防ぐためには、生前に相続人全員に実家の売却についての合意を得ておく必要があります。
相続財産である実家を売却する場合、一旦相続人のうちの誰かに名義変更をしてから売却をすることになります。誰が実家の名義人(相続人)になるかは亡くなった人の遺言または相続人同士の話し合い(遺産分割協議)によって決めることになりますが、この遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。しかし、実家を売りたくない相続人が1人でもいると、遺産分割協議が成立せず、なかなか実家の売却を進めることができないのです。
もし、相続財産となる実家を売却したいと考えている場合は、まずは相続が発生する前に相続人全員と話し合いをして合意を得ておくことで、スムーズに売却を進められるでしょう。
準備②実家の名義や土地の境界線を確認しておく
実家を売却をしようにも、現在の実家の名義人や境界線がはっきりしていないと売却を進めることができません。
例えば、亡くなった人が相続により実家を取得していた場合、相続登記をしていない可能性が考えられます。そうすると、亡くなった人よりも前に所有していた人の名義になっているはずです。相続した実家を売却するためには、売却する人も名義に変更する必要がありますので、今回の相続人は①前回の相続による名義変更と②今回の相続による名義変更(亡くなった人から自分への名義変更)の2回を行う必要があります。2回分の名義変更を行う場合には通常よりも手間がかかりますので、事前に実家の名義人を把握しておくことが大切です。
また、実家を売却する場合には、土地の境界線をはっきりとさせておく必要があります。土地の境界が曖昧なままでは、お隣さんと境界をめぐってトラブルが発生する可能性があるからです。そのため、土地の売却には土地測量図や境界確認書などの書類が必要になります。
土地の境界を検査する確定測量は、お隣さんの立ち会いのもとで行います。この検査は土地家屋調査士へ依頼して行いますが、境界標などが壊れていると検証に時間がかかることもありますので、売却まで余裕を持って手続きをすることをお勧めします。
準備③空き家の3,000万円特別控除について知っておく
空き家の3,000万円特別控除とは、相続した空き家を売却して得た譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができる特例です。
通常、不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生すると、その譲渡所得に対して税金が課税される仕組みになっています。しかし、売却した不動産が要件を満たした空き家の場合には、この譲渡所得から3,000万円を控除することができ、支払う譲渡所得税を抑えることができるのです。
なお、譲渡所得は譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額となります。譲渡費用とは、取得のために要した登録免許税や不動産業者への仲介手数料などを合計した費用です。
例えば、亡くなった人が3000万円で取得した不動産を相続し、5000万円で売却した場合、譲渡費用を200万円とすると、譲渡所得は5,000万円−(3,000万円+200万円)=1,800万円となります。ただし、空き家の3,000万円特別控除を利用すると、1,800万円(譲渡所得)−3,000万円(控除)で支払う譲渡所得税がゼロにできるのです。
まとめ
今回は実家の処分についてあらかじめ知っておきたいことをご説明しました。年々実家を処分する人は増えていますが、自分に合った処分法を選択できている方は少ないように感じます。
「実家を相続したが、どのように処分して良いかわからない」
このような悩みを抱えている方は、まずは相続に詳しい専門家に相談することをお勧めします。
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