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「生計を一にする」の定義とは? 相続税の小規模宅地等の特例!利用の仕方を徹底解説

2023/09/29
「生計を一にする」の定義とは? 相続税の小規模宅地等の特例!利用の仕方を徹底解説
亡くなった人の自宅の土地や、事業用の敷地を相続する時に、一定の要件を満たすことで、その土地にかかる相続税を軽減することができます。これを「小規模宅地等の特例」といいます。この記事では、「小規模宅地の特例」に関して詳しく説明しています。

亡くなった人の自宅の土地や、事業用の敷地を相続する時に、一定の要件を満たすことで、その土地にかかる相続税を軽減することができます。これを「小規模宅地等の特例」といいますが、特例を適用するためには、亡くなった人と土地を相続した人が「生計を一にしていた」という要件を満たす必要があります。ここでは、「小規模宅地等の特例」の概要と、その要件のひとつである「生計を一にする」ことについて、その定義を解説します。

 

■「小規模宅地等の特例」の概要

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人の居住用または事業用の土地を、被相続人と生計を共にしていた人が相続した場合、その宅地(土地)にかかる相続税を限度面積まで、決められた割合で減額するというものです。

減額割合は、宅地の要件により異なります。例えば、居住用の土地であれば、330㎡を限度に80%、貸付事業用宅地であれば、200㎡を限度に50%が減額されます。

 

仮に、被相続人の居住用宅地が330㎡以下で相続税評価額が1億円であった場合、小規模宅地等の特例を適用することで、1億円の80%が減額されることになるため、土地の相続税評価額は1億円→2,000万円になります。

<減額される割合>

相続開始の直前における

宅地等の利用区分

要 件

限度面積

減額される

割合

被相続人等の事業の用に供されていた宅地等

特定居住用宅地等に該当する宅地等

330㎡

80%

被相続等の事業の用に供されていた宅地等

被相続人等の

事業の用に

供されていた

宅地等

特定事業用宅地等に該当

する宅地等

特定事

業用等

宅地等

400㎡

80%

貸付事業用の

宅地等

特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等(一定の法人の事業の用に供されていたものに限ります。)

400㎡

80%

貸付事業用宅地等に該当する宅地等

200㎡

50%

(出典:国税庁 申告要否判定コーナー

【相続税の申告要否判定コーナー】-小規模宅地等の特例

 

■「生計を一にする」についての判断基準

それでは、「小規模宅地等の特例」の適用要件のひとつである「生計を一にする」とはどのような状態を指すのか確認していきましょう。

「生計を一にする」とは、別の言葉で表現すると「同一生計」ということになります。

同一生計というと、同じ屋根の下で生活している家族をイメージするかもしれません。

確かに同居している家族であれば、多くの場合、同じお財布(家計)で生活していますので、基本的には「生計を一にしている」とみなされます。

しかし、同居していない場合でも、日常的によくある次のようなケースでは「生計を一にしている」とみなされます。

・単身赴任

・子が親元を離れて一人暮らし

・病院や施設で療養 など。

仕事の都合で単身赴任中、大学生の子が親元を離れ一人暮らし、家族が病院や施設で療養中など、日常的に同居することが出来ない場合であっても、家族間で生活費や療養費、学資金などの送金が行われている事実があり、休暇や余暇には家族の元で過ごすなどの実態があれば、「生計を一にしている」とみなされるのです。

まとめると、

(1)同居の場合

明らかにお互い独立した生活を営んでいる場合を除き、一般的には「生計を一にしている」ものと認められる。明らかに独立した生活とは、例えば二世帯住宅で水道、ガス、電気のメーターが別だったり、食費を別会計にしているなどの場合が該当し、この場合は別生計とみなされます。また、住民票上の世帯の分離が必ずしも別生計に繋がるわけではありません。世帯を分離したとしても、一つの財布(家計)から生活費を支出している実態があれば、「同一生計」とみなされます。

(2)別居の場合

居費、食費、水道光熱費などの生活費全般や、学費、病院や介護施設等の療養費などの日常の生活にかかる費用を、別居の家族が負担している実態を示すことができれば、同一生計とみなされます。

つまり、「生計を一にする」とは、同居か別居かという形式的なことではなく、あくまで生活実態に即して判断されるということです。

 

具体例で確認! こんな場合は?

※親子で生活費を折半、または一定割合ずつ負担している場合

親子であっても子が社会人となれば、生活費の一部を子が負担する場合もあるでしょう。子が毎月定額を生活費として家へ入れたり、親が一旦生活費を負担し、後に子が一定割合を負担するようなケースが考えられます。

この場合、親子双方に生活費の負担が生じていますので、お互いが独立して生計を立てているようにもみえますが、最高裁は次のような判断をしています。

「家計費を一定の割合で負担している事実は、「生計を一にする」との要件の充足を否定する方向に働くものとはいえず、むしろ逆にこれを裏付けるものである。」

(東京高裁、平成16年6月9日)

つまり、生活費のうち一定割合をお互いが負担していても、独立生計とみなすのではなく、逆に双方が協力してひとつの生計を立てているという解釈になり、「生計を一にする」要件になるということです。

夫婦の双方に収入がある場合

共働きで夫婦共に相応の収入があり、夫婦それぞれが一定割合ずつの生活費を負担している場合です。一見すると別生計のように思えますが、こちらも前述の親子のケース同様、同一生計とみなされます。所得税法上の扶養関係がなくても、同一生計の要件には影響しません。

※親の生活を援助している場合

子が親の介護のために、食事の世話や生活介助を行う場合です。その費用を親自身が負担していれば同一生計とはみなされず、別生計となります。反対に、子が親の生活費や介護費用を負担している事実があれば、同一生計とみなされる場合もあります。

 

まとめ

「小規模宅地等の特例」の概要と共に、「生計を一にする」ことの定義を解説しました。

同一生計であるか否かは、最高裁が示す判例にもあるように、実際には、経済的、形式的、物理的な様々な観点からケースバイケースで判断されます。

将来、親族の自宅や事業用の土地を相続する予定がある方は、「小規模宅地等の特例」と「生計を一にする」ことの定義を知っておいたほうが良いでしょう。

 

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