増加中!「老老相続」の問題点と役に立つ対処方法四選!
厚生労働省が2022年7月に発表した日本人の平均寿命は、男性が81.47 年、女が87.57年。
平均寿命の伸びは、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」を生み出しているだけでなく、財産を引き継ぐ相続人も高齢になってくるという「老老相続」という現状も起こしていました。
この記事では、「老老相続」の問題点と対処方法について説明します。
1 そもそも「老老相続」って? 問題点は?
老老相続とは、高齢者の相続人(世界保健機関の定義では、65歳以上の人のこと)がさらに高齢者である被相続人(親など)から財産を受け継ぐ相続の形態です。現代社会での高齢化が進む中で、「老老相続」がどんどん増えているのです。
●老老相続の問題点とは?
①金融資産の停滞
そもそも相続制度は、貯蓄の富裕な高齢者から若年層へ、資産保有の世代交代を促すという本来の目的がありますが、高齢者から高齢者からの資産の移転の場合は、なかなか資産の世代交代が行われません。
相続人も高齢者であるため、受け継いだ資産を「老後の資金」して貯蓄してしまうので、社会に流通されない動かない金融資産が増えてしまうという問題点が生まれています。
②数次相続に関する懸念
数次相続とは、短期間のうちに連続して相続が発生するケースをいいます。
例えば、親が亡くなり子が相続した後、その子もすぐに亡くなり、孫が再度相続する場合などです。数次相続では、一次相続と二次相続の相続人がそれぞれ異なる場合が多く、相続手続きが複雑になり、相続税の問題や家族間のトラブルが起こりやすくなることが懸念されます。
③相続人の意思能力欠如
財産を引き継ぐ相続人が認知症を発症したり、突然病気になり、意思能力を欠如する状態になった場合、遺産分割協議を行うことが難しくなります。
遺産を法定相続分以外の分け方で進めるような場合、意思能力の欠如した相続人には成年後見人が選任され、法定相続分を取得することになるため、より手間やコストがかかります。このような状況でも適切な対策が必要です。
2 「老老相続」をスムーズに行うための対策四選
①遺言書の活用
意思能力が欠如するまえに、遺言書を作成しておくのは一つの方法です。遺言者の意思に従って遺産の分割や管理を行う遺言執行者を指定することができます。遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つが知られています。どちらにもメリットとデメリットがありますので、ご自分や家族にあった作り方をしましょう。作成に手間がかかると感じた場合は、専門家への相談もよい方法です。
以下のリンクでは、それぞれの遺言書についての作成手順とメリット・デメリットが詳しく解説されています。
②生前贈与の活用
老老相続の場合、資産の移転の遅さが問題視されていることもあり、子や孫に、早めに生前贈与をしておくのも一案です。贈与税が非課税になる年間110万円までの暦年贈与はよく知られています。使い方を研究して利用したいですね。
③成年後見制度の利用
成年後見制度は、意思能力が欠如している相続人に対するサポートを行うための制度です。
成年後見制度には、任意後見と法定後見の2つのタイプがあります。
任意後見は、意思能力がまだあるうちに、将来的に意思能力が欠如することを想定して、自分で後見人を選任する制度です。任意後見契約を締結することで、意思能力がなくなった場合に選任した成年後見人予定者が後見人となり、遺産管理や相続手続きを代行します。後見開始後には家庭裁判所から後見監督人が選任され、実質的に家庭裁判所の監督のもとで行われます。
法定後見は、意思能力が既に欠如している相続人に対して、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
後見人は遺産管理や相続手続きを代行し、相続人をサポートします。成年後見人は家庭裁判所によって選任され、監督されるため、信頼性が高いと言われています。
④家族信託の利用
家族信託とは、自分の持っている財産を信頼できる家族に預け、その財産の管理や運用、処分を任せることができる制度です。遺言とは異なり、亡くなる前から実行することができます。相続人の意思能力が欠如する可能性に対処することができます。
家族信託は、老老相続問題において有効な手段の一つですが、信託を設定する際には専門家の意見を求めることが重要です。信託の費用や手続きについて十分に検討し、家族間でコミュニケーションを取りながら、適切な選択を行ってください。
3 まとめ
老老相続をスムーズに進めるためには、適切な対策が必要です。遺言書や生前贈与、成年後見制度、家族信託の活用方法を理解し、相続人や家族の状況に合わせた選択を行いましょう。また、税務上の注意点や節税対策にも目を向けることが重要です。
「老老相続」に関してのお悩みは、「ソレイユ相続相談室」にご相談ください。