相続手続きの費用と手間を抑える完全ガイド

初めての相続では、その手続きの煩雑さに驚く方がほとんどです。銀行や証券会社ごとに異なる書式、役所ごとに違う書類など、複雑な手続きに戸惑うのは当然のことです。
本記事では、相続手続きをより安く、より簡単に進めるための実践的なポイントを、期限ごとに整理してご紹介します。初めての方でも安心して進められるよう、専門家の視点から分かりやすく解説します。

相続手続きで最初にすべきこと

なぜ故人の資料探しが重要なのか?

相続手続きは、亡くなった方の加入状況や取引関係によって必要な手続きが変わります。やみくもに動き始める前に、まずは故人が保管していた書類を探すことから始めましょう。
同居していた家族なら、健康保険証や銀行通帳、不動産の権利書などの保管場所を把握しているかもしれません。しかし別居していた場合や、同居でも財産管理を別々にしていた場合は、故人の生活空間から関連書類を探し出す必要があります。

 

探すべき主な書類

• 健康保険証・年金手帳
• 銀行通帳・証券口座の書類
• 不動産の権利書
• 保険証券
• 郵便物(請求書や通知類)

 

見つかった書類はすべて保管し、故人宛の郵便物も捨てずに取っておきましょう。これらが相続手続きの重要な手がかりになります。

期限別・相続手続きの完全チェックリスト

死亡後7日以内の手続き

死亡診断書の取得 医師から死亡診断書を発行してもらいます。病院で亡くなった場合は担当医が、自宅の場合は主治医が発行します。生前に診察を受けていない場合は、死体検案書が必要です。

 

死亡届の提出 死亡診断書を受け取ったら、死亡届を市区町村役場に提出します。提出は親族や同居人などが行えます。葬儀会社が代行してくれるケースも多いです。

 

火葬・埋葬許可証の取得 死亡届と同時に申請し、火葬・埋葬許可証を取得します。この許可証を葬儀会社に渡すことで、葬儀を執り行うことができます。

死亡後10〜14日以内の手続き

年金受給停止 厚生年金は死亡後10日以内、国民年金は14日以内に年金事務所で手続きが必要です。受け取っていない年金があれば、未支給年金として請求できます。

 

健康保険証の返却 会社員だった場合は勤務先を通じて返却、国民健康保険の場合は市区町村役場に返却します。75歳以上の方は後期高齢者医療資格喪失届も必要です。

 

介護保険の手続き 65歳以上、または40歳以上で要介護認定を受けていた場合は、介護保険被保険者証を返却します。保険料の未納や過納があれば、相続人が清算します。

できる限り早く確認すべきこと

遺言書の有無確認 自筆証書遺言は自宅や法務局を、公正証書遺言は公証役場を探します。遺言書を見つけても勝手に開封せず、家庭裁判所で検認手続きを受けてください(公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要)

死亡後3ヶ月以内の重要な選択

相続方法の決定 相続には3つの選択肢があります。

 

単純承認:すべての財産を相続(手続き不要)
限定承認:プラスの範囲でマイナスを相続(相続人全員の合意が必要)
相続放棄:すべての財産を放棄(後から撤回不可)

 

明らかに借金が多い場合は相続放棄を検討しますが、一度放棄すると撤回できないため慎重な判断が必要です。調査に時間が必要な場合は、家庭裁判所に期間延長を申し立てることもできます。

死亡後4ヶ月以内

準確定申告 個人事業主だった場合や不動産収入があった場合、給与所得が2,000万円超だった場合などは、相続人が代わりに確定申告(準確定申告)を行います。1月1日から死亡日までの所得を申告し、納税します。

相続人と財産が確定したら

遺産分割協議書の作成 「誰が、何を、どのくらい相続するか」を相続人全員で話し合い、合意内容を遺産分割協議書にまとめます。相続人全員の署名と押印が必要で、不動産や金融機関の名義変更に使います。

 

名義変更手続き 不動産、預貯金、株式、自動車など、故人名義の財産を相続人名義に変更します。特に不動産は、放置すると売却や担保設定ができず、次の相続時にさらに複雑になるため、早めの手続きが重要です。

死亡後10ヶ月以内

相続税申告 相続財産の評価額が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。

例えば相続人が3人なら、基礎控除額は4,800万円となり、これ以下であれば相続税はかかりません。配偶者の軽減税率や小規模宅地の特例を使えば、さらに税負担を減らせる可能性があります。

相続手続きのコストを抑える3つの工夫

1.原本還付で戸籍謄本を使い回す

各手続きで必要な戸籍謄本は、「原本還付」という方法が使えます。返却された原本を次の手続きに使い回すことで、何通も取得する必要がなくなり、経費を節約できます。

 

手順: 戸籍謄本のコピーの余白部分に「原本と相違ありません」と記載し、申請人が署名捺印したものを原本と一緒に提出します。原本は手続き完了後に返却されます。

 

デメリット: 1つの手続きが終わってから次に進むため、すべての手続き完了まで時間がかかります。

法定相続情報一覧図を作成すればさらに効率的

法定相続情報一覧図とは、亡くなった方と相続人の関係を家系図のように示し、法務局が公的に証明した書類です。作成時には戸籍謄本一式が必要ですが、一度作成すれば、以降の手続きではこの一覧図だけで済み、戸籍謄本の原本を繰り返し提出する必要がなくなります。

 

法定相続情報一覧図を作成するメリット

• 戸籍謄本を何度も取得する必要がない
• 法務局の認証印があり公的な証明書として使える
• 無料で必要な枚数の写しを発行してもらえる
• 複数の手続きを同時進行できる

法務局に一度申請すれば、認証文付きの一覧図の写しを無料で必要な枚数を発行してもらえます。銀行、証券会社、保険会社など、それぞれに同時に提出できるため、手続きの時間を大幅に短縮できます。

 

状況別の選び方

• 時間に余裕がある、手続きする件数が少ない場合 → 原本還付で順番に進める
• 複数の手続きを早く終わらせたい場合 → 法定相続情報一覧図の作成がおすすめ

2.事前の電話確認で二度手間を防ぐ

各手続き先(役所・金融機関)に事前に電話して、必要書類を確認しましょう。郵送で資料を取り寄せ、あらかじめ記入して持参すれば、窓口での時間を短縮できます。

3.専門家選びで費用が大きく変わる

平日に時間が取れない方は、専門家への依頼を検討しましょう。

 

金融機関の相続手続きサービス

メリット
• 普段から取引のある銀行で安心して任せられる
• 相続に関する手続きをワンストップで対応
• 相続財産の管理や運用も含めて総合的にサポート
• 複雑な相続でも専門家チームが対応

 

デメリット
• 実務は提携士業が行うため、間接的なコストが発生

 

こんな方におすすめ: 相続財産が多く、資産管理も含めて総合的なサポートを受けたい方

 

専門士業への直接依頼

メリット
• 必要な手続きに応じて専門家を選べる
• 金融機関経由よりも費用を抑えられる
• 専門家と直接やり取りできるため、スムーズに進む

 

デメリット
• 自分で適切な士業を探す必要がある
• 複数の専門家が必要な場合、それぞれに依頼する手間がかかる

 

依頼先の選び方

• 相続トラブルがある場合→弁護士(相続税も心配なら税理士も)
• トラブルがない場合→司法書士、行政書士(相続税があれば税理士)

 

こんな方におすすめ: 費用を抑えたい方、必要な手続きが明確な方

重要なのは、相続を専門に扱っている士業を選ぶこと。無料相談を活用して、費用や対応範囲を比較検討しましょう。

遺産分割で失敗しないために

遺産分割協議は、相続手続きで最も緊張する場面です。トラブルを防ぐためには、以下の点を明確にしておくことが大切です。

 

• 相続財産は誰が調べるのか
• 財産目録は誰が作成するのか
• 遺産分割のたたき台は誰が準備するのか
• 専門家は誰が選ぶのか
• 名義変更は誰が実行するのか

 

これらを曖昧にしたまま進めると、些細な行き違いで相続人の関係が悪化することがあります。多くの人が初めて経験する遺産分割だからこそ、経験豊富な専門家の助言を受けながら進めることをお勧めします。

次の相続まで考えた賢い選択

遺産分割では、目の前の分配だけでなく、次の相続まで見据えた判断が重要です。

 

• 相続税を支払えるか
• 財産を維持できるか
• 次の相続で困らないか
• 認知症になった場合の対策は
• 二次相続のコストを抑える方法はないか

※二次相続とは、最初の相続(一次相続)で財産を受け取った配偶者などが亡くなった時に発生する、次の相続のことです。

 

このような長期的な視点でアドバイスできるのは、数多くの相続支援経験を持つ専門家です。無料相談を活用して、将来まで見据えた最適な相続を実現しましょう。

まとめ:相続手続き成功の6つのポイント

1. 故人の資料を徹底的に探す:権利書、保険証券、通帳など関連書類をすべて保管
2. 事前調査で効率化:各手続き先に電話で必要書類を確認し、取り寄せておく
3. 書類の使い回しを活用:原本還付で戸籍等のコストを削減
4. 遺産分割は慎重に:役割分担を明確にし、争いを未然に防ぐ
5. 次の相続まで考える:長期的な視点で最適な分割方法を選ぶ
6. 相続専門家を活用:無料相談で費用と対応を比較し、最適な専門家を選ぶ

 

相続手続きは複雑に見えますが、この記事でご紹介した方法を参考に、一つずつ進めていけば必ず完了できます。ご自身の状況に合わせて、自分で進めるか専門家に依頼するかを判断し、早めに着手することが大切です。

監修者

宮澤 博

税理士・行政書士
税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、 お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、 他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。

無料相談のご予約・お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ
(ソレイユ総合窓口となります)

電話アイコン

0120-971-131

営業時間/平日9:00~20:00まで
※電話受付は17:30まで