早めの相続対策のススメ「相続で必要な戸籍の集め方」
1 相続人が確定しないと手続きは進まない
親が亡くなって、預金や不動産の名義変更をするのに必要となるのが戸籍です。
相続人が誰になるのか確認しないと相続手続きは先に進められません。特に、遺言が無い場合、遺産の名義変更をするのに相続人全員の実印と印鑑証明書か必要になります。
そのため、相続人はだれかを戸籍で証明する必要があります。
例えば、手続きをしようと、銀行の窓口に行った一人息子。
父が亡くなって、相続人は母と自分だけだとわかっているのに、なぜ父が生まれたときからの戸籍がいるのか?
と思うはずです。
でも、銀行の窓口の向こう側では、疑うわけじゃないけど、こんなこと確認をしたいと思っているのです。
お父様はいつ亡くなったのか?
お母様はご健在なのか、窓口に来ているお客様がお父様とどのような関係なのか戸籍で確認したい。
もし、お父様が、最後の居住住所以外に住んでいた住所があれば、そこで結婚して、離婚して、子どもがいたということもありうる……。
戸籍の全ての情報は、最後の居住住所の市役所で取る戸籍には全部が載らないから、他に子どもがいないか念のため確認したい。
このような理由から、相続人が誰なのかを戸籍で証明する必要があるのです。
2 戸籍の集め方と種類
亡くなった方の戸籍は、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を取得する必要があります。
生まれた時までさかのぼった戸籍の取得は、
死亡の旨が記載されている最新の戸籍から、順番に古い戸籍にさかのぼって、取得していきます。
戸籍謄本は、「本籍地」を管轄する市区町村役場に「本籍地」と「戸籍の筆頭者(戸主)」を特定して請求します。
本籍地が不明の場合は、その人の「本籍地記載あり」の住民票を取得してから、本籍地を確認してから請求します。
実際の請求手続きは、
市区町村役場の戸籍係の窓口に出向いて交付申請するか、
郵送で請求するかのどちらかになります。
郵送で請求する場合は、
・戸籍謄本取得申請書(市区町村役場のホームページからダウンロードできます)
必要事項(本籍地、筆頭者、使用目的、申請者の住所・氏名・連絡先)を記入
・定額小為替証書
・返信用封筒(切手貼付済み)
・除籍謄本の申請書(戸籍謄本取得申請書の中に含まれている場合もあります)
・申請者の本人確認書類のコピー
・亡くなった方との関係を証明できる戸籍謄本
を入れて送付します。
戸籍の発行手数料は、全国一律で戸籍謄本が1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本が1通750円となります。
ちなみに、市役所に「死亡届」を提出してから、戸籍に死亡の旨が反映されるまで1~2週間ほどかかるため、すぐに戸籍の取得作業に入れない点はご注意ください。
戸籍集めは、亡くなった人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本が必要です。
1通でも欠けると相続人に漏れが生じる可能性があり、預金の名義変更や不動産の相続登記なども受理されませんから、戸籍のつながをしっかり確認しながら順番に取得しましょう。
ここで、戸籍の種類を少し解説しておきます。
戸籍には下記3つの種類があります。
①戸籍謄本 ②除籍謄本 ③改製原戸籍謄本
戸籍には、父母子どもなどの「家族」が入っていますが、死亡したり結婚したり本籍地を移したりすると、戸籍に記載された人がいなくなります。その結果、全員が出ていったり、死亡したりして誰もいなくなった戸籍を「除籍」といいます。
「除籍謄本」とは、その戸籍の中に入っている人が全員いなくなった戸籍の写しのことです。「除籍謄本」は謄本に記載された人が全員除籍となっていますが、「戸籍謄本」には除籍されない人が記載されています。
つまり、現に生きている人が戸籍内に残っていたら戸籍謄本、誰もいなくなったら除籍謄本になるのです。
改製原戸籍は、戸籍の電子化や再編成などによって戸籍が作り替えられたときの「以前の戸籍」となります。除籍ではなく、再編成によって前の戸籍が使われなくなったものは、記録を保存するために「改製原戸籍謄本」として市町村で保管されています。
また、戸籍は平成6年の戸籍法改正により、すべての市町村で電子化されています。そのため、平成6年以前に生まれた人は、電子化された現在の戸籍と改製原戸籍の2種類の戸籍謄本が存在することになります。
平成6年の戸籍法改正以前の古い戸籍は、縦書きで市区町村役場の戸籍係が手書きで記入していました。
平成6年の戸籍法改正以降の戸籍は、全て電子化されており、横書きの印刷形式になっています。
電子化された戸籍謄本を「全部事項証明書」、戸籍抄本を「個人事項証明書」と呼びます。
謄本は「家族全員分(中に入っている人全員分)」の写しという意味です。抄本(一部事項証明書)は「1人分だけの写し」となります。
3 戸籍の見方具体例
Q. 金融機関に父の戸籍謄本を持っていきましたが、父の「生まれてから死亡するまで」の戸籍が必要だと言われました。
戸籍を取った役所では他に戸籍はないと言われ、他の戸籍はどのように集めればよいのでしょうか?
A. お父様(被相続人)の「出生から死亡まで」の戸籍を揃えるには、まずお父様(被相続人)の最後の本籍地の役所で、最終の戸籍謄本を取り寄せます。
最後の本籍地が分からない場合は、住民票で本籍地を確認することができます。
お父様は転勤が多く引っ越しのたびに本籍も変えていたようでした。
戸籍を辿り転籍前の役所から戸籍を取得する必要があります。
以下の画像(全部事項証明書見本)をご覧ください。
※戸籍に記載の住所・氏名等は全て架空です
赤枠の①に「【改製日】平成22年8月1日」「【改製事由】平成6年法務省令51号附則第2条第1項による改製」とあります。
平成6年に戸籍法が改正されたのですが、従来の戸籍の様式が縦書きだったものをコンピュータ化により横書きに変更となりました。
この改製により閉鎖された縦書きの戸籍を「改製原戸籍(かいせいげんこせき、または、かいせいはらこせき)と呼びます。(改製原戸籍見本参照)
※戸籍に記載の住所・氏名等は全て架空です
全部事項証明書の赤枠①は改製原戸籍の青枠①につながります。
お父様が最後の本籍地の前はどこに本籍を置いていたかは、赤枠②を見ると分かります。
「【従前戸籍】長野県長野市西尾張部〇〇番地 田中一郎」とあります。
改製原戸籍の青枠②も確認してみると「長野県西長野市尾張部〇〇番地より転籍」とあります。
お客様が次に取得する戸籍は、長野県の長野市役所から取り寄せることになります。
長野市役所からの戸籍を待って、また次の本籍地を辿っていく作業を繰り返すことになります。
旧民法の戸籍について
戸籍を辿っていくと、明治時代の戸籍が発行される場合もあります。
(旧民法戸籍見本参照)
※戸籍に記載の住所・氏名等は全て架空です
昭和22年5月2日までに開始した相続は旧民法が適用されます。現在は戸籍が新しくつくられる原因は「転籍」の他に「婚姻」や「分籍」があります。
この戸籍を見ると、「家督相続」という言葉がでてきます。
旧民法では、一般的に長男が「戸主」となって家を継ぎ、親の財産のすべてを相続する制度がありました。
赤枠③を見ると「隠居によってこの戸籍が抹消されたことが分かります。
この後の戸籍も存在したことになるので、相続人の確定に必要になる場合がありますので、見落とさないように注意が必要です。
4 まとめ
戸籍の取得は手間がかかり1ケ月以上かかることもあります。
取得ミスがあると再取得しなければなりません。
相続人調査は、その先の相続手続き、遺産分割協議の重要なスタートラインとなります。相続人を見落とさないよう、しっかりと確認しながら戸籍を集める必要があります。
そのため、経験豊富な専門家に相続相談をして戸籍の取得を依頼するのも良い方法です。
また、戸籍が揃ったら、平成29年から運用が開始された「法定相続情報証明制度」を利用することをお勧めします。
この制度は、法務局に相続関係を証明する戸籍謄本一式と「法定相続情報一覧図」を提出し、法務局による確認を経て、法務局が「法定相続情報一覧図の写し」を無料で発行してくれる制度です。
「法定相続情報一覧図の写し」は、戸籍謄本の代わりとして、金融機関の解約払戻や不動産の相続登記に利用することができますので、手続きごとに戸籍一式を用意する必要がなくなります。