相続対策を始めよう! 「 自筆証書遺言 」の書き方 文例集1
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言と3種類の形式がありますが、
実質的に使われているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。
自筆証書遺言は、文字通り自分の自筆で作成する遺言書です。
以前は遺言書のすべてを自筆で書かなければなりませんでしたが、2020年より、財産目録についてはパソコンなどで作成したものも使用可能となりました。
自筆証書遺言は、日付、署名、捺印の形式的要件を満たさなければ無効になってしまいます。また、内容については、誰に何を相続させるかを明確に記載しなければなりません。
自筆証書遺言の作成のポイントと文例をケース別に解説します。
❏作成のポイントと文例
1.自宅(土地・建物)の相続
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の財産を、遺言者の長男川崎一郎(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
記
(1)土地
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 150平方メートル
(2)建物
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造合金メッキ鋼板2階建
床面積 100平方メートル
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
登記簿謄本通りに記載してください。
土地の地番は住居表示と異なることがありますので、特に注意が必要です。
2.銀行預金、ゆうちょ銀行の貯金の相続
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の財産を、遺言者の妻川崎花子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
記
(1)〇〇銀行 〇〇支店 普通預金口座番号 9999999
(2)ゆうちょ銀行 ゼロニハチ支店 通常貯金 記号22222 番号11111111
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
相続させたい財産は金融機関名だけでなく、口座番号まで記載してください。
注意が必要なのは、一冊の通帳に2つの口座が紐づいている通帳です。(一冊の通帳に普通預金と貯蓄預金など)すべてを相続させたい場合は、それぞれの種別、口座番号の記載が必要になります。
遺言書に記載のない口座の預貯金は、遺産分割協議の対象となります。
3.自動車の相続
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の自動車を、遺言者の二男川崎二郎(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
記
登録番号 品川〇〇か5555
種別 普通
車名 〇〇 型式 〇ー〇〇〇
車台番号 〇〇〇〇
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
車検証を参照して記載しましょう。
4.有価証券の相続(株、国債など)
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
第1条 遺言者は遺言者の有する下記の株式を、遺言者の妻川崎花子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
記
口座番号 〇〇証券株式会社 〇〇支店 口座番号333333
〇〇〇株式会社 普通株式 500株
第2条 遺言者は遺言者の有する下記の国債を長男川崎一郎(平成〇〇年〇月〇日生)に相続させる。
口座番号 〇〇証券株式会社 〇〇支店
名称 利付国債債券(固定3年)
記号 第95回
発行日 平成〇〇年〇月〇日
利率 0.05パーセント
利払日 毎年2月15日 8月15日
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
取引報告書や国債証券などを確認して記載しましょう。
5.不動産を共同持分で相続
遺言書
遺言者 川崎太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する下記の不動産の持分を、長男川崎一郎(平成〇年〇月〇日生)、二男川崎二郎(平成〇年〇月〇日生)に2分の1ずつ相続させる。
記
(1)土地
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 150平方メートル
(2)建物
所在 横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造合金メッキ鋼板2階建
床面積 100平方メートル
2.遺言者の本遺言の執行者として、妻川崎花子を指定する。
令和4年7月1日
横浜市青葉区あざみ野〇丁目〇〇番地〇〇
川崎太郎 印
<ポイント>
不動産を共同相続させる場合は、登記の際、持分割合が必要になります。
遺言書に持分割合を明確に記しておきましょう。
❏遺言執行者の指定
遺言書には、遺言執行者として任意の人や専門家を記載をすることができます。
遺言執行者は、未成年者、破産者以外は誰でもなることができます。
なお、未成年者、破産者の定義は、遺言書の作成時点ではなく、遺言者が死亡して、遺言書の効力が発生するときです。
遺言執行者を指定する際は、次のような文言で遺言書に記します。
(例)
(妻を指定する場合)
遺言者の本遺言の執行者として、妻〇〇〇〇を指定する。
(専門家を遺言執行者に指定する場合)
遺言者は、本遺言の執行者として次の者を指定する。
横浜市中区〇〇丁目〇ー〇
税理士法人 共同会計社
本記事の1~5までの例では、必ずしも遺言執行者を指定する必要はありませんが、遺言執行者を指定しておくと、遺言を実現しやすくなるというメリットがあります。
なぜなら、遺言執行者は単独で相続手続きを進めることができるため、相続人同士の関係が良くなかったり、相続人同士が遠方など物理的な問題で手続きが進まなかったりする場合には、遺言執行者を指定しておくことで相続がスムーズに進められます。
❏まとめ
形式的要件として、遺言書には、日付、署名、押印が必ずなければいけません。
しかし、遺言書としては有効であっても、中身の文言が不十分、不明確であると、遺言者本人の意思が反映されないこともあり得ます。
専門家へ依頼すれば、適切なアドバイスをもらえること、そして遺言書の不備も回避できます。
遺言を遺言者の意思どおりに執行できるように、遺言書の作成を一人で行わず専門家へ相談することを検討してはいかがでしょうか。
まずは、ソレイユ相続相談室の無料相談をご利用ください。