早めの相続対策!「予備的遺言とはどのようなもの? 書き方の事例を紹介」
遺言書とは自分が亡くなった場合にだれに自分の遺産を相続するかについて記載されたものです。遺言書を作成する場合、相続させたい人はその時点で生きていることが前提です。しかし突発的な事故で相続しようと思っていた人が先に亡くなってしまうことがあります。さらに、高齢化社会の現在、高齢の親よりも先に子供が旅立ってしまうことも十分あり得ます。そのような場合を想定して、今注目されているのが予備的遺言という制度です。
❏被相続人よりも前に相続人が死亡した場合にどうなる?
特定の相続人に自分の財産を相続させたいと思って、遺言書を作成したとします。ところがその相続人が被相続人よりも先に亡くなってしまった場合、遺言書の取り扱いはどうなるのかについてみていきます。
・効力は失われる?
もし被相続人よりも先に相続人が亡くなって、その人が相続する旨の書かれた遺言書があった場合、亡くなった人の部分の効力は失われます。では亡くなった人が本来引き継ぐべきだった遺産はどうなるのか、これはその他の法定相続人に帰属するということになります。これは、従来通り、遺産分割協議でだれがどの財産を引き継ぐかを決めていく形になります。
・代襲相続の活用は?
相続の方法の一つに代襲相続があります。これは相続の発生する前に相続人が亡くなっているなど、相続権を失った場合、その人の子どもや孫が相続人になるということです。これを活用すれば、亡くなった人の子どもや孫が相続できるのではと思うかもしれません。
しかし、遺言書で相続人が指定されている場合、相続人に関しては代襲相続が使えなくなります。
実際この問題は最高裁の判例にもあります。
この事例では自分の長男に全財産を相続させるという内容の遺言書でした。ところが長男は被相続人が亡くなる前に死亡してしまいました。この長男には子どもがいたので、代襲相続ができるのではないかと裁判が行われました。
しかし結果的には遺言書に代襲相続に関する文言がなければ、代襲相続は認められないというものでした。
そこで出てきたのが予備的遺言の活用です。
❏予備的遺言とは?
万が一、希望する相続人が自分よりも先に亡くなった場合、さらにその先を指定する方法を予備的遺言と言います。ここでは予備的遺言の作成方法についてみていきます。
・基本的な書き方
予備的遺言書の書き方ですが、
例えば、財産を妻に相続してほしい、もし妻が亡くなったとき、子どもに相続させる場合には
第1条 遺言者は全財産を妻「氏名」(生年月日)に相続させる。 第2条 遺言者が死亡する前に妻「氏名」が死亡したときには長男「氏名」(生年月日)に財産を相続させる。 |
というように記載すればいいでしょう。
・不動産を相続させる場合
もし不動産を相続させる場合には、不動産に関する情報を記載します。
「相続させる」の後に物件に関する情報を記載します。
まず土地「所在・地番・地目・地積」、次に建物「所在・家屋番号・酒類・構造・床面積」の順番に記載してください。
そのあとに、相続人が死亡した場合には誰に相続させると記載します。
この時、不動産に関する情報をまた記載する必要はありません。
「前条記載の財産」と記載すれば問題ありません。
・預貯金を相続させる場合
預貯金を相続させる遺言書を作成するのであれば、相続人に関する情報と「下記の預貯金及び利息金を相続させる」とまず明記して置きます。
その上で金融機関の名前と支店名、口座の種類、口座番号を記載します。中には複数の金融機関に預金口座を開設している人も多いでしょう。
預貯金をすべて特定の人に相続させたいと思っているのであれば、すべての情報を記載する必要があります。不動産のときと同じく、相続人が先に死亡した場合さらに相続先を指定する場合でも「前条の預貯金及び利息を相続させる」と略してしまって構いません。
❏まとめ
高齢化社会になりつつある日本では、90歳や100歳まで元気に生きることも十分考えられます。
子どももそれなりの年齢になるので、子どもに先立たれることも十分想定できます。「この人にどうしても相続させたい」と思うのであれば、その人が先に死んでしまうことも想定して予備的遺言書を作成しましょう。
遺言書はルールにのっとっていないと、その効力を失ってしまう場合もあります。自分の思っている人に確実に財産が渡るようにしたければ、行政書士や弁護士など専門家にアドバイスを受けながら遺言書を作成するのが確実です。
遺言書の作成でお悩みの方は、事例豊富な「ソレイユ相続相談室」へご相談ください。