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自筆証書遺言のよくある間違いと文例 不備のない遺言作成のための注意点

2023/09/29
自筆証書遺言のよくある間違いと文例 不備のない遺言作成のための注意点
自筆証書遺言は、遺言者がいつでも然程コストをかけずに作成できる反面、亡くなった後に遺言者の意思どおりにいかなくなるケースも多くあります。不備のない遺言作成のために間違えやすい例や文例・注意点をまとめました。

遺言を作成しようとする方それぞれに様々な事情がある中、見よう見まねで遺言を作成すると、本来の意思とかけ離れた遺言書ができてしまうケースも少なくありません。
そこでこの記事では、あえて遺言の失敗文例や注意点を紹介することで、どのような問題が生じうるのか具体的にイメージしてもらい、実際に遺言を作成する際の参考にしていただきたいと思います。

 

1  自筆証書遺言の形式面の注意点

遺言書には、大きく分けると3つの種類があります。公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言です。

 公正証書遺言は、公証役場において、公証人関与のもと作成をするものです。一方で自筆証書遺言は、自分一人で作成をすることができるものです。

秘密証書遺言というのは公正証書遺言と自筆証書遺言の折衷的なものですが、実務においてはあまり使われないため、この記事では特に扱いません。

 公正証書遺言では、公証人が中身を確認して、しっかりとした遺言書を作成してくれるため、問題となることはあまりありません。

 しかし、素人がプロの目を通さずに自分でつくる自筆証書遺言の場合には、後の相続で問題となってしまうことも少なくありません。

 そのようなことを防ぐためにも、まずは遺言書が効力を持つための、形式的な注意点から説明していきたいと思います。

 

 よくある間違い①

 ×自筆証書遺言なのにワープロやパソコンで遺言を作成した

 自筆証書遺言が有効なものとして扱われるためには、その名のとおり自筆により作成する必要があります。

ただし、民法の改正により、相続財産の目録については、パソコンで打ち出したものも可能となりました。

 

よくある間違い②

 × 日付を入れ忘れた

 ×署名をし忘れた

 ×捺印をし忘れた

 

日付や署名、押印のない遺言書は無効となってしまいます。

 せっかく遺言の内容を悩んで考えたとしても、これらの形式的な事項に漏れがあれば、遺言を作成してないも同然となってしまうのです。

 2020年7月10日から始まった法務局で自筆証書遺言を保管する制度を利用すると、先ほどの形式的な要件についてはて、自分以外の第三者に確認してもらうことができます。

 さらに、自筆証書遺言の場合必ずしなければならなかった家庭裁判所での検認という手続が不要になることや、相続人等に遺言書が法務局に保管されていることを通知してもらうこともできるメリットがあります。

 

ただ、この制度を利用すれば遺言の失敗は起こらないのかというと、そういうわけではありません。

次の項で説明していきたいと思います。

 

 2  自筆証書遺言のよくある間違い・文例

自筆証書遺言の保管制度によって、遺言書の形式的な要件(自筆であることや日付、署名、印鑑の有無等)については確認してもらえることは既に説明したとおりです。

一方で、遺言書の内容についての確認や助言はしてもらえないことには注意が必要です。

 遺言書の形式は整っていて遺言自体は有効であるものの、内容や表現が不正確な場合や少し配慮が足りないといった場合に、いざ将来の遺言執行の場面で、問題となることがあるのです。

 以下、自筆証書遺言の文言によって、擬義が生じてしまったり問題となってしまったりしたケースについて、紹介していきたいと思います。

 

 よくある間違い③

 ×遺言の訂正方法が間違っていた

 自筆証書遺言の訂正方法は民法に定められており、「変更した旨を付記して署名する」ことが求められています。

 たとえば、書き漏らしがあって加筆する場合には、文字を挿入した後に、「◯字加筆」と記載した上で、訂正箇所に遺言者の氏名を署名する必要があります。

 ただし、正しく訂正するのは難しいので、面倒でも最初から書き直すことをおすすめします。

 

よくある間違い④

 × 口座番号まで書いた普通預金を解約してしまった

 遺言には、遺言を書いた時点で持っていた預金の銀行名・支店名・普通預金の口座番号まで書いてあったとします。

 その銀行の口座は、引っ越しなどで解約して、他の銀行の口座に預金を移したのに、遺言を書き変えずにそのまましてあった...というような場合です。

 このような場合には、解約した銀行の預金は遺言どおりには相続されないことになります。

銀行が変わっても遺言が有効になる書き方の工夫が必要になります。

 

 よくある間違い⑤

 × 総合口座等の定期預金の記載を忘れてしまった

 遺言に次のように記載したとします。

  【文例】

私名義の下記口座については、長男・川崎一郎へ相続させる。

○○銀行○○支店 普通預金 1234567

 

上記のように、金融機関と口座を指定しているような場合は、普通預金の通帳と定期預金の通帳が一つになっている総合口座のような通帳を持っているときは要注意です。

 普通預金の口座だけ遺言に記載して、それぞれ別の番号がついている定期預金を書き忘れると、定期預金は遺産分割協議の対象になってしまいます

 

 よくある間違い⑥

 ×不動産の所在地を郵便が届く住所で書いてしまった

 次のように記載した文言についてはどうなるのでしょうか。

 

【文例】

私が所有する神奈川県横浜市青葉区1丁目○番○号(1-〇-〇)の自宅を、長男・川崎一郎へ相続させる。

 

この「1丁目○番○号」は住居表示といい、登記所(法務局)で定められてる地番(例:〇〇町〇〇番地〇)とは異なります。

 そもそも、住居表示は、自宅の敷地内に違う地番の土地が複数ある場合に、郵便の配達や緊急時に救急車などの緊急車両の到着が遅れてしまうなどの支障が出ているため、法律により市町村が定めています。

 住所=地番となっている土地もありますが、そうではない場合も多いため、遺言で不動産を特定する場合は、住居表示ではなく、登記事項証明書(不動産登記簿)に書かれたとおりの地番や家屋番号を記載することになります。

 

 よくある間違い⑦

 × 自宅を相続させたい場合に建物を記載しなかった

 それでは、遺言で建物を誰かに相続させたい場合はどうでしょうか。

 

【文例】

私が所有している神奈川県横浜市青葉区1丁目○番○の土地は長男・川崎一郎に、神奈川県横浜市青葉区2丁目○番地○の土地は二男・川崎二郎に、それぞれ相続させる。

 

土地については地番を記載して特定していますね。

しかし、これだけでは土地の上に立っている自宅などの建物まで一緒に相続させることはできません。

 土地と建物は別の不動産なので、遺言で相続させたい不動産の所在地に土地と建物がある場合にはそれぞれ書く必要があります。

 さらに、建物の場合には「未登記」で法務局に登記されていない建物があることも珍しくありません。

これらも書いておく必要があります。

 

 よくある間違い⑧

× 不動産の一部に記載漏れがあった

 

【文例】

第1条 私名義の目録記載の不動産については、長男・川崎一郎へ相続させる。

第2条 私名義の別紙目録記載の口座については、二男・川崎二郎へ相続させる。

第3条 本遺言書に記載なき財産については、二男・川崎二郎へ相続させる。

 

この文言では、財産目録に記載してあるとおりに相続することになります。

 しかし、その不動産の目録に遺言者が所有する不動産が漏れているような場合は、二男が相続することになります。

 よくある記載漏れの例として、「私道」があげられます。

長男に相続させたい不動産を利用するために必要な私道の記載が漏れていれば、その私道は二男の所有になってしまいます。

 第3条にあるとおり、二男が相続する「本遺言書に記載なき財産」に入ってしまうのです。

不動産を含む遺言を作成する場合には、漏れのないよう法務局等で公図調査を行う必要があります。

 また、マンションを所有している場合も記載漏れをしやすいので注意が必要です。

 具体的には、マンションの付属建物やマンションの管理棟・集会所を所有していた場合です。

マンションの本体建物は部屋番号も含めて遺言に書いてあるけれど、そのマンションの共用施設(自転車置き場や物置)等の記載がなければ、上記の文例のケースでは二男が書いて相続することになります。

 

 よくある間違い⑨

× 不動産を共有で相続させたい場合に持分割合を記載していない

  【文例】

私名義の自宅(神奈川県横浜市青葉区1丁目○番○の土地および、神奈川県横浜市青葉区1丁目○番地○の建物)については、長男・川崎一郎と二男・川崎二郎へ相続させる。

 不動産は二人で相続することも可能ですが、共有で登記することになるので、それぞれがどのような割合で相続するのか決めておく必要があります。

全くの無効にはならない可能性がありますが、割合を示しておいた方が良いです。

 

 よくある間違い⑩

× 相続人に「遺贈する」と書いてある

 

【文例】

私名義の自宅(神奈川県横浜市青葉区1丁目○番○の土地および、神奈川県横浜市青葉区1丁目○番地○の建物)については、長男・川崎一郎へ遺贈する。

 「相続させる」と「遺贈する」は似ているようで大きな違いがあります。

 相続させる」は、相続人に対してしか使えませんが、「遺贈する」は相続人以外に財産を渡したい場合に用いられ、相続人に対しても使えます

 しかし、遺言で相続人に対して「遺贈」と記載すると、一番大きな違いは不動産を登記する場面で表れます

通常、相続人は相続を登記原因とした「相続登記」を行います。遺贈を登記原因とする「遺贈登記」は、相続人の名義にする場合でも相続人全員の印鑑(実印)が必要になる等、面倒なことになってしまいます。

 「相続させる」「遺贈する」の違いを理解した上で、誰に財産を引き継がせたい(あげたい)のかによって使い分けましょう。

 

 よくある間違い⑪

× 財産を「任せたい」「託したい」「管理してもらいたい」と曖昧な文言になっている

 【文例】

私名義の自宅(神奈川県横浜市青葉区1丁目○番○の土地および、神奈川県横浜市青葉区1丁目○番地○の建物)と貸家(神奈川県横浜市青葉区2丁目○番○の土地および、神奈川県横浜市青葉区2丁目○番地○の建物)は長男・川崎一郎へ任せる。

 

「任せる」というのは、何かを相続させるときに使える言葉ではなく、抽象的なので殆ど効力がないとされています。

遺言者が、不動産(財産)を誰の名義(所有)にしたいのか明確ではないと、金融機関での名義変更の場面や登記の場面でも相続登記も遺贈登記もできません。

 「任せる」同様にあいまいな表現には「管理させる」や「託す」があります。

「相続させる」か「遺贈する」と正しく表現しましょう。

 

 よくある間違い⑫

× 配分する財産の範囲が不明確だった

 

【文例】

遺言者の有する預貯金を長男・川崎一郎に、その余の財産を二男・川崎二郎に相続させる。

 

例えば、遺言者が取引している銀行には、普通預金・定期預金・投資信託の取引があり、自宅を所有していたとします。

 上記の文例を見ると、遺言者の財産の中に、投資信託があった場合、誰に配分する意図なのか不明確です。

 仮に、遺言者が「長男にはお金を、二男には不動産を」と思っていたとしても、この遺言の場合、投資信託は二男へ配分されると解釈される可能性が高いです。

株式や投資信託などの有価証券も含めるという意図であれば、それを表す文言にした方がよいのです。

 

 よくある間違い⑬

 × 遺言に記載していない財産をどうするか書いていない

 

遺言書に記載されていない財産について一切触れられていない場合には、触れられていない財産について相続人の間で遺産分割協議をしなければなりません

 遺言書には、「本遺言書に記載なき財産については〇〇へ相続させる。」のように、包括的に漏れなく指定しておくことが争いを防ぐ方法です。

 

 よくある間違い⑭

 × 遺言執行者を指定しなかった

 

相続人以外へ財産を取得させるときには、「遺贈」という文言を使います。

 よくある間違い」で触れたとおり、「遺贈」の場合には、不動産の名義変更の際に、相続人全員の協力が必要となってしまいます。

相続人全員が協力してくれれば問題はないのでしょうが、例えば愛人へ全財産を遺贈した場合にはそれが難しいことは容易に想像できます。

 遺言執行者を遺言書の中で指定しておくことで争いを避けられることもあります。

 遺言執行者を指定せずに争いが起こってしまうと、家庭裁判所へ遺言執行者の選任申立てをすることになります。

 

 よくある間違い⑮

 ×換金や分割がしづらい財産を換金させる

 

【文例】

遺言者が有するすべての不動産を遺言執行者にて換金させ、知人・相模原太郎へ10分の9、NPO法人Yへ10分1の割合で遺贈する。

 

不動産がなかなか換金できないことで遺言の執行が滞ることや、分割が困難になることもあります。

換金や分割が難しい財産は、財産ごとに受取人を定めるなどの工夫が必要になります。

 さらに不動産を売却した時の税金の負担も考えて作らないと、税務署とのトラブルを抱えてしまうことにもなりかねません

 

 よくある間違い⑯

 × 予備(補充)的な遺言がされていない

 

長男に財産を渡したくない父親の遺言の例です。

 【文例】

遺私の全財産は、妻・川崎花子と二男・川崎二郎へ2分の1の割合で相続させる。

 

妻と二男だけに相続させる旨が記載されていますが、もし万が一妻か二男が先に亡くなってしまうと、その部分は法定相続となり、長男を含めて遺産分割をしなければいけなくなります

 上記の場合には、妻が先に亡くなっていたとすれば、長男と二男で遺産分割協議を行わなければなりません。

 このような状況を防ぐためにも、遺言者より先に財産を取得させる予定の相続人が死亡した場合に備えて、予備的な遺言をすることが大切です。

また、遺言執行者を指定する場合についても、予備的に指定しておくことをおすすめします。

 

 よくある間違い⑰

 × 遺言執行者に同世代の友人を指定している

 【文例】

遺言者は、本遺言の遺言執行者に知人・相模原太郎を指定する。

 

遺言の執行をお願いする方は自由に選べますが、安易に同世代の友人等を指定することはおすすめできません。

 上記の文例からは、知人が遺言者と同年代かは不明ですが、もし遺言者と同年代の友人であれば、遺言者が死亡する時には友人も死亡していたり、高齢になって遺言の執行が困難になっている可能性もあります

 同様の問題は、専門家に依頼する場合にも起こります。専門家なら法人を遺言執行者に指定することを検討した方がよいでしょう。

 

3 まとめ

遺言は、工夫次第で自分の死後に生前の意思を反映させることができます。

その一方で、文言が不十分であったり、少し配慮が足りなかったりするだけで、遺言者の意思とかけ離れた相続となってしまいます。

 そのような事態を防ぐためには、遺言の作成にあたってあらゆる状況への想像力を働かせることが重要となります。

そのためにも、自筆証書遺言を一人で作成せず、必ず専門家に相談して様々なケースを想定しておくことが大切です。

ぜひ、お近くのソレイユ相続無料相談会にご予約ください。

 

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