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知的障がいの子を抱える家庭で「家族信託」を活用するメリットとは?

2023/09/29
知的障がいの子を抱える家庭で「家族信託」を活用するメリットとは?
知的障がいを持つお子様がいる家庭では、ご家族で生活のサポートをされていることが多いでしょう。また将来のお子様のサポートについて、どんな支援を誰に頼むことができるのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。この記事では、そのようなお悩みを解決にみちびく方法を提案しています。

1  家族信託による子どもの生活を支援する仕組み

知的障がいを持つお子様がいる家庭では、ご家族で生活のサポートをされていることが多いでしょう。また将来のお子様のサポートについてご両親が動けなくなったら、どんな支援を誰に頼むことができるのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。将来の子どもの生活をサポートする手段の一つとして「家族信託」の活用方法を紹介します。

例をあげて見ていきましょう。

現在、障がいをもつ子どもの生活に必要なお金の管理(生活費・医療介護費・住居)はご両親で(家族で)行っています。

 

今のやり方のサポートを「家族信託」の仕組みで行うことができます。

説明イラスト動画をご覧になれます。→コチラ

父は障がいがある次男のためにお金や住居などの財産を家族信託します。

まず、委託者(父)は受託者(母)に父の財産を預けます。

財産を預かった母は、父(受益者)とその次男(扶養家族)のために財産を使います。

父が亡くなったあとは、次男を受益者として受託者から必要なサポートを受けられる仕組みです。母が亡くなったあとは、長男が受託者を引継ぐ設定にしておくことで次男の支援が行えます。

親が子どもの面倒を見ている状態から、家族信託で子どもの面倒をみる状態に変わります。現実には親が子どもの面倒をみていることに変わりはありませんが、今まで親がしてきた障がいを持った子どもの面倒を見る仕組みを、家族信託という新たな枠組みの中で行うことができるのです。

次に、親がやっていることを、わざわざ家族信託の仕組みを活用するメリットはどこにあるのか、見ていきましょう。

 

  家族信託を活用するメリット

2-1 忘れてはいけない親の認知症対策

子どもの将来の生活に関する心配は、親が亡くなったあとのことだけではありません。例えば、親自身が認知症になったり、施設に入居するとなった時に、子どものサポートの体制はどうしたらよいのでしょうか。親が認知症になってしまうと、いわゆる「口座凍結」状態がおこり、預金引出しが銀行にストップされます。もちろん、預金だけではなく株の換金も不動産管理・処分もできません。

これでは、お子様への生活費の引出しができずなくなってしまいます。

しかし、家族信託契約があれば口座凍結状態とはなりません。家族信託によって、預金や財産を委託しておくことで、預けた本人(委託者)が認知症になっても、預かった人(受託者)が健在なら預金も下ろせるし財産処分が行えます。つまり障がいをもつ子どものために父の財産が使われるので、今まで通りの支援を受けて生活することができます。

 

2-2 家族信託の仕組みは次の代に承継できる

障がいを持った子どもが生涯暮らしていける「家族信託」という財産管理の仕組みは、次の世代に承継できます。家族信託契約にすると、同じ運営方法をしていても、親は客観的な管理者(受託者)の立場となって仕組みを運営していくことになります。

「家族信託」では、最後に親が管理できなくなったら、その仕組みを次の管理者(受託者)に譲ることができる仕組みにしておくこともできます。そうしておけば、次の管理者(受託者)に引き継ぐ時間もとれるし、生きている限り見届けることも可能です。

上記の例でいえば、障がいを持つ次男のサポートを家族信託の設計で、父の財産を母に預けて、母が亡くなったら長男に預けて……というようにご両親が亡くなった後まで、管理運営を繋げられるオーダーメイドの契約が叶います。

 

2-3 相続手続きの手間を削減できる

家族信託の特徴に、信託財産については相続手続きが生前に終わってしまう事があげられます。

家族信託契約を結び、父の財産を信託財産として他の家族の名義に変更してあれば、生前に相続手続きを済ませたと同じことになります。相続時には、遺産分割協議書は不要となり信託契約書に書いてある通りに財産が分けられます。

もし、家族信託契約がなかった場合は、手続きが煩雑になることがあります。

というのも、父の財産を相続するには、遺産分割協議を相続人全員で行って遺産分割協議書に相続人全員が自署押印して、印鑑証明を添付する手続きが必要だからです。

相続人の一人が障がい者で意思能力が不十分である場合は、遺産分割協議の時点で、成年後見人の選任が必要となります。家庭裁判所に後見人の選任の申立の手続きを行いますが、時間がかかるうえに、成年後見人は家族がなれるとも限りません。

成年後見人が就くと、障がいを持った子どもの財産管理は、その子どもが亡くなるまで将来にわたって後見人にゆだねられます。

親が生前やっていた方法が必ずしも継続されるわけではなく、後見人(家庭裁判所)の判断で行われることになります。

また、後見人に専門家が入ると、月々の報酬が必要となり、長い年月で大きなコストが必要になってしまいます。

家族信託契約があれば、信託財産については、家庭裁判所の管理下ではなく、信託契約の管理下で障がいを持った子どものために使われていきます。

■相続コーディネーターからのアドバイス

「遺言」があれば遺産分割協議書を不要にすることもできますが、障がいを持ったこどもどもが、相続財産の受け入れ手続きや財産管理ができないと、成年後見人が必要となる点に注意が必要です。

関連記事:困らない認知症・相続対策! 家族信託と任意後見制度の違いを比較

 

 

2-4 財産の承継先を指定できる遺言機能

障がいを持った子どものために財産を残し、将来その子どもが亡くなった後の財産の最終的な行き先を指定しておくことが、家族信託契約では可能です。

例えば、父の希望する財産承継の順番が、父障がいを持った子ども兄弟or兄弟の子or施設だとしても、遺言ではこの順番を指定できません。遺言で父の意思が伝えられるのは、障がいを持った子どもに財産を相続させるという所までです。

家族信託を使えば、遺言書では描けないような仕組みを実現できます。世代を超えた財産の承継先も、最後に残った財産の帰属先も契約時に決めることができます。

 

  生前贈与として名義預金を作ることは要注意

障がいを持つ子どものために、少しでも多くのお金を残してあげたいと親であれば当然考えることでしょう。

定期預金の名義を解約して子ども名義に変更したり、贈与税の非課税範囲で年間110万円の贈与をくりかえしたり、子ども名義の預金が相当量になって相談に来られる方も珍しくありません。

しかし、この方法はあまりお勧めしません。子どもに判断能力がなければ、その預金を子どもが使うことができないだけなく、親が子どものためにその預金を使おうと考えた時に、その預金は子どもの名義となっているため、親は引き出すことができません。また、子どもが引き出しに行って判断能力が無いことがわかると、成年後見人をつけないと引き出しができなくなってしまいます。

子どものためにお金を積んでいくのであれば、家族信託契約で、信託財産を追加で入れられる契約にしておいて、入金していくのが一番安全です。

■相続コーディネーターからのアドバイス

名義預金は親の相続財産とみなされる可能性があり、一時に大きなお金を動かすと贈与税の課税の可能性も出てきます。そこで、生前贈与をするのであれば、「特定贈与信託」がおすすめです。これは、家族信託とは別の制度ですが、普通障がい者の方には3,000万円、特別障がい者の方には6,000万円まで、生前贈与がなされたとしても、もらった方には贈与税がかかりません。さらに、相続税で生前贈与として加算される心配もありません。特定贈与信託は家族信託と組み合わせて、障がいをお持ちの子どものために使うことをおすすめします。

関連記事:孫の名義の口座で貯めたお金。「名義預金」で相続税がかかるって本当ですか?

 

  まとめ

私どもの相談室でも、障がいを持つお子様の将来を心配されるご家族からの相談が増えています。本記事では、財産管理を頼むことができる家族や親族、信頼できる友人や知人がいらっしゃる場合に有効な家族信託のメリットについてご紹介しました。

この「家族信託」は、障害を持つ子どもの将来の生活をサポートし、さらに親の認知症対策や遺言の機能も備える「家族のための契約」です。信託契約の内容は、委託者(両親)と受託者(信頼できる親族)間の話し合いによってオーダーメイドに決められます。

両親がお元気なうちに、将来に向けて相談をはじめることをお勧めします。

ただし、同時に税務リスクの対策をしておかないと思わぬ税金トラブルになる可能性もあります。家族信託の仕組みや税金について相続の専門家やコーディネーターがいる無料相続相談会をご利用ください。

ソレイユ相続相談室では、相続対策や家族信託等、各種相談に対する無料相談会を開催しています。

 

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