相続税・相続相談を受ける場合のポイントを「相続税対策」「遺言」「家族信託」「相続手続き」「相続税申告」の相談内容ごとに紹介しています。 相談時間には、限りがあるため、効率よく相談するために事前に必要な情報などについて解説しています。
相続税対策の相談を受ける場合のポイント
相続税対策の対策方法は次の3つと言われています。
1. 節税対策
2. 納税資金対策
3. 争族対策
詳しくは 相続税対策の基本 をご覧ください。
➊誰の財産についての相談か ご自身の財産か、親族、友人の財産なのかなど。不動産がある場合は所有持分が分かるとよいです。 また、例えば、ご夫婦と子供が家族構成の場合で、夫婦の一次相続、二次相続を考える必要があれば、その旨を相談員にお伝えください。
➋推定相続人は誰か
➊の例で、ご夫婦のうち、夫が先に亡くなった場合は妻と子供が相続人になります。妻が先に亡 くなると夫と子供が相続人になります。二次相続を考える場合は、先に夫が亡くなった場合は、一 次相続の相続人は、妻と子供、二次相続で妻が亡くなった場合の相続人は子供のみが相続人となります。 現段階で対象の方が亡くなった場合の相続人は誰か?を相談員にお伝えください。
➌どんな財産がいくらあるか 例えば、預貯金、株式、不動産(自宅のみ、賃貸用)などが一般的に相続財産となりますが、「相続税」と言うと、生命保険の死亡保険金などの「みなし相続財産」も相続税の計算に入れなければなりません。 どんな財産があるのか、また、それが現段階でいくらくらいの評価になるのか、相談員はそれを基に相続税対策を考えるため、必要な情報となります。 不動産に関しては、ご自身でいくらくらいか分からない場合も多いため、相談の際に
➍の情報があれば相談員が概算で計算することが可能です。
➍不動産がある場合は、所在や地積などの情報 例えば、自宅が一戸建てとマンションの場合は、ご用意いただく資料が変わってきます。 一戸建ての場合は、固定資産税の課税明細書があれば、概算で評価額を出すことが可能です が、マンションのように区分所有になっている場合は、「敷地権の割合」が分かるとより正確な評価額として計算することができます。「敷地権の割合」は、法務局で取得できる登記事項証明書に記載されていますが、権利証(登記識別情報)にも記載されているので、メモしておき、相談員お伝えください。 実は、相続税対策の相談で意外と多いのが、相続税がかからない場合でも「相続税対策」が必要と考えている方がいらっしゃいます。 多くの方がご存じのとおり、相続税は、相続発生時に亡くなった方の財産が「基礎控除」を超えた場合に課税される税金です。 基礎控除額を超えなければ、そもそも相続税はかからないため、節税の心配をする必要はありません。 ただし、別の家族などが財産を持っている場合など、もしもその人が先に亡くなってしまったり、次の相続が発生した場合に備えて相続税対策を講じる必要があるケースもあります。 相続対策の相談を受ける場合には、最低でも ➊~➍ については相談員に伝えらえるように、事前準備しておくとよいでしょう。
遺言は、「相続人が1人」というケース以外は、書いておく方が望ましいと言えます。それが世の中にも浸透してきたためか、「遺言はかいておきたい」とご相談を希望される方がかなり増えている反面、「どのように遺言を書けばよいのか分からない」という方が非常に多くいらっしゃいます。
言の相談を受ける前に、次のことを事前にお知らせいただくと、効率の良い相談ができます。
➊自分の財産を把握しているか
例えば、預貯金、株式がいくらくらい、不動産(自宅のみ、賃貸用)の評価は大体どのくらいなど分かっていると、遺産の分け方を考える際にスムーズです。 また、財産状況により相続税対策が必要かどうかも相談時にアドバイスがもらえるので、相談員にお伝えください。
➋自分が亡くなった場合の相続人(推定相続人)は誰になるのか
現段階で遺言を書く人の相続人が誰になるのか把握しておく必要があります。 相談時に戸籍までは必要ありませんが、実際に相続開始後には、亡くなった方の相続人調査をしなければなりません。特に相続人が兄弟姉妹のみで人数が多いような場合は、遺言書を作成する時に一緒に戸籍を取得しておくと、実際の相続手続き(遺言執行)もスムーズです。 ※生前に戸籍を取得する場合は、推定相続人となる人から取得してもらいづらいため、専門家による相続人調査となるケースが多いです。
➌自分の財産を誰に何をどのくらい残したいのか
現段階で、自分の財産を誰にどの財産を残したのか、大まかな希望があればご相談時にお伝えください。どこかに寄付をしたいという希望があればその旨もご相談ください。
他、地方に不動産がある場合など、相続でもらったとしても維持管理でもらった人に負担がかかる財産については、その残し方を考えていく必要があります。 また、ご相談時には、ご家族の状況(関係性)についても知っておくと、相談時に適切なアドバイスがもらえます。
例として、自分の子供は仲が良くても、子供に配偶者がいる場合に、その関係性で実際に相続後に紛争になってしまうこともあります。
それぞれの立場で「不平等」と考えてしまうため、それが争いの大きな原因とも言えます。
何故この内容にしたのか遺言の中で明確にしながらも、家族への配慮は欠かせません。
ご相談の際には、上記の ➊~➌ を踏まえてご相談をいただくと、より適切なアドバイスが受けられます。
高齢化社会を背景に、親や配偶者が認知症で判断能力がなくなり預貯金の引き出しや売買などができなくなることで資産が凍結される問題が増えています。
判断能力がなくなった後は、成年後見制度を利用するしか方法がありませんが、認知症対策として家族信託を有効活用することで家族間で財産管理ができるとともに、財産を持つ人が亡くなった場合に財産の帰属(承継)先も決めておける遺言に類似した機能もあるため非常にニーズが高まっています。 家族信託の相談をする際には、次のことを考えておくと、よりよい相談が可能です。
➊誰の財産を誰に預けるのか、誰のために使うのか 家族信託では、 財産を家族に託す(預ける)人を委託者、託される(預かる)人を受託者、託された財産から利益を受ける(お金を受け取ったり、自宅に住む)人を受益者と言いますが、家族信託を始める際にはこの三者(上記の認知症対策として家族信託をする場合は、委託者と受益者が同じ人になるケースが多い)の存在が必要不可欠です。 家族信託をやってみたいと思ったら、誰の財産を誰が預かって、誰のために使うのかを考えてみましょう。
➋信託に協力できる家族や他の親族がいるか 家族信託は、 ➊ の例にもあるとおり、委託者が亡くなった後も受託者が長年引き続き管理をしていくケースがあります。 このような場合に、受託者が1人のみだと病気や万が一先に亡くなってしまった場合に、信託が続けられなくなる可能性があります。こういったリスクを考えると最初の受託者が信託を管理できなくなった場合に備えて、次の受託者を準備しておくと安心できます。 受託者に兄弟姉妹がいるのであれば、家族で協力して委託者の希望が実現するように家族信託の内容を考えると、最終的に揉めごとを防ぐことにもつながります。
例 1:父(高齢)が相談者の場合
自分の賃貸不動産を長男に託し(預け)て管理してもらい、判断能力がなくなっても家賃収入で施設費用を賄えるようにしたい。 妻もいるため、自分の死後は妻が亡くなるまで引き続き家賃収入で暮らしてほしい。
例 2:障がい者の妹がいる姉が相談者の場合
母が長女(姉)に金銭と不動産を託し(預けて)管理してもらい、母が亡くなるまでは母の生活費、母が亡くなった後は、次女(妹)が亡くなるまで信託した財産で面倒を見てもらう。 途中で金銭が足りなくなったら、不動産を売却して施設費用に充ててもらう。
➌信託に入れる財産と入れない財産(相続財産となる)の区分 家族信託は、 ➊ に登場する委託者と受託者との間で信託契約を結ぶことで有効に成立します。 この契約内容に沿って不動産や金銭を信託財産にすると、委託者が亡くなった際に、信託に入れなかった財産は「相続財産」となります。
相続財産ということは、遺言がなければ相続人が遺産分割協議で誰が(信託財産以外の)どの財産を相続するのか決めなければなりません。
逆に、信託財産に入れた財産については、➊ の例1でいうと、信託契約で委託者の父が亡くなっても妻が受益者になるため、引き続き妻が亡くなるまで妻のために使われることになります。
家族信託の相談を受ける場合は、信託に入れた財産と入れない財産が区別されることを念頭に置いておくと、ご自身のケースではどんな方向で考えればよいかなど、相談員からのアドバイスも理解しやすくなります。
➍信託を終わらせるタイミング 家族信託を始めたいと考えた時に、必ず「信託の終了」についても考えることになります。 家族信託は、父→母→子→孫のように長い期間継続させることが可能な仕組みです。 ただ、何十年と先のことまでは、なかなか予想しづらいことも事実としてありますので、多くは最初の受益者が亡くなる、次の受益者が亡くなるといったタイミングで終了とする内容になっていると言えます。
ご相談の際には、上記の ➊~➍ を踏まえてご相談をいただくと、より適切なアドバイスが受けられます。
亡くなった人の葬儀が終わると、各種届出等の手続きをすることになりますが、ここでいう「相続手続き」、被相続人が遺産を持っていた場合の「遺産相続手続き」いわゆる財産の名義変更等についての手続きを指します。
例えば、自宅の名義が被相続人の名義だった場合、相続する人に名義を変える登記手続きが必要となります。しかし、遺言がない場合などで、相続人間の話し合いがなかなかまとまらなければ、相続を終わらせるまでに場合によっては何年もかかるケースもあります。
また、相続手続きは様々な書類を入手しなければならないため、どこから手を付けてよいのか分からないと相続相談のご利用を考える方も非常に多くいらっしゃいます。
相続手続きの相談を受ける場合には、次のことを整理した上で相談すると適切なアドバイスが受けられます。
➊相続開始日(被相続人が亡くなった日)はいつか
何故相続開始日が必要かというと、相続放棄や相続税申告など、被相続人が亡くなってから○ヵ月以内にしなければならないと、法律で期限が決められている手続きがあるためです。
また、被相続人の相続財産を調べていく過程でも相続開始日が必要になります。
例えば、金融機関で預貯金口座の残高証明書の取得が必要な場合があります。この場合、相続開始日現在の残高について証明してもらいます。
その他、被相続人に不動産があった場合にも、登記の際に必要になりますので、相続開始日を忘れずに伝えましょう。
➋相続人は誰か把握しているか(戸籍で調査したかどうか)
被相続人の財産を相続人等に分配するために遺言が準備されていたり、遺言がなければ相続人が遺産分割協議をすることになります。 遺言があってもなくても、被相続人の相続人が誰なのかを戸籍を集めて確定する作業が必要となるので、事前に把握できていると戸籍を集める際にも役に立ちます。
➌遺言書の有無を確認したかどうか
➋でも触れていますが、遺言がある場合とない場合では、以下のようにその後の手続きが大きく変わってきます。
【遺言あり(自筆証書の場合)】
遺言保管所(法務局)へ保管していた場合
遺言書情報証明書の取得 ➡ 遺言の内容に沿って名義変更や預貯金の解約・払戻をする
遺言保管所へ保管していない場合
家庭裁判所の検認 ➡ 遺言の内容に沿って名義変更や預貯金の解約・払戻をする
【遺言あり(公正証書の場合)】
遺言の内容に沿って名義変更や預貯金の解約・払戻をする
【遺言なし】
相続人間で遺産分割協議をする ➡ 遺産分割協議書の作成 ➡遺産分割協議書のとおりに名義変更や預貯金の解約・払戻をする
➍被相続人の財産にはどんな財産がどこにあるのか
把握しているか 被相続人が亡くなった日現在の財産(相続)を確定させるために、財産の調査が必要になります。相続財産を確定させたうえで、遺言の執行や遺産分割協議で財産の分配を考えることになります。
もちろん、財産については全く分からないということもありますが、相続手続きの相談時に以下のようなことが分かっていると、次のステップに早く進むことができます。例えば、
・預貯金については、銀行や支店、通帳などがあるか。
・株式については銘柄、上場株かどうか、証券会社からの報告書の有無など。
・不動産については、どこにある不動産なのか、住所地以外に不動産を持っている場合は、固定資産税が課税されている自治体から送られてくる納税通知書があると、財産の調査がしやすいです。
相続税申告の相談する前に、把握しておきたいことは、「相続税申告が必要かどうか」です。そもそも、被相続人の財産が基礎控除を超えないければ相続税がかかりませんので、相続税申告も不要ということになります。
ところが、小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減をすれば、相続税がかからなくなるという場合は、相続税申告が必要になりますが、小規模宅地の特例が適用できるかどうかは判断が難しい場合があるため、税理士に相談した方が申告の要・不要がハッキリします。
上記を踏まえて次に該当するケースであれば、積極的に相続税申告の相談でアドバイスを受けるとよいでしょう。
➊相続財産に不動産がある
相続税は、相続財産(不動産、預貯金、有価証券など)の評価額の合計から、葬式費用や債務を差引いた「課税価格」が、3,000万円+(600万円×相続人の数)を超えなければかかりません。
しかし、例えば、預貯金は口座の残高=評価額となりますが、不動産の場合は増減額の要素によって、その評価は変わってきます。
上記の小規模宅地の特例の適用についても、適用できるかどうかで不動産の相続税評価額が大幅に変わってくるため、状況を相談員にお伝えください。
また、賃貸不動産を所有していた場合、相続開始日から4か月以内に準確定申告をする必要がありますが、還付金があった場合は相続財産に計上することになります。
※遺産分割協議が終わるまでの賃料収入は相続人全員の共有財産として、相続人それぞれが確定申告をすることとなります。
➋相続税をなるべく低く抑えたい
相続財産をどのように分ければ一番税金がかからないのか」は、皆様の関心が高いこととなっています。
税金が安く済む遺産分割は、被相続人と相続人関係で使える特例などの条件により変わりますし、二次相続、三次相続までトータル的に相続税を抑えることがポイントとなります。ただし、節税のために相続人がその後の人生を過ごしづらくなることになっては本末転倒になるので、ご自身やご家族の将来を見据えた上での遺産分割ができるように相談員のアドバイスをもらいましょう。
➌先代の相続の遺産分割協議がまとまっていない
例えば、親(父母)の親(祖父母)の相続について揉めてしまっているため、遺産分割協議が終わっていないのに、今回の親(父母)の相続が起こったような場合は、祖父母の財産の法定相続分は父母の相続財産となります。これを含めると相続税がかかることが見込まれるような場合は、相談員に詳しい状況をお伝えください。
➍遺言で相続財産の寄付が指示されている
遺言で相続財産の一部または全部の寄付が指示されているようなケースでは、寄付先により相続税とは別の税金の課税対象となる場合があります。特に遺言に不動産を寄付するように記載されている場合は寄付される側に余計な税金の負担がかかる可能性もありますので、注意が必要です。
また、ご自身が相続した財産を寄付したい場合も、要件を満たせば寄付した財産について相続税の対象とならない特例があります。特例を活用して社会貢献をしたい方は是非ご相談ください。