相続手続きで使用する「相続同意書」とは?

相続した財産の手続きを進める際、必要になる書類の一つが「相続同意書」です。特に、預貯金の払い戻しや事業の承継、自動車の名義変更など、限定された手続きにおいて相続人全員の同意を示す書類として活用されます。本記事では、相続同意書が必要なケースや遺産分割協議書との違い、記入時の注意点などを解説します。

相続同意書とは?

相続同意書とは、相続人全員が特定の財産の相続方法に同意していることを証明する書類です。相続同意書は個別の財産・権利に関する手続きごとに必要となり、各手続きの窓口に提出するものであるため、手続きの対象となる資産や権利を管理している機関に提出します。

 

具体的な例としては、Aさんが亡くなり、相続人が妻Bさんと子のCさん、Dさんの3人いる場合、Bさんが亡くなったAさんの銀行預金600万円を自分だけで引き出したいときに、Cさん、Dさんの同意が必要となります。このとき、「Aさんの○○銀行の預金はBさんが単独で相続すること」に同意する旨を記した相続同意書に、相続人全員(B、C、D)が署名・押印(実印)したものを銀行に提出します。これにより、Bさんはその銀行口座からお金を引き出せるようになります。

相続同意書が必要な主な手続き

相続同意書はすべての相続手続きに必要というわけではありません。以下のようなケースで求められることが一般的です。

 

① 預貯金の払い戻し

金融機関は相続が発生すると口座を凍結します。払い戻しの際には、相続人全員の同意書類(相続同意書や遺産分割協議書など)の提出が必要です。

 

② 事業に関する許認可の承継

たとえば食品営業許可や風俗営業許可などの許認可は、事業者の死亡によって効力を失うことがあります。これらを相続人が承継する際には、相続同意書と遺産分割協議書の両方を提出するのが一般的です。

 

③ 自動車などの名義変更

自動車検査登録手続業務(運輸支局)では、所有権移転にあたり、他の相続人からの同意書類が必要な場合があります。

相続同意書が不要なケース

以下のいずれかに該当する場合には、相続同意書を提出しなくても手続きを進めることが可能です。

  • 相続人が1人しかいない
  • 法的効力を持つ遺言書が存在する
  • 遺産分割協議書が既に作成されている

特に遺産分割協議書は、相続財産全体をどのように分けるかの合意が明記されているため、通常の手続きではこちらを提出すれば十分です。

遺産分割協議書との違い

相続同意書とよく混同されがちなのが「遺産分割協議書」です。両者の違いは主に用途と対象範囲にあります。

遺産分割協議書

  • 相続財産全体の分配方法を記載
  • 相続税の申告や不動産登記など、ほとんどの相続手続きに必要
  • 相続人全員の署名・実印が必要

相続同意書

  • 特定の財産についての同意を記載
  • 主に預貯金や自動車の名義変更など、個別の手続きで使用
  • 相続人全員の署名・押印(実印)が必要なことが多い

相続同意書の記載例と注意点

相続同意書の内容は以下のように記載します。

 

相続同意書の例文(概要)

「被相続人○○(令和○年○月○日死亡)の遺産のうち、○○銀行○○支店の普通預金(口座番号:●●●)について、相続人○○が単独で相続することに、相続人全員が同意します。」

注意点

  • 相続人全員の署名と実印を押印すること
  • 印鑑証明書の添付が求められる場合がある
  • 不動産の相続登記には使えず、遺産分割協議書が必須

まとめ

相続同意書は、特定の財産について相続人の同意を示すためのシンプルな書類であり、一部の相続手続きでは非常に有効です。ただし、不動産の名義変更や相続税の申告などでは「遺産分割協議書」が必要になるため、ケースに応じて適切な書類を準備することが重要です。相続手続きに不安がある場合や、複数の財産が絡むケースでは、専門家に相談することをおすすめします。

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