遺言がない場合の相続

亡くなった方が遺言を残していない場合や、遺言が見つからない場合、残された家族はどのように相続を進めれば良いのでしょうか?この記事では、遺言がない場合の相続手続きの流れを5つのステップに分けて詳しく解説します。

1. 遺言の有無を確認する

まずは、相続が発生したら遺言が残されていないかを隅々まで探しましょう。遺言には種類があり、それぞれ確認方法が異なります。

公正証書遺言・秘密証書遺言の場合

最寄りの公証役場で遺言検索をしてもらうことができます。この検索は全国の公証役場で可能です。

自筆証書遺言の場合

亡くなった方の自宅や書斎のほか、信頼できる家族や専門家、貸金庫などで保管されている可能性があります。自筆証書遺言は公的な検索システムがないため、一つ一つ探す必要があります。

法務局保管の自筆証書遺言

2020年7月10日から「自筆証書遺言の保管制度」がスタートし、自分で作成した遺言を法務局で保管できるようになりました。法務局に保管されている遺言は、全国の遺言書保管所(法務局の支局等)で確認することができます。※法務局 遺言書保管所一覧

2. 相続人を調査する

遺言がない、または無効であることを確認したら、「相続人の調査」を行います。

戸籍謄本の収集

相続人の調査は、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得して行います。

  • 死亡時の本籍地の戸籍謄本を取得
  • そこから前の戸籍、さらに前の戸籍をたどって出生まで遡る
  • 収集した戸籍謄本から相続人を確定

戸籍謄本は、2020年10月からの広域交付制度により、本籍地以外の市区町村役場でも取得できるようになりました。ただし、処理に時間がかかる場合や、電子化されていない古い戸籍は本籍地での請求が必要なケースもあります。相続に必要な複数の戸籍を効率的に収集するには、この点を考慮して計画しましょう。

相続人調査の重要性

「親戚同士の仲がいいから大丈夫」と思う方もいますが、亡くなった方に隠し子がいる場合など、戸籍上の調査で初めて判明する相続人がいることもあります。すべての法定相続人を確定するために、この調査は欠かせません。

3. 相続財産を調査する

相続人の調査が終わったら、相続財産の調査に移ります。

対象となる財産の範囲

相続の対象となる財産は、思っているよりも多岐にわたります。

  • プラスの財産:不動産、預貯金、有価証券、ゴルフ会員権、自動車、絵画、時計など価値のあるもの
  • マイナスの財産:借金、保証債務など

財産調査の目的

財産調査は、後の遺産分割協議でしっかりと遺産を分けるためだけでなく、相続税申告で正確な相続税を納付するためにも必要な作業です。

4. 遺産分割協議を行う

相続人と相続財産の調査が終わったら、「誰が、何を、どのくらい相続するのか」を決めていきます。

遺産分割協議の進め方

  • 相続人全員で行う必要があります
  • 遠方の方や参加が難しい方は、電話やメールでの参加も可能です
  • 全員が納得するまで協議を続けます

協議がまとまらない場合

もともと仲が悪い場合や、相続人の数が多い場合には、争いに発展しやすくなります。話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てて、家庭裁判所に判断を委ねることもできます。

5. 名義変更などの手続きを行う

遺産分割が決まったら、実際に財産の名義変更などを行います。

遺産分割協議書の作成

各種名義変更や相続税申告をするときは、「遺産分割協議書」の提出が求められることがあります。協議書には相続人全員の署名押印が必要で、協議内容に全員が納得している証拠になります。

手続きの期限

名義変更などの手続きに法律上の期限はありませんが、相続税申告には「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があります(相続税法第27条)。特に相続税の申告が必要なケースでは、早めに準備を進めることが重要です。

まとめ

遺言がない場合の相続手続きは、遺言の確認から始まり、相続人と財産の調査、遺産分割協議、そして実際の名義変更手続きへと進みます。それぞれのステップに時間と労力がかかるため、計画的に進めることが大切です。また、相続税の申告が必要な場合は期限があるため、早めの対応が求められます。相続手続きに不安がある場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。