遺言の「相続させる」と「遺贈する」の使い分け

遺言の「相続させる」と「遺贈する」の使い分け

遺言では、妻や子どもなどの法定相続人だけでなく、友人や団体などの第三者にも財産を残すことができます。そのとき使われるのが「相続させる」「遺贈する」という2つの表現です。

例えば、

  • 「長男にA土地を相続させる
  • 「孫に自動車を遺贈する

というような書き方がされますが、法律上は全く異なる効果になります。

1.対象者による使い分け

  • 相続させる」→ 法定相続人にのみ使用可能
  • 遺贈する」→ 誰に対しても使用可能

民法で定める法定相続人(配偶者・子・親など)に対してはどちらも使えますが、法定相続人以外の人(例:内縁の妻・友人・法人など)には必ず「遺贈する」を使用する必要があります。

なお、法定相続人に財産を残す場合には「相続させる」の表現を使う方が、後述する不動産登記の簡略化などのメリットがあります。

2.名義変更の手続きが異なる

不動産を遺言で譲る場合、以下のような違いがあります。

表現

名義変更の方法

特徴

相続させる 相続人が単独で登記できる 手続きが簡単・迅速
遺贈する(特定遺贈) 原則、遺言執行者が単独で登記可能 ※遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要になることも

よって、不動産を渡す予定がある場合には「相続させる」と書く方が、相続人にとっては手続きが容易です。
ただし、法定相続人以外に不動産を渡す場合には「遺贈」しか選択肢がなくなります。

3.放棄手続きにも違いがある

財産を受け取りたくない場合の放棄方法も異なります:

  • 相続させる」→ 家庭裁判所へ「相続放棄」の申述(3ヶ月以内)
  • 遺贈する(包括遺贈)」→ 同様に家庭裁判所での放棄申述
  • 遺贈する(特定遺贈)」→ 他の相続人に通知するだけで放棄可能

この違いを理解しておくことで、意図しない相続やトラブルを防止することができます。

遺言執行者の指定でスムーズに

「遺贈する」と記載された不動産などの名義変更には、遺言執行者の存在がとても重要です。
遺言執行者が指定されていれば、特定遺贈でも執行者が単独で名義変更を行えるため、手続きを大きく簡略化できます。

まとめ:「表現の違い」が相続の明暗を分けることも

「相続させる」と「遺贈する」の違いは、法的効果・登記手続き・放棄方法などに大きく影響を与えます。
遺言を書く際には、この違いを正しく理解したうえで表現を選ぶことが重要です。

また、どの表現が適切か判断に迷う場合には、相続専門の税理士や法律専門家に相談することをおすすめします。

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