遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の財産について、相続人全員で「誰が、何を、どのくらい相続するか」を話し合いで決める手続きです。この協議で合意が得られたら、結果を明文化した「遺産分割協議書」を作成する必要があります。この書面は不動産や預貯金、株式などの相続手続きを進める上で重要な証明書となります。
1.遺産分割協議書が必要なケース
ケース① 遺言がない場合
被相続人が遺言書を残していない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、その合意内容を記した遺産分割協議書が必要になります。
なお、2019年の民法改正により、自筆証書遺言の保管制度が始まりましたが、書式の不備(署名や日付漏れなど)があると無効になる可能性があるため、遺言書の有効性には十分注意が必要です。無効の場合は協議書が必要になります。
ケース② 家族信託がない場合
家族信託契約をしていない財産については、通常通り相続手続きを進める必要があります。信託財産はあらかじめ受託者に名義が移っているため協議対象外ですが、それ以外の財産については遺産分割協議書が必要です。
ケース③ 指定のない財産がある場合
遺言や信託に含まれていない財産(例:後に取得した不動産、預金口座、有価証券など)がある場合、それらの分割内容を協議し、協議書に記載しなければなりません。
2.遺産分割協議はいつ始めるべきか?
相続開始(被相続人の死亡)後は、できるだけ早く相続人や財産の調査を行い、遺産分割協議に取りかかることが重要です。特に相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)を意識して進める必要があります。
遺産分割協議書が必要な手続き
- 不動産の名義変更(法務局)
- 預貯金の払戻し(金融機関)
- 株式・投資信託の名義変更(証券会社)
- 自動車の名義変更(運輸支局)
これらの手続きには、協議書と共に相続人の戸籍謄本や印鑑証明書が必要となります。
3.協議書作成前の準備
財産の調査
- 不動産:固定資産税評価証明書、登記簿謄本
- 預貯金:銀行への照会、通帳の確認
- 有価証券:証券会社からの通知、郵送物
- その他:車両、保険契約、借入金 など
調査結果をまとめた「財産目録」を作成し、相続人全員で内容を共有することが重要です。
4.遺産分割協議書の書き方
書式と記載例(抜粋)
- 妻〇〇が相続する:東京都〇〇区〇〇 所在の土地・建物
- 長男〇〇が相続する:〇〇証券会社 〇〇株式会社 株式1000株
- 次男〇〇が相続する:〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇
書式上の注意点
- 協議書本文はパソコンで作成可能
- 署名は各相続人が自署で記入し、実印で押印
- 印鑑証明書を添付する(通常3か月以内のもの)
- 法務上、様式の定めはありませんが、登記や金融機関の手続きに耐えうる正確な記載が求められます
5.協議書作成時の注意点(法務・税務)
法務上の注意点
- 相続人全員の合意が必要(1人でも欠けると無効)
- 海外在住の相続人がいる場合、在外公館の署名証明等が必要
- 自筆証書遺言がある場合は家庭裁判所での検認が必要(法務局保管制度除く)
税務上の注意点
- 協議が成立していないと相続税の特例(配偶者の税額軽減、小規模宅地の特例等)が使えない
- 10か月以内に協議が整わない場合、いったん法定相続分で申告し、後日更正の請求が必要となる
- 課税対象外であっても、協議書がないと手続きに支障が出ることがある
7.協議がまとまらない場合
家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停委員が仲介し合意を目指します。調停でも合意できない場合、「遺産分割審判」に移行し、裁判官が分割内容を決定します(強制力あり)。
専門家に依頼する場合の費用目安(2025年現在)
専門家 | 主な対応 | 費用相場 |
弁護士 | 相続争いの対応 | 50万円〜 |
司法書士 | 不動産の登記手続き | 15〜25万円+登録免許税 |
税理士 | 相続税申告・税務相談 | 財産額の0.5〜1%程度 |
行政書士 | 協議書作成・名義変更 | 8〜15万円 |
銀行(信託系) | 相続コンサル | 士業の2〜3倍が一般的 |
※相続の実務は複雑で分野横断的です。ソレイユ相続相談室では、税理士・行政書士・司法書士が連携し、スムーズな手続きをサポートします。
まとめ:専門家の力を借りてスムーズな相続を
遺産分割協議書の作成は、円満な相続を実現するために欠かせないステップです。協議内容の明確化だけでなく、相続税や不動産登記などにも大きな影響を及ぼすため、正確かつ迅速な対応が求められます。
相続でお悩みの方は、相続専門の税理士・行政書士・コーディネーターが在籍する「ソレイユ相続相談室」までお気軽にご相談ください。