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[医院の相続2] 知っておきたい相続税の特例

医院の相続では、相続税が家族にとって大きな負担になってしまうことが多くあります。
残された家族が円満に相続を終えるためには、適切な遺産分割と節税対策を行うことが大切です。
この記事では、医院の相続で知っておきたい節税対策について、いくつかご紹介いたします。

     

    作成日2021年10月26日

     

    1、相続税の節税に対する考え方

    相続税は亡くなった人が所有している財産に対して課税される税金です。

    預金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続財産に含まれます。

    しかし、亡くなった人の全ての財産が、相続税の課税対象となるわけではありません。

    相続税には「基礎控除」という非課税のボーダーがあり、基礎控除額を超えない範囲の財産額であれば、相続税はかからないのです。

    基礎控除額は、以下の算式で求めることができます。

     

    相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

     

    例えば、Aさんには妻と2人の子(長男、次男)がいます。

    Aさんが相続税評価額で1億円の財産を残して亡くなったとします。

    この場合の基礎控除額は、3,000万円(600万円×3人)=4,800万円となります。

    したがって、Aさんの相続で課税対象となる相続財産額は、1億円−4,800万円=5,200万円です。

     

    上記の計算式を見て分かる通り、相続税の課税対象となる財産を減らすことが相続税の節税につながります。

    今回は、税務上の特例により、課税財産を減らす方法と上記計算式の課税財産に対する特別控除(特例)について説明していきます。

     

     

    2、配偶者の税額軽減

    「配偶者に財産を多く相続させると、節税対策になる」と聞いたことがある方も多くいらっしゃると思います。

    これは「配偶者の税額軽減」のことを言っています。

     

    配偶者の税額軽減とは、亡くなった人の配偶者が財産を相続したときに、配偶者の法定相続分または16,000万円までのいずれか大きい方までは、配偶者の相続税がゼロになる制度です。

     

    つまり、配偶者の法定相続分が16,000万円以下の場合は16,000万円まで、配偶者の法定相続分が16,000万円超の場合はその法定相続分までが非課税となるのです。

    この制度の適用を受けることができるのは、戸籍上の配偶者のみです。

    内縁の妻(夫)の場合はこの制度を利用することができませんのでご注意ください。

     

    次に、配偶者の税額軽減を活用した場合の相続税の計算方法を、具体例で見てみましょう。

    例えば、Aさんには妻と長男・次男の2人の子がいます。Aさんが相続税評価額で4億円の財産を残して亡くなり、妻と2人の子は法定相続で財産を分割することにしました。この場合、妻と2人の子が支払うべき相続税はいくらになるでしょうか。

     

    まずは、財産の総額から基礎控除額を引き、課税財産額を求めます。

    法定相続人は3人ですので、基礎控除額は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円です。

    したがって、課税財産は4億円−4,800万円=35,200万円となります。

     

    次に、①で求めた課税財産を法定相続分で分けます。

    配偶者と子が法定相続人になる場合の相続分は、配偶者2分の1、子全体で2分の1(長男と次男がそれぞれ4分の1ずつ)ですので、この場合の法定相続分は以下のとおりになります。

     

    妻:35,200万円×2分の117,600万円

    長男:35,200万円×4分の18,800万円

    次男:35,200万円×4分の18,800万円

     

    ここで、各人の相続税を計算し相続税の総額を求めます。

    相続税の税率は以下の表のとおりです。

     

     

    上の表から、妻と2人の子それぞれの仮の相続税額は次のように求められます。

     

    妻の仮相続税額:17,600万円×40%(税率)−1,700万円(控除額)=5,340万円

    長男の仮相続税額:8,800万円×30%(税率)−700万円(控除額)=1,940万円

    次男の仮相続税額:8,800万円×30%(税率)−700万円(控除額)=1,940万円

     

    したがって、相続税の総額は5,340万円+1,940万円+1,940万円=9,220万円となります。

     

    相続税では、誰がどんな財産をいくら相続しようと、それには関係なく全体の財産を法定相続分で取得したと仮定して、相続税の全体額相続税の総額を計算します。

    その計算した相続税の総額を実際に各相続人が相続した財産の割合で按分し、各人が納付する相続税を計算するのです。

     

    ④③で求めた相続税の総額を、各人が取得した財産額に応じて按分します。

    今回の例では、法定相続分で財産を分割することにしました。

     

    妻の法定相続分は2分の1、長男と次男の法定相続分はそれぞれ4分の1ずつですので、各人が納めるべき相続税額は以下のとおりになります。

     

    妻の相続税額:9,220万円×2分の14,610万円

    長男の相続税額;9,220万円×4分の12,305万円

    次男の相続税額;9,220万円×4分の12,305万円

     

    最後に、配偶者の税額軽減の金額を計算して控除します。

    配偶者の税額軽減では、配偶者の取得した財産額が法定相続分か16,000万円までのいずれか大きい方までは相続税がかかりません。

     

    今回の例で、Aさんは4億円の財産を残しているため、妻の法定相続分は2分の12億円となります。法定相続分の2億円と16,000万円を比べてみると、2億円の方が大きいですので、配偶者は法定相続分までの相続であれば相続税がかからないことになります。

     

    今回の例では、妻は法定相続で財産を分割したため、妻の相続税額はゼロとなり、長男と次男の相続税のみ支払うことになります。

     

    このように、配偶者の税額軽減は大幅な節税効果が期待できる制度です。

    しかし、節税のために妻に多くの財産を相続させると、2次相続が発生したときにかえって多くの相続税を支払うことになる恐れがあります。そのため、先生の次に妻が亡くなった場合の相続税まで考え、1次相続でどのような分割をしておくかが節税の1つのポイントです。

     

     

    3、配偶者の居住権

    配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなったときに、残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまで又は一定の期間、無償で居住することができる権利です。これは、残された配偶者の居住権を保護するため、令和241日から新たに認められた権利です。

     

    配偶者居住権では、建物の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考えます。

     

    例えば、Aさんには妻と長男がおり、5,000万円の自宅と6,000万円の預金を残して亡くなった例で考えてみましょう。

    妻はAさんと一緒に暮らしていたため、Aさんが亡くなった後も自宅に住み続けたいと考えています。そこで、妻が5,000万円の自宅と500万円の預金、長男が5,500万円の預金を相続することにしました。

    しかし、妻は自宅を相続したのはいいものの、預金を一部しか相続することができなかったため、生活費を確保することができません。

    このように、配偶者居住権が認められるまでは残された配偶者が自宅と十分な生活費を確保することが難しいという問題がありました。

     

    このような問題を解消するため、配偶者居住権を認めて自宅の価値を「所有権」と「居住権」で分けることにしたのです。

     

    そうすることで、例えば、自宅の所有権が2500万円、居住権が2500万円と分解された場合に、自宅の所有権2,500万円は長男が相続し、妻は2,500万円で自宅の居住権を相続することができるようになりました。これにより、長男が自宅の所有権2,500万円と預金3,000万円、妻は自宅の居住権2,500万円と預金3,000万円を相続して、自宅に住み続ける権利と生活費を確保することができます。

     

    配偶者居住権が成立するためには、以下の要件を満たしている必要があります。

     

    【配偶者居住権の成立要件】

    ・亡くなった人の戸籍上の配偶者であること

    ・配偶者が亡くなった人が居住していた建物に、亡くなった時に居住していたこと

    ・遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと

     

    配偶者の税額軽減と同様、亡くなった人の内縁の妻(夫)では配偶者居住権の取得は認められませんのでご注意ください。

     

    配偶者居住権は配偶者の生活を守るためのものですが、相続税の節税につながる可能性があります。

     

    例えば、Aさんが5,000万円の自宅と6,000万円の預金を残し、その財産を妻と長男で相続するとします。

    今までの相続では、妻が5,000万円の自宅と500万円の預金、長男が5,500万円の預金を相続して妻が住み続けられる自宅を確保していました。配偶者は、配偶者の税額軽減があるので16千万円までは相続税がかかりません。しかし、それでは妻が亡くなった後に5,000万円の自宅が相続財産として相続税が課税されてしまいます。そのため、同じ財産に2度も相続税が課税されることになるのです。

     

    ですが、配偶者居住権が認められた後では計算が異なります。

    妻が自宅の居住権2,500万円と預金3,000万円、長男が自宅の所有権2,500万円と預金3,000万円を相続したとすると、1次相続ではさほど相続税額に変わりはありません。

    しかし、妻が亡くなった後、居住権は妻の死亡により消滅します。自宅の所有権はAさんが亡くなった時に長男が相続しており、長男が妻の死亡で相続する財産はありませんので、結果として相続税もかからないのです。

     

    さらに、配偶者居住権は次の章でご説明する「小規模宅地の特例」を組み合わせることによって、より効果的に相続税を説明することができます。

    配偶者居住権と小規模宅地の特例の併用による節税は複雑ですので、相続税に詳しい税理士へのご相談をお勧めします。

     

     

    4、小規模宅地の特例

    小規模宅地の特例とは、簡単にいうと、亡くなった人が所有していた土地について、一定の要件を満たす人が相続した場合に、その土地の評価額を最大80%減額することができる制度です。不動産の相続税は評価額をもとに計算されるため、不動産の評価額を下げることは、相続税の節税につながります。

     

    小規模宅地の特例を適用することができる土地は、亡くなった人が住んでいた土地、貸していた土地、事業をしていた土地の3種類です。種類によって減額の割合が異なりますので、下の表でご確認ください。

     

     

    例えば、亡くなった人が住んでいた300㎡の土地を妻が相続したとします。土地の評価額が1億円だとすると、小規模宅地の特例を適用した場合、1億円×80%=8,000万円もの減額となり、土地の評価額を2,000万円まで下げることができるのです。

     

    ※小規模宅地の特例についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

    →相続の知恵「小規模宅地の特例を利用した相続税の節税」

     

    この特例は、配偶者であれば一緒に住んでいなくても利用することができる点がポイントです。

    ただし、配偶者に多くの財産を相続させると、2次相続が発生したときにかえって多くの相続税を支払うことになる可能性がありますので、2次相続を考慮した遺産分割を心がけましょう。

     

     

    5、まとめ

    今回ご紹介した節税対策は、財産が大きければ大きいほど高い節税効果をもたらします。

    1次相続だけでなく、2次相続も考慮した遺産分割でより高い節税を実現することも可能です。

    医院の相続を考えた時、どのような遺産分割をするべきかを慎重に検討しましょう。

     

    ソレイユ相続相談室では、お客様一人ひとりに合った遺産分割や節税対策をご提案いたします。

     

    医院の相続についてご検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください。

     

     

     

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