「亡くなった人の住んでいた家を相続したが、今後住む人がいないので売りたい」このような悩みを抱えている方も多いと思います。

不動産を相続しても、住んだり貸したりしなければ、ただ固定資産税が掛かるだけの「負動産」となってしまいます。

相続が決まらず、また有効活用も決まらないまま「空き家」となる不動産は年々増えています。

不動産を相続する場合には「相続税」、売却する場合には「譲渡所得税」が課税されますが、これらの税金を安く抑え手取りを増やすことができる制度が多くあります。

この記事では、相続した不動産を売却する際の税金を安く抑える方法についてご紹介いたします。

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1.相続した不動産を換金するまでの手続き等

相続したが誰も住む予定がない不動産や、主な相続財産が不動産のみで公平な分割ができない場合には、相続不動産を売却し、その売却代金を相続人で分けることができます。

これを「換価分割」といいます。

相続が発生したらできるだけ早く財産をもらいたいという方も多いと思いますが、相続不動産は相続が発生してすぐに売却することはできません。

相続不動産を売却する前に、相続手続きや譲渡所得について確認しておくべき事項があります。

ここでは、相続不動産を換金する場合の手続きについてご説明いたします。

①相続手続き

相続が発生したら、亡くなった人が遺言を残していないかを探します。

自筆証書遺言であれば自宅や貸金庫、法務局にある可能性があります。

また、公正証書遺言の場合は全国の公証役場で遺言の有無を確認することが可能です。

遺言がある場合はその遺言の内容に従って遺産分割をすることができます。

次に、相続人と相続財産の調査をしましょう。

相続人は亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本を辿って明らかにします。

前妻との子や隠し子も相続人になりますので、漏れのないように調査する必要があります。

また、相続財産には預金不動産、有価証券、自動車など様々なものがあります。

不動産の場合は、自宅に届く固定資産税納税通知書を探し、そこから不動産の特定を行います。

固定資産税納税通知書が見つからない場合は、役所で「名寄帳」を取得して不動産を特定することもできます。

亡くなった方が転居している場合には、前の市区町村の固定資産の有無を名寄帳で調べることも必要になるかもしれません。

相続人と相続財産が明らかになったら、「誰が、何を、どのくらい相続するか」を話し合う遺産分割協議を行います。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。

遺産分割協議がまとまったら、相続人全員が遺産分割の内容に合意していることを証明するために

「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書は全ての人が必ず作成しなければならないものではありませんが、不動産の名義変更手続きを行う際は遺産分割協議書の提出が必要です。

不動産を売却する場合にも、いったん相続人への名義変更が必要になりますので、必ず作成するようにしましょう。

遺産分割協議書を作成したら、協議書の内容に従って財産の名義変更など各種手続きを行なっていきます。

名義変更を行うことによって、財産の名義が亡くなった人から相続人へと移行します。

不動産の名義変更は、必要書類を用意して不動産の所在地を管轄する法務局で行いますが、不動産によっては法務局に行かずともオンラインで名義変更の申請を行うことも可能です。

②書類探し

不動産の名義変更を行うと同時に、その不動産を買ったときの売買契約書や建てたときの工事契約書などを探しましょう。

これは「その不動産をいくらで手に入れたか」を調べるために行います。

不動産を手に入れた額よりも高い額で売却できた場合、売却した人はその不動産によって利益を得たことになり、利益に対して譲渡所得税が課税されます。

正確に譲渡所得税を計算するために、不動産を手に入れた額を調べる必要があるのです。

課税の対象となる譲渡所得金額は、以下の計算式によって求められます。

譲渡所得金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額(一定の場合)

※譲渡費用とは、仲介手数料や測量費、立退料などです。

※特別控除額とは、収用のための売却や自分の住んでいる不動産の売却など、特定の場合に譲渡価額から差し引くことのできる額のことです。

例えば、

2,000万円で買った土地を3,000万円で売り、譲渡費用に200万円を要した場合(特別控除なし)

譲渡所得金額は

3,000万円−(2,000万円+200万円)=800万円となります。

よって、譲渡所得800万円に対して、譲渡所得税が課税されることになります。

仮に譲渡所得税率が20%だとすると、800万円×20%=160万円の譲渡所得税を支払うことになります。

また、場合によっては、買ったときの価格が売るときよりも低いケースもあります。

この場合、譲渡所得はありませんので、譲渡所得税は課税されません。

ただし、不動産を手に入れたときの売買契約書や工事契約書が見つからず取得費が分からない場合は、

売値の5%を取得費として譲渡所得を計算します。

ですから、

3,000万円で土地を売ったが、売買契約書が見つからず取得時の金額が分からなかった場合

3,000万円×5%=150万円が取得費。譲渡費用が200万円だとすると、

譲渡所得金額は

3,000万円−(150万円+200万円)=2,650万円となります。

よって、 譲渡所得 2,650万円 に対して、譲渡所得税が課税されることになります。

仮に譲渡所得税率が20%だとすると、2,650万円×20%=530万円もの譲渡所得税を支払うことになります。

このように、不動産を取得したときの資料があれば譲渡所得税がかからなかったのに、

資料が見つからず余分な税金を支払うことになる恐れがあります。

自宅の書斎や貸金庫など、考えられる場所は隅々まで探して書類を見つけましょう。

③不動産の査定

次に、相続不動産が実際にいくらで売れるのかを不動産業者に査定してもらいます。

不動産の売り方には、不動産業者から買い取ってもらう「買取」と不動産業者に仲介を依頼して買主を探してもらう「媒介」の2種類があります。

買取の場合は買主を探す時間がかからないため、比較的早く換金することができますが、希望の価格で売却できるとは限りませんので、一般的に媒介の場合よりも代金が安いのが特徴です。

また、売却価格も大事ですが、譲渡所得税を抑えて手取り金額を多くすることも考えなければなりません。

税金の計算に強い税理士に相談しながら、相続不動産の査定を行いましょう。

2.換金する人によって節税策が違う

先ほどご説明したとおり、不動産を売却して利益を得ると、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。

しかし、相続不動産を換金する人(売却する人)によっては、特例を活用して譲渡所得税を安く抑えることができます。

①居住していた人が売れば3000万円控除

相続人のうち、その不動産に居住していた人が売却したとき、長期譲渡か短期譲渡かに関わらず、

譲渡所得から最大3,000万円までを控除することができる特例です。

※不動産を買ってから5年以内に売った場合は短期譲渡、5年を超えてから売った場合は長期譲渡となります。短期か長期かによってそれぞれ税率が異なり、短期の方が税率が高くなります。

相続不動産の場合には亡くなった人の購入時期と買取価格を引き継ぎます。

例えば、2,000万円(取得費込)で買った自宅を3,500万円で売ったとします。

この場合、不動産の売却により1,500万円の譲渡所得が発生しますが、

居住用財産の3,000控除を使うことで、1,500万円−3,000万円となり譲渡所得税がかかりません。

ただし、この特例は住んでいる自宅の売却、

または「その家に住まなくなってから3年を経過した日の属する年の12月31日まで」の売却が要件です。

期限を過ぎてからの売却では、3,000万円控除の特例を利用できませんのでご注意ください。

② 空き家で売れば3000万円控除

これは、亡くなった人が住んでいた家を相続したが、

その後、誰も住む予定がなく空き家となってしまった場合に利用できる特例です。

相続により空き家となった家を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除することができます。

ただし、この特例の利用には「住んでいた人が亡くなった日から3年を経過した日の属する年の12月31日まで」に譲渡することが要件となります。

居住用財産の3,000万円特別控除と同様、期限を過ぎてからの売却では、3,000万円控除の特例を利用できませんのでご注意ください。

③相続税を払っている人が売れば相続税控除

これは、相続した不動産を売却したときに、支払った相続税額の一部を取得費に加えることができる特例です。

例えば、親が1,000万円で買った土地を相続し、その土地に対応する相続税が100万円だとします。

その後、土地を2,000万円で売却した場合、

譲渡所得は2,000万円−(1,000万円[土地購入代金]+100万円[相続税])=900万円となります。

相続税を取得費として加算することができるのです。

ただし、取得費に加算できる相続税額は、当該不動産に対応する相続税のみです。

例えば預金5,000万円と1,000万円の土地を相続し、600万円の相続税が課税された場合、600万円全額を取得費として加算することはできません。

相続財産の中で土地の占める割合に応じた相続税が取得費となります。

この場合は、概算の計算ですが相続財産のうち土地の占める割合は1/6ですので、600万円×1/6=100万円が土地の取得費として加算されます。

なお、その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることが要件です。

3.換金する前に再度検討しておきたいこと

相続不動産を売却してお金に変えることで、相続人同士で分けやすくなったり相続税の納税資金を確保できたりと、様々なメリットがあります。

しかし、不動産を相続したからといってすぐに売却を決めるのではなく、もう一度不動産の活用方法や売却時期について見つめ直すことも必要です。

①自分で住めないか?  他人に貸せないか?

相続不動産を売るのではなく、

「自分で住むことができないか?」「他の人に貸せないか?」と不動産の活用方法を考えてみましょう。

例えば、結婚や出産のタイミングに合わせた自宅の住み替えに相続不動産を活用することができます。

また、リフォームやリノベーションをして、相続不動産を賃貸不動産として活用することもできます。

建物の維持管理費や固定資産税等の支払いは発生しますが、人気のエリアであれば賃料による安定した利益を得ることができる可能性があります。

相続不動産を賃貸不動産として活用する場合は、

あらかじめ周辺の家賃をリサーチして、いくらで貸すことができるかを確認しておきましょう。

②代償金の額によっては自分で相続した方が得

「主な相続財産が自宅のみ」という家庭も珍しくありません。

このようなケースでは、相続人が複数人いる場合、相続人の1人が不動産を相続してしまうと、残りの相続人が財産を全く相続できなくなってしまいます。

これでは不公平な遺産分割となってしまいますので、

不動産を売却してその代金を相続人同士で分け合う「換価分割」によって公平な遺産分割を行うことがあります。

しかし、換価分割で公平な遺産分割をすることはできますが、早く換金したいために安く売却してしまう可能性があります。さらに、換金には譲渡所得税が最低でも20%かかります。

そうなると、各相続人の取り分は諸費用や税金分が減額になってしまいます。

そこで、「代償分割」という方法を利用して遺産分割をすることで、換価分割よりも有利に不動産を取得する方法があります。

代償分割とは、特定の相続人が不動産を相続し、不動産を相続した人が他の相続人に対して代償金を支払うことで公平な遺産分割をする方法です。

例えば、相続財産が被相続人の自宅のみ、法定相続人は長男、次男の2人の事例を考えてみましょう。

換価分割で自宅を売却しようと不動産屋に査定してもらうと、

自宅の売却価格が2,000万円で、課税される譲渡所得税が400万円でした。

この場合、自宅の売却代金から譲渡所得税を差し引いた1,600万円を相続人2人で分けることになりますので、

1人800万円ずつ相続することができます。

一方で、

代償分割で自宅を長男が相続することになった場合、

長男が次男に代償金として800万円を支払うことで自宅を取得することに合意をしたとします。

代償金は相続税の課税対象にはなりませんので、代償金をもらった次男の手取りは売却した場合と同じで、長男は200万円安く不動産が買えたと同じ結果になります。

また、代償金は当事者間で総合的に決める事もできます。

例えば、長男は「今まで親の面倒を見てきたし、今後も墓を守っていくから、代償金を安くして欲しい」と主張したとします。

話し合いの結果、代償金を800万円から500万円まで下げてもらうことになれば、長男は500万円の代償金を支払うことで、居住用や賃貸用として相続不動産を活用することができるのです。

4.まとめ

相続不動産は「売るか売らないか」、「どのように分けるか」で相続人同士の意見が対立しやすい財産です。

不動産を相続した場合は、必ず相続に詳しい専門家へ相談し、相続不動産の活用方法や分割方法を慎重に検討しましょう。

ソレイユ相続相談室では、豊富な実務経験のある税理士と行政書士があなたの相続のお悩みを解決いたします。

相続について不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士 長野事務所所長

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。