ソレイユ通信Vol.5
確実に私名義にする方法は?
住んでいる家が父名義になっているので、将来、この土地を確実に自分の名義にしたい・・・。
この土地が相続争いの火種とならないために、どんな備えができるのでしょうか。
質問
父名義の土地に建っている私の住まいをスムーズに相続したい。
高齢の父は、近頃入退院を繰り返しています。
私には姉がいますが、ここ10年ほど音信不通で、両親とも連絡を取っていないようです。
私の住まいは父名義の土地に建っており、父の相続が発生した際にスムーズに私が相続できるか心配です。何かよい方法はありますか?
回答
一般的にまず思いつくのが、「お父様に遺言を書いていただく」という方法です。
法的に効力のある遺言書に「その土地はあなたに相続させる」と書かれていれば、いざ相続が発生した時には、お姉様の実印、印鑑証明書なしに名義変更の手続きが可能となります。
しかし、遺言書はお父様の意思次第、今はそのつもりでも、後で気が変われば書き直すこともできます。お父様のご存命中は、土地はお父様のものです。「本当にもらえるのだろうか」との不安を100%解消できる策ではありません。
「生前にお父様から贈与を受けて所有権を移転する」という方法もありますが、普通に贈与すると莫大な税金がかかる心配があります。
生きているうちに「相続」?“相続時精算課税制度”
“相続時精算課税制度”は、一定の贈与を「相続財産の前渡し」と捉える贈与税の特例です。
この制度を利用すると、非課税枠2,500万円(贈与者1人あたり)までの贈与には贈与税が課されません。非課税枠を超えて贈与を受けた場合には、超えた部分に対してのみ、一律20%の贈与税が課されます。
「相続財産の前渡し」ですので、贈与者が亡くなり相続が発生した時には「相続財産」とみなされ、他の相続財産と合計して相続税の計算をすることになります。既に贈与時に相続時精算課税制度を適用していますので、支払った贈与税がある場合には差引計算を行い、不足額があれば納税を、過納額があれば還付を受けることになります。“相続時精算課税”という名の通り、贈与者が亡くなった時に、支払う税金も「精算」が行われるわけです。
相続時精算課税制度の概要
贈与者 | 60歳※以上の父母または祖父母 |
受贈者 | 20歳※以上の子または孫 |
非課税枠 | 贈与者1人につき、2,500万円 ⇨非課税枠を超えた部分に対しては 一律20%で課税 |
贈与財産の種類 | 問わない |
適用要件 | 相続時精算課税制度を選択する場合には、その選択する最初の贈与の翌年3月15日までに「相続時精算課税制度選択届出書」を提出 ⇨一度選択すると、その贈与者からの贈与につき暦年課税の適用はできません。 |
※いずれも年齢は、贈与を受ける年の1月1日現在
相続時精算課税制度の注意点
相続時精算課税制度は、相続を待つことなく確実にあなた名義にできる制度ですが、デメリットもあります。

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保存版ひとくちメモ
■財産(不動産)が移転した場合の各税額比較表■
父から子へ相続税評価額2,000万円(固定資産税評価額1,500万円)の土地が移転した場合を例に、各税額を比較してみました。(※)
※固定さん税評価額は、死亡時・贈与時とも同一価額とします。
遺言 | 単純贈与(暦年贈与) | 相続時精算課税による贈与 | |
取得時期 | 父死亡時 | 贈与時 | 贈与時 |
相続税 | 課税対象 | ―※1 | 課税対象 |
贈与税 | ― | 585万円※2 | 0円※3 |
不動産取得税 | ―※4 | 45万円※5 | 45万円※5 |
登録免許税 | 6万円※6 | 30万円※7 | 30万円※7 |
注意点 | 父の意思で書き換え自由。 内容、形式等が無効なら、遺産分割協議が必要となる。 |
「相続時精算課税制度」を選択したら、取り消すことはできない。
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※1 相続開始前3年以内の贈与である場合には、相続税の課税対象となります。(相続により財産を取得していない場合を除きます。)
※2 計算式:(2,000 万円-基礎控除額110 万円)×45%-265 万円
※3 2,500 万円までは、贈与税がかかりません。
※4 相続、民法964 条による包括遺贈、被相続人から相続人に対してなされた遺贈によるものは、非課税です。
※5 固定資産税評価額×3%
※6 固定資産税評価額×0.4%
※7 固定資産税評価額×2.0%