公開日/2022年2月16日

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終活や相続対策として活用されている「遺言」と「家族信託」。遺言の方が広く利用されているイメージがありますが、遺言と家族信託にはどのような役割があるかご存知でしょうか?

この2つは全く異なる制度と思われがちなのですが、希望通りの財産承継が実現できるという面では似ています。しかし、どのように財産を動かしていきたいか、家族にどのような想いを残したいかによって、どちらの制度を利用するべきかが異なります。それぞれのできることを知っておくことで、あなたがするべき相続対策が見えてくるのです。

今回は、遺言と家族信託の違いや、遺言の代わりに家族信託を利用する方法について、ご説明していきます。

❏遺言と家族信託の違い

まずは、遺言と家族信託、それぞれの制度について確認しましょう。

遺言とは

遺言とは、主に自分の財産について「誰に、何を、どのくらい受け継がせたいか」を記した書面です。

遺言には、大きく分けて自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があり、それぞれ作成方法が異なります。

家族信託と遺言の記事、遺言書を書く手元の画像

遺言の種類に関してさらに詳しく知りたい方は、

こちらの記事→「遺言の種類とそれぞれの特徴」をご覧ください。

原則として、遺言に書かれている内容は法定相続よりも優先されます。例えば、「全財産を妻に相続させる」という遺言が残っている場合には、その通りに財産を相続させることができるのです。なお、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分があります。遺留分が請求された場合、妻はその法定相続人に遺留分を支払わなければなりません。

しかし、遺言は遺言者が亡くなってから効力が発生するため、遺言者が亡くなってから遺言の内容に沿った遺産分割がされる点がデメリットと言えます。そのため、亡くなる前の財産の管理や処分については書くことができません。例えば、遺言に「私が認知症になったら、私の持っている甲不動産を売って欲しい」と書いたとしても、生きているうちに甲不動産を売ることはできないのです。 しかし、遺言には財産に関してだけでなく、その他にも様々なことを書くことができます。例えば、遺言で遺言執行者を指定しておくことで、残された家族の相続手続きをスムーズに進めることができるのです。遺言執行者とは、相続人を代表して相続手続き等を行ってくれる人のことをいいます。その他にも、相続廃除や生命保険の受取人の変更なども遺言で行うことができるため、様々な面から理想の遺産承継を実現することができます。

家族信託とは

一方で、家族信託とは、自分の持っている財産を信頼できる家族に預け、その財産の管理や運用、処分を任せることができる制度です。遺言とは異なり、亡くなる前から実行することができます。

家族信託には、以下の3人の人物が必要になります。

家族信託と遺言の記事、高齢の父親と息子の画像

つまり、委託者である親が信託財産を預け、受託者である子が受益者のために親の財産を管理する、という仕組みです。

家族信託は、亡くなる前の「認知症対策」としても多く活用されており、この場合には委託者=受益者の信託契約をすることになります。委託者=受益者の信託契約では、子が親の財産を親のために管理することになるため、親が認知症になった後でも、子が代わりに親の生活費の引き出しや不動産の売却などを行うことができるのです。

また、家族信託は委託者である親が亡くなった場合でも、信託を継続することが可能です。そのため、親が亡くなった後の二次相続対策としても活用することができます。

しかし、家族信託では受託者となる家族がいなければ成立しない点がネックと言えるでしょう。基本的に、契約成立後の管理は無償で行うことのできる家族信託ですが、信頼できる家族がいない場合には、信託契約を結ぶことができません。喧嘩別れした子や、親の財産をあてにして生活している子を受託者にすると、財産を使い込まれる可能性がありますので、注意が必要になります。

また、今の時点で家族信託に詳しい専門家が少ないこともデメリットです。家族信託は信託不動産の登記が必要になるほか、相続税や贈与税などの税金面も考慮する必要があるため、専門家への相談が不可欠となります。しかし、「相談した専門家が家族信託に詳しくなく、かえって多くの税金がかかった」というケースも珍しくありません。そのため、相談する専門家を慎重に選ばなければなりません。

遺言の代わりに家族信託を活用する方法

家族信託を遺言の代わりに活用することはできるのでしょうか?

遺言の代わりに家族信託で相続対策を行ったAさんの例を見てみましょう。

もうすぐ80歳になるAさんには、妻と2人の子(長男、次男)がいます。長男と次男は2人とも結婚しており、次男は遠くに引っ越しましたが、長男はAさんと妻の介護をするために、Aさん名義の自宅に一緒に住んでいます。

Aさんは、自分が認知症になったら介護施設に入所し、自分が亡くなったら、妻に財産を残したいと考えています。そして、長男が毎日献身的に介護をしてくれて非常に助かっているため、妻が亡くなった後は長男に多くの財産を残してあげたいと考えるようになりました。

つまり、Aさんが考える財産の流れは、「Aさん→妻→長男」となります。

Aさんはこの遺産承継を実現するべく、遺言を残そうと考えましたが、遺言では妻が亡くなった後の遺産承継を指定することができないことを知りました。そこで、Aさんは専門家に相談し、アドバイスをもらうことにしました。

専門家「Aさんの望む遺産承継をするためには、家族信託という方法があります。」 専門家が提案した信託契約案は以下のとおりです。

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このような信託契約を結ぶことによって、Aさんの信託財産は長男に預けられ、Aさんが生きている間はAさんのために、そしてAさんが亡くなった後はAさんの妻のために使われることになります。そしてAさんの妻が亡くなった後は、残った財産(残余財産)は長男が受け取ることになります。

このように、家族信託ではAさんの相続(一次相続)だけでなく、妻の相続(二次相続)についても決めておくことができます。遺言ではできない二次相続の対策をするためには、家族信託の活用もご検討ください。

❏まとめ

今回は、家族信託を遺言の代わりに活用する方法について、具体例を交えながらご説明しました。家族信託は遺言の代わりになるだけでなく、遺言では難しい二次相続対策までも行うことができます。より長い期間で財産承継や相続対策を行いたい場合は、相続に詳しい専門家に相談し、家族信託をうまく活用しましょう。

ソレイユ相続相談室では、実務経験の豊富な税理士があなたに合った遺言と家族信託の提案を行なっております。遺言と家族信託をご検討のお客様は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。