作成日/2022年2月1日

「親名義の自宅が古くなってきており、新しい自宅に住み替えたい」

「親は自宅を売却したお金で介護施設に入所したいと言っている」

このように、親名義の自宅の住み替えや売却にはさまざまな理由があります。

特に、自宅の住み替えを行う場合、今住んでいる自宅の売却と新しい自宅の購入手続きが必要になるため、たくさんの時間と費用がかかります。しかし、自宅の売却や購入などの契約は、名義人である親が認知症等になり判断能力が低下してしまうと、することができないのです。

「自宅の住み替えや売却をしたくてもできない」

このような事態を防ぐため、自宅の管理や住み替え・売却を信頼できる家族に任せる家族信託の利用を検討しましょう。この記事では、家族信託を利用して親名義の自宅の住み替えや売却を実現する方法をご説明します。

家族信託で親の自宅の住み替えや売却はできるの?入の画像

自宅の住み替えや売却に家族信託を利用する方法

家族信託とは、財産の管理を信頼できる家族に任せ、認知症になった後も財産の管理・運用・処分を自分の代わりに行ってもらう制度です。認知症になり判断能力が低下すると、預金が凍結されてお金を下ろせなくなるほか、自分名義の自宅の売却も行うことができなくなります。

家族信託を利用して預金や自宅を家族に信託しておくことで、認知症により判断能力が低下したとしても、自分の代わりにその家族が預金を引き出したり自宅の売却を行うことができるのです。

ここでは、家族信託を利用して自宅の住み替えや売却を行う方法を、具体例を挙げてご紹介します。

【事例】

Aさんの父(80)は、父名義の自宅に1人で住んでいます。Aさんは10年前に結婚して父の自宅の近くに家を構えて住んでいるため、頻繁に父の介護に自宅を訪れています。しかし、このまま父が認知症になり1人で生活することが難しくなったら、Aさんが父の自宅に移り住んで毎日介護をすることになるだろうと思っていました。

そんな中、父はAさんのことも考えて「自分が1人で生活できなくなったら、自宅を売却して介護施設に入所したい」と話をしてきました。しかし、父が認知症等で判断能力が低下すると、自宅を売却することができません。

そこで、Aさんは「家族信託」という制度を父に提案することにしました。Aさんたちが締結する信託契約は以下のとおりです。

家族信託信託契約案の画像

このような信託契約を締結しておくことで、父は自宅の管理や売却をAさんに任せながら自宅に住み続け、必要に応じて自宅の売却と介護施設への入所をすることができます。

「今はいいが、いずれは自宅を売却したい」と考えていたとしても、いざ売却を実行するときに認知症になっていては売却をすることができません。特に、自宅の売却代金を介護施設の入所費用に当てるケースでは、自宅の売却が実現できないと介護施設へ入所することができず、理想の老後を実現することができない可能性もあります。自宅の売却を検討している場合には、元気なうちから家族信託をして備えておくことが大切です。

また、信託契約書に自宅の売却と新しい自宅の購入について記しておくことで、家族信託を利用して古くなった自宅の住み替えを行うことができます。さらに、信託が終了した後に残った財産(残余財産)の受取人をAさんに設定しておくことで、父が亡くなった後は住み替えた新しい自宅をAさんに引き継ぐことも可能です。このように、家族信託の遺言的な役割を利用して、相続争いを防止することもできるのです。

自宅の住み替えや売却を行う際には、費用を抑える特例を活用しましょう。特例については次の章でご説明します。

自宅の住み替えや売却に使える特例

自宅の住み替えや売却を行う際には、共通して自宅の売却手続きを行う必要があります。自宅を売却して得たお金で、新しい自宅を購入したり介護施設への入所や老後資金の確保を行うかと思います。

しかし、自宅を売却して発生した利益には「譲渡所得税」という税金がかかることもあるのです。多額の譲渡所得税がかかると、新しい自宅の購入や施設への入所費用が不足してしまう恐れがあります。

そこで、自宅の住み替えや売却を行う際に、譲渡所得税を安く抑えたり繰り延べることができる特例をご紹介します。これらの特例を活用して、お得に自宅の住み替え・売却を実現しましょう。

特例① 居住用財産の3,000万円特別控除

居住用財産の3,000万円特別控除とは、自宅を売却したときに得た売却益(譲渡所得)から最高3,000万円まで控除することができる特例です。譲渡所得は以下の算式で求めることができます。

譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除

※取得費とは、その土地や建物を買い入れた時の購入金額や仲介手数料などをいいます。なお、建物の場合は取得費から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

※譲渡費用とは、仲介手数料やその不動産を売るために要した費用などをいいます。

※特別控除額とは、一定の状況下で不動産を売却する場合に控除できる金額です。今回の場合、最高で3,000万円の控除を受けることができます。

譲渡所得が3,000万円以下の場合は、特例を利用することで譲渡所得税をゼロに抑えることができます。なお、3,000万円を超える場合には、超えた部分にのみ譲渡所得税が課税されます。

特例の適用により大幅に譲渡所得税を抑えることができますので、自宅の売却後に新しい自宅の購入や介護施設への入所を控えている方にとっては非常に嬉しい特例です。

特例② マイホームの買い替え特例

マイホームの買い替え特例は、自宅を売却したときに発生した譲渡所得税の納付を将来に繰り延べることができる特例です。繰り延べの期間は「新しく購入した自宅を売却する時」までです。

例えば、買い替えのために古くなった自宅を5,000万円で売却し、2,000万円の譲渡所得が発生したとします。新しく6,000万円の自宅を購入したとすると、2,000万円の譲渡所得にかかる譲渡所得税と、6,000万円の自宅購入費用の両方が発生することになり、支払いのために貯金を崩したり、銀行からお金を借りたりする必要が出てくるのです。これでは、自宅の住み替えを進んでしようとは思えません。

マイホーム買換え特例の事例画像

ただし、マイホームの買い替え特例を利用できる住宅には、いくつかの要件があります。自宅の住み替えを検討している方は、特例を使えるかどうかを、国税庁のサイトであらかじめ確認しておきましょう。

国税庁のサイトは⇒コチラです。

まとめ

今回は、家族信託を利用して親名義の自宅を住み替える方法をご紹介しました。財産の名義人である親が認知症になってしまった後では、自宅の住み替えや売却だけでなく、維持や管理も行うことができなくなってしまいます。

そうなる前に、親が元気なうちから家族信託を活用した財産管理をしておきましょう。

ソレイユ相続相談室では、豊富な実務経験のある税理士と行政書士があなたに合った家族信託のご提案を行っております。家族信託をご検討のお客様は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事の監修者

釘宮 貴美子

釘宮 貴美子(公認会計士・税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 社員税理士 首都圏事務所所長
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士 小杉事務所所長

福岡県出身。「円満な相続」には、税法の知識だけでなく民法その他関連法規と豊富な経験に基づくノウハウが必要です。税務調査率は1%に満たない精度の高いプロ中のプロ。税務を絡めて遺言や契約書等に法的不備がないか厳しい目でチェックし、お客様を税務リスクから守る、真の税務法律家です。