家族信託において、受託者は信託財産を預かり、管理や処分などを行う重要な役割を担っています。信託契約の途中でこの受託者が亡くなってしまった場合、信託契約や信託財産はどうなるのでしょうか? 家族信託では、あらゆるケースを想定してあらかじめ対策を取っておく必要があります。今回は、信託の途中で受託者が亡くなってしまった場合に信託契約はどうなるのか、また、受託者が亡くなった後も滞りなく信託を続けるための対策についてご説明いたします。

作成日 2021年11月04日

受託者が亡くなっても信託契約は終了しない

家族信託では、受託者が亡くなったとしても、当然に信託契約が終了するわけではありません。

受託者とは信託財産を預かり、管理や処分などをする人のことをいいます。

まずは、家族信託に登場する人物を確認しましょう。家族信託には以下の人が登場します。

・委託者:信託財産を預ける人

・受託者:信託財産を預かり、管理・処分等をする人

・受益者:信託財産により利益を受ける人

このように、受託者は委託者の財産を受益者のために管理・処分する非常に重要な役割を担っているのです。

信託契約が締結されると、受託者が信託財産を管理しやすいように信託財産の名義が受託者に変更されます。

しかし、受託者が亡くなった場合でも、受託者の地位や受託者名義に変更された信託財産は受託者の相続財産とはなりません。

では、受託者が死亡した後、その信託契約はどうなるのでしょうか?

信託法60条には以下のような内容が記載されています。

受託者の相続人は、知れたる受益者に受託者が亡くなった旨を通知しなければならない。

また、新受託者等が信託事務の処理をすることができるまでは信託財産の管理をし、かつ信託事務の引き継ぎに必要な行為をしなければならない。

受託者が亡くなった直後は、受託者の相続人が信託財産の管理等を行うことになります。しかし、受託者の相続人が受託者の地位を相続するわけではありませんので、新受託者になって信託契約を続けていくわけにはいきません。

このまま、新しい受託者がいない状態で1年が経過すると、「法定終了事由」により信託契約は終了してしまいます。

法定終了事由とは、当事者間で決めた信託終了時期とは別に、当然に信託が終了する事由のことです。

法定終了事由に該当すると、当事者間で決めた終了時期に到達していなくても信託が終了してしまうため、家族信託を行う上では非常に注意するべきポイントとなります。

では、受託者が亡くなった後も滞りなく信託契約を継続していくためには、どうすれば良いのでしょうか?

誰が新しい受託者になるの?

信託契約の途中で受託者が亡くなったことにより受託者が不在となると、信託の目的に沿った契約を続けていくことが難しくなります。

ですから、万が一受託者が亡くなる等の理由で不在になった時に、誰が次の受託者(第2受託者)となるかをあらかじめ決めておく必要があるのです。

第2受託者は信託契約または遺言により指定しておくことができます。

例えば、信託契約を締結する際に、信託契約書に「受託者である長男が受託者でなくなった場合は、第2受託者を次男とする」旨の記載をしたとすると、長男が亡くなった後は次男に信託を引き継がれることになります。

もし、信託契約や遺言によって新しい受託者が指定されていない場合は、新受託者として指定された人が信託の引き継ぎを拒否した場合には、原則として委託者と受益者が話し合って新しい受託者を決めることになります。

ただし、委託者が既に亡くなっているケースや、契約形態によっては委託者と受益者が同じ人となっているケースもあります。例えば、認知症対策として家族信託を利用している場合、受託者は親の財産を親のために管理することになりますので、委託者=受益者となることがほとんどです。このようなケースでは、受益者が単独で受託者を選任することができます。

また、受益者が認知症等により判断能力が低下している場合には、「受益者代理人」を選任して、受益者代理人が受益者の代わりに新受託者の選任に関与することになります。

委託者と受益者の話し合いで新受託者が決まらなかった等、必要な場合には、利害関係者が裁判所へ申し立てて新受託者を選任してもらうことも可能です。

新しい受託者が指定・選任された場合には、信託財産の名義を前の受託者から新受託者へ変更する必要があります。通常、前の受託者から新受託者への名義変更の手続きは共同で行わなければなりませんが、前の受託者が亡くなっている場合は新受託者が単独で行うことができます。

なお、受託者の変更に伴う名義変更には、登録免許税がかかりません。

新受託者を指定する際の注意点

新受託者を指定する場合には、いくつかの点に注意しなければなりません。

まずは、前の受託者が亡くなってから新しい受託者を指定せず、そのまま1年が経過すると、信託契約が終了してしまうことです。受託者は信託契約において非常に重要な役割を担っていますので、受託者がいないまま信託を継続することはできません。1年間受託者がいない信託契約は機能していないものとして、法律で当然に終了してしまいますので注意しましょう。

また、受託者になれる人となれない人がいる点にも注意が必要です。基本的に、受託者には「この人になら財産を預けても良い」と思える家族・親族を指定しましょう。受託者は他の人の財産を管理・処分をするわけですから、自分の財産の管理もできないような人では務まりません。財産管理がきちんとでき、信頼できる人を受託者として指定するのがベストです。

ただし、信頼できる家族なら誰でも受託者になれるわけではありません。

法律によって、以下の人は受託者になることができないと定められています。

【受託者になれない人】

・未成年者  ・成年被後見人  ・被保佐人

このように、新受託者を指定する場合には注意するべき点があります。

慌てて新受託者を指定することにならないように、受託者が亡くなった時のことをシミュレーションし、あらかじめ信託契約書や遺言で第2受託者、第3受託者を指定しておくことをお勧めします。

まとめ

信託の途中で受託者が亡くなった場合、新しい受託者をあらかじめ決めておくと、スムーズに信託を進めていくことができます。

しかし、受託者は他の人の財産を管理・処分する役割があるため、誰が受託者になるかによって信託の安心感も全く異なります。信託の目的を達成するためには、その信託に適した受託者を指定する必要があるのです。

信託契約を締結する前に、まずは家族信託に詳しい専門家にご相談することをお勧めいたします。

ソレイユ相続相談室では、豊富な実務経験のある税理士と行政書士があなたに合った家族信託のご提案を行っております。

家族信託をご検討のお客様は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。