納税資金対策

生前贈与の活用

納税資金や相続手続きあるいは代償分割資金の確保に生前贈与は活用できます。
(1)相続に必要に支払いを見積もること相続は財産を引継ぐだけではなく、債務の引継ぎも考えらます。
  財産を引継ぐには相続税、不動産取得税、登録免許税をはじめとする税金や遺産の名義変更や解約にかかる手続き、これらに相続手続き過程で専門家に支払う費用が発生します。
   さらに、納税や相続手続きとは別に、他の相続人に代償金を支払うケースも最近では多くなっています。
   これらを事前に見積もって、相続によって支払う資金をできる限り生前に確保しておくことがスムーズに相続を進めるためには必要になります。
(2)生前贈与で資金を確保
①贈与は受贈者と贈与者の契約であり、贈与後に受贈者が自由に贈与された財産を使う事ができることが贈与契約の大前提です。
従って、受贈者(相続人)が贈与された財産をやがてかかる相続関連支出のために、自らの裁量で蓄えておくことは問題ないのです。
注意するのは、贈与者と受贈者が相続関連支出の総額を見積もって、それを分割して贈与するような計画と契約を作ってしまうと、その総額を贈与するとみなされる可能性があります。あくまでも受贈者の裁量で貯金していく考え方で贈与を行う事が大切です。

②暦年贈与と相続時精算課税制度
暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを選択するかは、相続関連支出の金額の大きさと対策にかけられる年数によります。
例えば、暦年贈与の基礎控除枠110万円で賄える相続関連費用もありますし、相続時精算課税制度を使って家賃収入のある不動産を贈与して、そこからあがってくる家賃収入を相続関連支出の蓄えにあてていく規模の対策もあると思います。
また、相続時精算課税制度は、課税されない枠の2500万円を超えた部分については一律に20%の贈与税がかかります。
この支払った贈与税額については、相続が開始された後で、相続税の納税と相殺される性質の前払税金です。
従って、相続時精算課税制度で納付した税金が、相続税の支払いに足りなければ、相続税の申告時に納付する事になりますし、逆に納付した税金の方が支払う相続税よりも多ければ還付されるのです。
ある意味では、相続税の支払いを税務署に前払で納付しておくようなものですから、これも相続関連費用の支払対策の一つと言えます。
これに対して、暦年課税の贈与により支払った贈与税は、3年以内の贈与については、相続税の申告時に相続税の支払いに充当されますが、払いすぎた贈与税が還付されることはありません。

生命保険の活用

納税資金や相続手続きあるいは代償分割資金の確保に生前贈与は活用できます。
(1)  生命保険活用のメリット
① 死亡保険金は民法上の相続財産には含まれません。
    従って、遺産分割協議の影響を受けずに資金を確保しておくことができます。
② 死亡保険金は相続開始によって凍結されてしまう事がありません。
    従って、相続開始後に保険金請求の手続きを行えば使うことができます。
③ 死亡保険金は受取人を指定できます。
    従って、相続関連支出が必要な人に資金を届けることが可能です。
④ 死亡保険金は相続人一人500万円まで非課税の規定があります。
    従って、500万円以内の相続関連支出は減らさずに使ってもらう事が可能です。

(2)  生命保険活用の具体例
① 相続シミュレーションによって、不動産を取得する相続人に、相続税相当額及び登記費用相当額が受け取るように契約を設定した。
② 相続財産が自宅不動産しかないので、その自宅を相続する相続人が他の相続人に代償金を支払えるように契約を設定した。
③ 賃貸不動産に借入金があるので、その債務を返済するのに必要な金額及び相続税相当額並びに登記費用相当額が受け取れるように契約を設定した。
④ 葬儀費用及び墓地購入代金が必要になるので、喪主にこれらの支出が賄える受取額を設定した。
⑤ 遺産分割協議では意見を言いにくい、遠隔地に嫁に行った娘に受取人を設定した。
⑥ 世話になったが、遺産や死亡保険金をもらったことが知れ無い方が良いと思われる兄弟に、一時所得として課税される死亡保険金の契約を進めて契約してもらい、掛金を贈与しておいた。
(3)  生命保険活用の注意点
① 生命保険の契約は、契約者・被保険者・受取人をどう指定するかで、課税関係が変わってきます。生前に、相続税・所得税・贈与税のどの税目でどのように課税されてくるのか確認しておきましよう。契約者であれば変更が可能な項目もあります。
② 生命保険会社によっては、死亡保険金の受取人の割合を指定してある契約の場合に、代表者が一括して保険を受け取って、代表者が配分するような受け取り方を指定する会社もあります。
     【例】 死亡保険金1000万円:受取人 長男0.5  次男 0.25  長女 0.25
     このような場合に、他の受取人にそれぞれの受領額がわかってしまいます。
     相続争いが既に起こっている場合あるいは、争いが起こる可能性があるようなら、
     事前に保険会社に受取時の手続き方法を確認しておくと共に、
     このような場合には、契約一つ毎に受取人一人にしておいた方がよいです。
③ 遺言によって生命保険の受取人を変えることも可能です。手元にある証券の受取人が必ずしも手続き時に受取人となるとは限らないので、契約時に保険会社にどの範囲で契約者の遺言による受取人が変更できるのか確認するとともに、遺言の記載に保険の事が記載されていないかどうか確認しましょう。 

不動産の活用

不動産は、相続税その他相続関連支出のネックにもなるし、また助けにもなります。
生前にきちんとシミュレーションを行って対策を考えてくことが必要です。
(1)  不動産と相続関連支出の問題
① 代償金の支払対策相続財産が不動産しかない場合で、その不動産を分筆して分割する等の現物分割が難しいケースでは、一人の相続人がその不動産を取得して、他の相続人に代償金を支払うケースが出てきます。
このような場合に、代償金の支払資金は、その不動産を取得した相続人が自分でためた預金の中から支払うか、ローンを組んで支払うかを選択しなくてはならなくなります。事前の対策が不可欠です。
② 相続税の支払対策相続税は、相続開始後10ケ月以内に現金で納付する事が原則となっています。
    相続財産が不動産しかない場合には、相続人が自分の財産から支払うか、相続した不動産を売却して支払うか、税務署に最高20年の延納(月賦)を申請するか、税務署に物納(現物を納める)を申請するか、金融機関から借りて支払うか等を10ケ月以内に選択しなくてはなりません。
    売却するにしても10ケ月という期間で、分割協議も含めた相続手続きを完了した上での売却になるので、時間が十分にあるとは言えません。
    月賦で払うにしてもそれなりの収入と手続きが必要になります。
    物納は要件が厳しく手続きに時間もかかります。
    いずれにせよ、事前の対策が不可欠です。
③ 古い家の取壊費用対策古い建物は相続財産として、相続税申告あるいは遺産分割協議で認識されたとしても、実際にはプラスの財産になるとは限らず、相続関連支出が増える要因になることもあります。空家は放置すると近隣に迷惑をかけるだけでなく、空家対策特別措置法で固定資産税の減免が受けられなくなるので、固定資産税が6倍にあがる可能性もあります。
   また、取壊し費用は最低でも150万円以上かかります。
   利用されていない建物は事前の対策が不可欠です。
④ 田・畑・山林地方の田・畑・山林は、都会の不動産と違って、売却が簡単ではありません。
   さらに、保有しているだけで固定資産税以外の維持管理費が数万円から数十万円かかることも珍しくありません。
   特に農地は放置しておくと近隣に迷惑になり、農業を他人に任せると赤字(持ち出し)になる可能性が高いです。
   山林は自分の山林の特定も難しい事が珍しくなく、贈与しようにも隣の人の所在も分からなくなっているのが実情です。
   地方の田・畑・山林は、事前の対策が不可欠です。 
(2)   活用とその注意点
① 対象不動産の活用方法は事前によく検討して、生前に活用できるものは節税の効果も考えて活用しておくこと。
    ただし、納税資金の確保が先なので、活用したら売却できる物件が無くなってしまった・・・という事がないように。
② 対象不動産の売却可能性と維持管理費は見積もっておくこと。
③ 対象不動産を売却すると決めたら、事前に売却しやすい状態(対策)を検討して、売却時期と対策時期を考える。
    相続開始前と相続開始後では、相続人との話し合い等で状況が変わる場合もあります。

事業承継をお考えの方へ

事業承継が必要な場合には、次の項目で支払資金の対策を考えておく必要があります。
特に、相続税納税資金と後継者が他の相続人に対して、事業用の資産や株を引継ぐ代わりに代償金の支払いを求められるケースが多くなるので対策が必要になってきます。
(1) 保険を使って資金を確保する法人受取の死亡保険金をフルに活用する必要があります。
法人に入った死亡保険金は、退職慰労金として相続人が相続税を支払ったり、他の相続人に対して代償金を支払ったりする原資として使えます。また、個人事業であっても後継者に死亡保険金が支払われる契約を設定しておくことが有効です。
事前に退職慰労金規程を確認し検討しておくことが必要です。  

(2) 自己株式(金庫株)の利用
相続発生後に相続人が元々保有しているあるいは相続した自社の株式を、法人に売却します。
この売却によって得た資金を相続税の支払や他の相続人の代償金の支払に宛てます。
この場合の株の譲渡の税金は、有利な税率(みなし配当課税なしの20%)で売却できる特例があります。
また、相続財産を売却した場合の譲渡所得の取得費加算の特例も使えます。 

※自己株のみなし配当課税
個人株主が所有している自社株を、自社で買い取ってもらった場合には、資本等の金額を超える内部留保の部分の金額は、株の譲渡ではなく配当をしたのと同じとみなされ、「みなし配当」として総合課税の累進税率となります。
しかし、相続により取得した自社株に限り、みなし配当課税ではなく、譲渡代金に対する「譲渡所得課税」のみとなりますので、譲渡利益(払戻金額-取得価額)に対する定額の課税のみとなります。
これは、相続税の申告期限から3年以内に、相続により取得した自社株を金庫株として買い取ってもらう場合に限り適用になります。 

(3) 持ち株会社への売却相続発生前に、持ち株会社を設立して保有株式を売却して対策資金を得ておきます。
この場合の売却に対する税金も法人に対する売却の税率が適用されるので有利に売却できます。
なお、生前贈与で事業承継税制の特例を受けている場合には、自社株の譲渡によって、その分の納税猶予税額が発生しますので注意が必要です。 

(4) 不動産の売却法人で利用している事業用の不動産で個人所有の物を法人に売却します。
この資金で相続税の支払や代償金の支払いを行います。
この売却は、相続開始前でも相続開始後でも事前にシミュレーションを行って、所得税・相続税の計算上一番節税になる方法と時期を検討します。

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